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医学部地域医療枠について皆さんはどう思いますか?

(写真はアドリア海のとある街)

今年初投稿です。そしてやや取り扱い注意な内容なのかもしれませんが、今までの自分を振り返った時に感じたことだったので記載。

まず初めに、自分は医師で、法律や行政のことは全くわかりません。なので以下は全て自分の個人的な見解であり、社会的に何か働きかけるものではありません。また自分は地域枠を経て入学をしていない立場の人間です。

上記を踏まえた上で。

先日知人とタイトルの話になりました。自分の出身大学は地域枠が無く、卒業後の就職場所に関しては基本的に規制の無い学校だったので、卒業後自分は自分の希望に沿って西日本から東日本の田舎町で初期研修をしました。とても充実した2年間で本当にたくさんのことを学ばせていただきました。

その後も自分のスキル、今後の可能性を見据えて好きな場所で働いてきたし、昨年からはロンドンで新しいスキルを習得中で今後のキャリアについても現在模索しています。(入学するために猛烈に努力はしましたが笑)

ところが社会に出て働き出してみると、自分の選択肢が必ずしも普通で無いことを自覚しました。同僚や後輩に地域枠で大学に入学したため、卒業後は行政や大学から指定された地域でしか勤務が許されないという方を多く目にしたからです。

彼らとの会話はこんな感じになります。

私:「将来何したい?」

A:「んー、俺は心臓外科医に進んで手技を極めたいから○○大学病院の〜先生の下で死ぬ気で働きたいね。試験あるぽいからうまく入れるといいな。」

B:「地域での医療貢献もやりがいあるけど、次は都心部に住みたいね。都会が向いてるかも。」

C:「私は地域枠でこの地域から出られなくてあとは人事次第。9年間拘束されるからそのあとは、、、どうなんやろね。この町で結婚相手とか見つかるんかね、、、9年間終えて自由になってもその時には新境地でという気にもなれないからこの街で開業するとかかな。独身嫌だわ。」

本当にこんな会話でありふれています。

Cさんが地域枠を受験した理由は本当に色々な場合があるかと思いますが、多くは金銭面的な負担を軽減する目的で奨学金を受ける代わりに地域に残って勤務するというものが多いかと思います。

で、この状況なんですが、個人的には本当に気の毒だと感じます。

もちろん地域枠の背景は理解できますし、受験の際には十分理解した上で(受けてないので知りませんが)申請することを求められ、書面にも記載されているのでしょう。

だけど、(多くの場合)高校出たばかりの10代のお子さんに、無限の可能性を秘めた20代~30代の人生を(しかも本人が長期的には希望しない可能性が高いリスクを承知した上で)決めろ。という方が無茶な話です。

(高校の先生や予備校の先生が、目先の大学合格実績を上げたいがために生徒に勧めているなら個人的には極めて罪深いと思います。)

18.19の時に25歳~35歳を田舎で過ごしなさい。でないと高額賠償です。と言われてどう思いますか?それがどういう意味を持つのかなんて全く理解できないでしょ。普通。

僕は中学高校まではケータイ電話も禁止の寮生活で過ごしていたこともあり、世の中のことは何も知りませんでした。あの時からちょうど10年くらい経ちますが、当時は自分が10年後はロンドンにいるなんて1ミリも思っていませんでした。大学に入学し、また社会に出てからも多くの素晴らしい人に幸運にも出会うことができたからこそ今の自分があります。

在学中にお金もらって悠々と過ごしてるからそれくらいの犠牲は払えよ、と主張する方もいるのはわかりますが、じゃあ生まれた時にたまたま裕福な家に生まれたからその後の人生は拘束されなくて済むってのもおかしく無いですか?

学力が足りなかったのは理由じゃ無いのかい、と責めるかた、中学高校でちょっと数学や物理、英語ができることがそんなに偉いですかね?ちょっとできなかっただけでその後の人生を拘束される必要がありますか?

わかって入学してんじゃん。と主張される方。これらの情報を提供するのは親御さんや学校・予備校の先生のことも多く、本人としては「受かる可能性が少しでも上がるなら挑戦したい!」くらいにしか当時は思っていないことが多いんです。だって知らないんですから。その後どうなるかなんて

自ら進んで「将来はこの街で地域医療に従事したい!」と自由な選択肢の中から選ぶことは十分に考えられます。、「この地域でしかダメ」と言われるのと訳が違うでしょう。

こういった議論で一番注意しておかなければならないこととして、地域枠を受けた本人は、社会から反発されるリスクを恐れ、大きな声を上げることができないということです。だから蔑ろにされ、向こう10年(下手すればその後も)人生を諦めなければならない、そんな気持ちにさえなってしまっている方も実際にいらっしゃいました。

地域医療崩壊、医師の偏在化など自治体の方が抱える問題は極めて深刻ですし、自分も実際に現場にいた人間として「この先どうなるんだろう」と感じることもありました。が、それをまるで鎖でつなぐような制度で解決するのは(しかも多くの場合、何も知らない無知の相手に対して)少し残酷すぎませんか?

繰り返しますが、僕は医師で法律のことは全くわかりません。が、憲法22条にも「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択
の自由を有する。
」と記載されています。法律は表現と解釈の世界なのでこれ以上は語りませんが、事実として記載されているんです。(これがひっくり返っているのがこの地域枠という概念です。これがどう解釈されるのかは僕はしりません。)

「じゃあもう一年浪人しろよ」というそこのあなた。僕が言いたいことはそういうことではありません。地域枠なんてそもそもなければいいという話を僕はしたいだけです。日本の将来を担う若い人材の人生をその後長期に渡って拘束するような「地域枠」という選択肢が存在していること自体が不健康な社会であるというのが僕個人の見解です。医者だって人間です。自分の人生は自分で決めていきたいと感じることは普通でしょう。

(拘束時間が短ければどうなのか、等の議論は個人の価値観に左右されると思うので、僕はこれを論ずる立場にはありません。)


皆さんはこの地域枠についてどう考えますか?

(上記はあくまで個人の見解です。)