Brotherhood?皆まで言いなさんな。
僕がもし、街中で弟とばったり会ったら、声をかけるだろうか。
恐らく答えは「NO」だ。
声もかけず、立ち去るだろう。
何かの会話の流れで、会社の同僚とこの話をした際、非常に驚かれた。
「普通は話すでしょ。仲悪いの?」
みたいな感じに言われた気がする。
決して同僚も、悪口のように言ったわけではなく、なんなら心配してくれていた。
しかし、これまで生きてきてわかったことは、世の中には、一緒に出掛けたり、飲み屋でとことん語り合ったり、中には恋バナまでする兄弟がいる、ということだ。
こういう関係性を、否定はしない。
仲が良いことも、素敵だと思う。
ただ僕は、仲の悪さこそ兄弟の美学、だと思っている。
極端に言うと、兄弟愛なんて、そんなものは存在しなくていい。
これについては、一生揺らぐことがないと言い切れるほど、確信している。
美学であり、道理であるとすら思う。
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僕と弟は2つ違いで、幼稚園から高校まで、ずっと同じ学校だっだ。
大学も学部は違うだけで、学校は同じ。
小学校の頃に入っていたサッカークラブも、中高のサッカー部も一緒。
小さい頃はお揃いの服を着て、友達の家に遊びに行くときも、気づけば一緒に行っていた。
兄弟喧嘩もたくさんして、殴って泣かせたこともあるし、弟がリレーの選手になったときは、少し誇らしい気持ちになったこともある。
だけど、そのころからずっと、仲良しと思ったことは一度もない。
ただ、弟がいる、という事実、それだけでしかなかった。
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そして思春期の頃は、特に弟は僕のことを避けていたと思う。
勉強でも部活でも、何かと比べられることを、嫌がっていたように思う。
僕も両親も、比べるようなことは全く言わなかったけども。
彼は彼なりに、思うところがあったのだと思う。
どこに行けども兄がいて、兄の同級生には、チヤホヤされたりからかわれたり、大変だったはずだ。
そりゃあ、避けたくもなる。
その頃から、彼とは話すことも少なくなり、いまは連絡を取ることもほぼない。
実家に帰った時、いれば少し話すだけ。
だから、街で出会っても、話すことはないのである。
かといって、僕は彼のことは嫌いじゃない。
というより、好きとか嫌いとか、そういう次元で彼のことを想ったことがない。
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例えば、僕は彼に悩みを相談したことがない。理由は簡単だ。
僕は彼と一緒に育ってきた。ずっと彼の成長を一番近くで見ていたし、彼も僕のことを一番近くで見ていた。
だから、お互いに何を考えているか、なんとなくわかる。
こういうとき、弟はこう感じるだろうし、こう考えるだろう。
逆も然り、兄はこう感じるだろうし、こう考えるだろう。
お互いの思考や感情がなんとなくわかるから、相談したところで、お互いにどんな返事をするか、相談する前にわかってしまう。
だから、相談なんかしなくてもわかるのだ。互いのアドバイスくらい。
弟は勿論他人でもないし、友人でも親友でも、ましてや恋人でもない。
弟は、弟だ。
僕にとって弟は唯一無二の存在。誰とも関係性は被らない。
友達のように世間話もしない。
親友のように語り合ったりもしない。
恋人のように、愛情を相手に伝えることもない。
役割が違うから。
弟の役割は、僕の家族のひとりとして存在すること。
僕の喜びが彼の喜びであり、彼の悲しみが僕の悲しみであること。
そして、共に親孝行をすること。
それだけなのだ。
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弟と話すことがないと言ったが、自分の海外転勤が決まった時、真っ先に電話で伝えたのが、弟だった。
「転勤決まったから、父さん母さんよろしく頼むな。」
「わかった。」
今の妻にプロポーズしたときも、最初に伝えたのは、弟だった。
「プロポーズした。いろいろこれから準備するから、よろしく。」
「わかった。」
会話はそれだけだ。
よろしく頼むなとは言いつつも、両親は病気でもなんでもないし、普通に働いている。
僕が結婚するからといって、弟が準備することなんて、特にない。
何をよろしくと周りは思うかもしれないが、いろいろあるのだ。
その感覚は、僕と弟にしかわからない。
なぜ、弟に一番に伝えたのか?
これに関しては正直、「弟だから」という理由以外にない。
理屈はない。
弟だから、それだけだ。
同じ腹から産まれ、同じ環境で育ったふたり、馴れ合わずとも、お互い元気い生きて、大事なことだけ報告する、それで充分だ。
皆まで言うな、ということです。
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そんな今日は、両親の結婚三十周年。
さすがに大人二人がそんな日を無視するわけにもいかないので、何を贈るか一応弟と連絡を取ってみた。
やり取りは2往復で終わった。
いや、お互いに”終わらせた”。
照れくさいし。
父さん母さん、息子2人は、仲悪くやってます。よろしく。
Twitterアカウント : https://twitter.com/Peeeta_frwl
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