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龍の伝説がある四尾連湖へ!2024年初めての切貼民話
とても久しぶりの投稿になってしまい、気付けば年もあけてしまいました。2024年も切貼民話師としての活動を楽しみながら進めていきますので、本年もよろしくお願いいたします。
今年初めてのフィールドワークを行なった場所は、山梨県市川三郷町にある四尾連湖(しびれこ)。4つの尾を連ねた龍である尾崎龍王が湖の名前の由来だそうで、辰年であることに因み、この場所を選びました。
過酷!四尾連湖までの道のり!
さて、四尾連湖へ行くことに決めたは良いものの、地図を見てみると湖があるのはどうやら山奥。私は車の免許を持っていないため、まずは甲府駅からJR身延線に乗車して、一応の最寄駅である市川大門駅へ。ここから30分ほど歩いて、市川三郷町の隣にある富士川町の「道の駅富士川」に向かいました。
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道の駅富士川は四尾連湖とは反対方面。ではなぜ一度道の駅へ行くことにしたかというと、車がない私の味方、すっかり切貼民話フィールドワークのお供となっているレンタサイクルがあるからです。「車がなければ気合いと根性で電動自転車を漕げば良い!そうすれば山奥だろうがなんだろうが、いつかは辿り着く!」ー。これが今回四尾連湖へ行くための作戦でした!
レンタサイクルを借りる手続き中、係の方に「ここから四尾連湖へ行きたいんです」と伝えると、少し驚いた表情。そこで「ここから四尾連湖へ自転車で向かう方っていらっしゃいます?」と尋ねると、「ん〜…たまにいらっしゃいますね」とのこと。「これまでの経験から、電動自転車のバッテリーが1本だけでは確実に足りなくなりますよ。少し重くなってしまうけれど予備で2本持って行くと良いです。」と、ご厚意で予備バッテリーを貸していただきました。どうやら四尾連湖までの道のりは相当過酷になりそうな予感…。
操作方法や注意点などを教えていただき、いよいよ電動自転車に乗って四尾連湖への自転車旅がスタート。先程渡った富士川大橋を通り市川三郷町内へと入ります。道路脇に畑や神社がある広域農道を通り、四尾連湖方面へ向かう県道409号線へ。入って比較的すぐのところに「四尾連湖 10.3km」との標識がありました。見なかったことにしようとも思いましたが、レンタサイクルを借りてすぐだったため、このまま引き返しては勿体無いと思い「10kmくらいなんとかなるさ!」と前向きに考えることにしました。この標識を過ぎると本格的な坂道(もちろんちゃんと舗装され整備された綺麗な道路です)に差し掛かりました。
気軽にサイクリングをするくらいの気持ちでいた私。最初は「電動アシスト機能もあるし、なんとかなるでしょ!」と思っていましたが、10分くらい漕いだところで「あ、これ、無理だ…」と感じ、「無事に辿り着けるのか?」という不安が頭をよぎりました。
そこからの道中を一言で表すと、ズバリ「過酷」。急で終わりが見えない坂道に脚は悲鳴をあげ、心が折れかけました。写真を撮る気力もないほどフラフラだったので道中の風景をお見せできませんが、代わりに電動自転車を漕ぐ私の心境をまとめると、
「息が切れる…呼吸が苦しい…」
「脚が痛い!体が重い…」
「今からなら引き返せるかなぁ…でもそれじゃあここまで来た意味がないよなぁ…」
「取る気はないけど、こういう時に車の免許があれば楽なんだろうなぁ…」
「結構値段かかりそうだけど、タクシーとか呼べば良かったかな…」
「バッテリーがどんどん減っていく…もはや3本でも足りないかも。節約して乗っているけれど、ゴールが後どのくらいか分からないから辛い…」
「終わったら温泉入りたい…」
……
必死に電動自転車を漕いでいるうちに、気付けば周囲の山々の頂上が目線近くの高さにまでなっていました。
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途中電動アシスト機能を節約したこともあり、3本目のバッテリーが残り数%のところで、なんとか目的地である四尾連湖に到着しました。後で調べたら四尾連湖の水面標高は880m。道の駅富士川の標高が249mとのことなので、スカイツリーとほぼ同じ高さ分くらい電動自転車で登ったということになるでしょうか。道の駅から約1時間半の大冒険。本当によく頑張った…。
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四尾連湖でのフィールドワーク
撮影許可をいただくため、四尾連湖周辺の土地を管理されている湖畔のキャンプ場の方にご挨拶させていただくことに。これまでに作成した作品をご覧いただいて使用目的をお伝えしたところ、温かなお言葉をいただき快く撮影を許可していただきました。フィールドワークを通して素敵な方々とのご縁が広がっていくことが幸せです。心より感謝申し上げます。
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四尾連湖湖畔を歩くと、様々な自然物に出逢うことができました。こちらは霜柱。この日は1月上旬だったため、四尾連湖の湖畔にはたくさんの霜柱ができていました。切貼民話師として活動を始めたのが昨年4月末であるため、コラー獣の素材として霜柱を撮影したのは初めてです。
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こちらは、なんだか顔に見える樹。これまでのフィールドワーク経験上、若い木よりも年季が入った木のほうが模様や形に個性が見られるように思います。
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こちらは、複雑に絡み合った根っこ。
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種類が異なる葉っぱが偶然組み合わさり、腕と手のような形に見えます。
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久しぶりの切貼民話フィールドワークということもあり、夢中になって1時間ほど撮影を行いました。澄んだ空気、美しい自然、優しく温かいキャンプ場の方々、そして、きっと見守っていてくれていたであろう尾崎龍王から、たくさんのエネルギーをいただくことができたフィールドワークでした。
帰りはほとんど下り坂なので、行きの過酷さが嘘のように快適に進むことができました。写真を撮る余裕もあったため、どれだけ高いところまで来たのかを示す証拠写真を撮りました。
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車を使えばきっとあっという間に目的地まで辿り着くことができたでしょう。けれど、それができない私だからこそ、道中の出来事も含めて作品の一部を形成していると考えています。車がなくて移動が不便であるというウィークポイントをむしろ強みに変え、私ならではの表現を目指していきたいなぁと、富士川大橋からの景色を眺めながら考えました。
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四尾連湖のコラー獣、誕生!
後日、フィールドワークで撮影した写真を印刷し、コラー獣の素材にするために切り抜きました。今回はいつもより一回り大きいA3サイズで印刷したためハサミで切り抜くのがちょっぴり大変。けれど、印刷することで改めて撮影した自然物の形や色などを観察することができ、どの部分をどう切り抜くかを考えることが面白い。これこそ切貼民話制作の醍醐味とも言える楽しい時間だなぁと思っています。
こうして切り抜かれた素材を並べ、コラー獣の形を考えます。もう二度と再現できないであろう貴重な試行錯誤中の写真を2つ載せますね。
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あれこれ並べ替え、微調整していく中でコラー獣のフォルムが決まったら、個々の素材を糊で貼っていきます。
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最後に背景を付けて完成。これまでは作品と創作民話を別々に表していましたが、新たな試みとして1枚の作品の中で切貼民話のコンセプト(コラー獣と既存の民話が出会い、生まれる創作民話も含めて1つの作品であるということ)を盛り込もうと思い、そのためのアプローチをいろいろ考えました。その結果、背景に文字を入れることに。
縦書きで書いた文は、もともとあった民話である「元素民話(もともとみんわ)」。もともとある民話であることと、既存の民話は固定的・不変的なものではなく、元素のように他のものと混ざり合って新たなものを生み出す可能性に開かれたものだという私の民話観を意識したダブルミーニングの造語となっています。
横書きで書いた文は、元素民話とコラー獣とが出逢って私自身の内部に生まれた創作民話である「切貼民話」。写真をコラージュするだけでなく民話もコラージュの素材となり得ることを伝えたいと思っての造語です。元素民話に比べて全くの新しい言葉なのでイメージが浮かびにくいかも知れません。より良い名称を今後考えていきます。
元素民話と切貼民話から新たな表現が織り出されていくことを表すべく縦と横を使い分けましたが、よりその違いを視覚的に捉えることができるようフォントを変える工夫をしてみました。
こちらのブログでは、完成したA3サイズの作品をスキャンしたデータ画像を掲載します。
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名前を考える際、「りゅう」という読み方が入っている言葉を探していたのですが、その中でふと閃いたのが「スクリュー」という言葉。こうして胸鰭がスクリューだという設定が生まれました。さらに霜柱がキラキラと透けている様子と掛かるよう「透」という文字をあてて「透龍」という名前が生まれたのです。
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コラー獣の設定を考える上で、その場所のイメージや先人たちの想像を崩さないことを意識しています。したがって、手の部分が銃の形に見えたという直感を含みつつ、そこに物騒なイメージを感じさせないように「森を守る」「花粉で森を荒らすものを追い払う」という設定を考えました。「痺れる」にこだわるのは「四尾連湖(しびれこ)」だから。
名前を考えるにあたってイメージに合う感じの読み方をあれこれ調べたのですが、ピンときた「巣森守」(巣森+巣守)という語感が「イモリ」「ヤモリ」に似ており、その点もなかなか気に入っています。
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正統派じゃない龍を作りたいシリーズの2つ目となる作品。シンプルで可愛らしいフォルムになりましたが、実は今回のフィールドワークで一番気に入っている、特徴的故に使いどころに悩んだ面白い木の根っこの素材(次の画像参照)を使っています。タツノオドリコと繰り返し言っていると、実存するのがタツノオトシゴなのかタツノオドリコなのかこんがらがりそうです。
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ベースとなる元素民話はどれも同じ。けれど、どのようなコラー獣と出逢うかによって、そこからイメージされる切貼民話は変わってきます。そんな混ざり合いの不思議や面白さを作品から感じていただけたら嬉しいです。
まとめ
ということで、2024年最初となるフィールドワークと切貼民話作品の紹介でした。昨年4月に見切り発車的に始めた切貼民話師としての活動ですが、進んでいく中でたくさんの学びや発見、感動があり、だからこそ細々とではありますが楽しみながら続けています。今年はどのような作品が誕生していくのか、不定期の更新となりますが引き続き応援いただけたら嬉しいです。
最後までご覧いただきありがとうございました!
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