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2023年夏、ベースイター(板)制作記録


この記録について

2023年の夏に自作楽器ベースイター(板)を作った際の記録です。作業と並行して都度Tumblrに記録していたのですが、そこからトライ&エラーの部分は省略して結果だけまとめてあります。

(※2024/1/28 本記事は公開後に補足修正しました。)

ベースイター(板)とは何か、なぜこの楽器を作ろうと考えたか

別の記事に書いたように私はSteinbergerが好きです。Steinbergerはヘッドレスです。代表的なモデルであるXL/GLはボディも「お弁当箱」で、「ヘッドもボディもいらないじゃん」です。その延長で私は「ネックもいらないのでは」と考えたのです。
もちろんネックが無ければ(ベース)ギターとして成立しませんが、ネックを極力薄くして極端な話ペラペラのフィンガーボードだけにしてもイケるんじゃないかということです。
この疑問に対して検証を行うために制作したフレットレスベースが「ベースイター(板)」です。

実際に作ったもの

じゃん。
下の写真の一番左にあるのが「ベースイター(板)」です。大きさなどを比べるために家にある他のフレットレスベースと並べてみました。

左にあるのが「ベースイター(板)」

制作にあたっての基本方針

この楽器を作る目的は構造上演奏が可能かどうか快適かどうかを検証することなので、制作にあたって以下の方針を掲げました。

  • 精度や見た目は気にしない。

  • 音色は気にしない。

  • 曲がりなりにも音が出ればOK。

  • 費用は極力安く抑える。

実際に制作に入ると色々と問題が出て試行錯誤しましたが、この記事では一番最後に述べる重要な一件以外は説明を省略して結果のみ説明します。詳細が知りたい人は上に貼ったTumblrの記事を参照してください。

構造

このベースイター(板)の構造は次の通りとなっています。

基本構造

できるだけ簡単な構造にしたいので本体(ネックとボディ)にはホームセンターで買ってきた板をそのまま使いました。木の板だけだと弦の張力に負けてしまうので、補強材として組み立て家具用の鉄製のフレームを使いました。

ホームセンターで調達した部材など。チューナのみ余剰部品を使用。

横から見ると分かりますが、フレームに板をボルトで固定しています。また、フィンガーボードの部分は後から説明する理由により、追加で購入した板を重ねて二枚重ねにしています。

横から見たところ。黒い鉄のフレームがボルトで固定してあること、フィンガーボードの部分に板が重なっているのが分かる。

弦周り

チューナーには古いベースから取った部品を流用しました。2x2のGibsonスタイルの楽器に使う部品を無理やり4連で使っています。
ストリングガイドで無理やりナットへの位置を決めています。1-2弦と3-4弦で巻き方が逆になっているのは、こうしないと弦の位置が合わせられないからです。2x2のチューナーを使ったのが怪我の功名となって、たまたま辻褄が合っています。
ナットにはステンレスの棒材を使いました。弦を乗せる箇所に切れ込みを入れて弦の位置を決めています。この写真ではナット上の弦間隔がブリッジと同じ19mmになっていますが、ものすごく弾きにくかったので後から一般的な10mm間隔に修正しました。

ヘッド部

ブリッジには市販のものを使っています。某通販サイトで一番安いのを買いました。

ブリッジ

電気系

ピックアップにはギター用のアウトプットジャックと一体化ピエゾピックアップを使いました。後から取り付けるタイプなので配線の手間がかかりません。
制作時にベース用の安い製品が手に入らなかったので、とりあえず音が出ればいいかと思ってギター用を使ってます。

ピエゾピックアップを取り付けたところ

試奏動画

生音です。この段階ではナット上の弦間隔が19mmあり、広すぎて弾きにかったです。

ナット上の弦間隔を10mmに修正したので弾きやすくなりました。

ピエゾピックアップを取り付けたので、ラインで録音しました。

上の動画で見ていただいたように、完成したベースイター(板)はとりあえず演奏可能なことが確認できました。
さすがに普通の楽器よりは弾きにくいので、演奏が下手なのは無視してください。弾きにくさはネックの形状より、鉄フレームによるバランスの悪さが影響していると思います。

本体が二枚板になった理由と追加の検証

なぜ本体が二枚板になったか

当初は本体を一枚の板で構成する予定だったのですが、実際には二枚重ねになってしまいました。土台の板が厚さ15mm、追加で重ねた板が9mmなので重ねると24mmになってしまってます。これでは「薄い」と言うには微妙です。なぜこんなことになってしまったかというと次の理由からです。

一枚板にナットとチューナーを並べても、弦はナットの上空を通過する。ナットよりチューナーのポストを低くして、ナットからチューナーのポストに対して下向きに角度をつけないと弦はナットに乗らない。

普通の(ベース)ギターは、Fenderならヘッドに段差をつけてGibsonならヘッドに角度をつけて、ちゃんと弦がナットに乗るようになってますよね。
後から考えれば当たり前ですが考慮が漏れていました。

以下の写真は2枚目の板を増設する前に、試しにクランプで無理やり弦をナットに押し付けてみているところです。これは解決になりませんでした。

フィンガーボード増設前。弦がナットの上空を通過するのでクランプで無理やり押し付けている。

これへの対策として仕方なく、フィンガーボード部分にもう一枚の板を重ねてナットの位置を高くする事で必要な角度を得ました。

このままだと悔しいので、何とか追加の板を外せないか考えてみました。
ヘッドレス用のチューナーを使ってナット側は弦をねじ止めしてしまえば、そもそもナットへの角度を気にする必要が無いのですが、その手のチューナーは高いので使いたくありません。
手持ちの部材でなんとかやりくりできないか考えてみました。

別のやり方

試行錯誤した結果が下の写真です。

改造後

フィンガーボードとして追加した厚さ9mmの板は剥がしました。
ヘッド部分を切り離して弦を裏側に回し、裏表逆にしたチューナーに巻くことでナットへの角度を確保しています。

改造後のヘッド部

ブリッジも下げる必要があるので、丸棒による簡単なものに置き換えました。板に開けた弦を通す穴には市販のプッシュを入れています。

改造後のブリッジ部

結果

これで15mmのペラペラネックになりました。
試奏してみたところ問題無く弾けました。

別の問題

ところが、別の問題が出ました。ヘッド部を切り離したことで構造上弱くなってしまったのです。チューニングの度にヘッド部がストラトのシンクロナイズド・トレモロ・ユニットのように動きます。
ここもなんとか工夫してとも思いましたが、私は「15mm厚のペラペラネックでも弾けるやん」という検証結果を既に得ています。ヘッドが動く件は今回の検証目的に直接は影響ありません。今回の検証結果を元に実用的なネックペラペラ楽器を作る際に考慮すればいいのです。
だから、もういいかな…と。また気が向いたら続きをやります。




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