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Ned SteinbergerとSteinberger, NS Design

Ned Steinbergerの設立した2つの楽器メーカー

はじめに

皆さんはSteinbergerという楽器ブランドは知っていますか?皆さんがギタリストやベーシストなら知っているかと思います。特徴的なヘッドレスのデザインをしたあの楽器です。あの楽器を設計したNed Steinbergerと彼の起こしたSteinberger Sound Corp.、NS Designという2つの楽器メーカーについて簡単にご紹介します。

Ned Steinberger

Ned Steinbergerは小さな頃から物を作ることに長けており、特に木工に才能を発揮していました。彼は職業キャリアを家具デザイナーとして始めましたが、共同で工房を借りていた仲間の一人であるStuart Spectorを手伝うところから楽器デザインの道に進みました。彼がSpectorのために設計したNS-2は現在もSpectorの代表的なモデルとして製造・販売されています。楽器制作に興味を持ったNed Steinbergerは、その後本格的に自ら設計した楽器を製造・販売するための会社Steinberger Sound Corp.を設立しました。

Steinberger Sound Corp.

Steinberger Sound Corp.が販売したSteinbergerブランドの革命的なデザインと独特なトーンを持つ楽器は世界中に衝撃を与えました。マジカルラブリーのM-1決勝戦のネタが漫才か漫才ではないか問題のように「あれはギターではない」と言う人もいないではありませんでしたが、多くの人からは高く評価され、多数の模倣者を産むほどでした。
一方で、会社の経営は順風満帆とはいきませんでした。Steinbergerのヘッドレスデザインと並ぶもう一つの大きな特徴はカーボングラファイトを素材として一体成形したネックとボディです。このカーボングラファイト製の部材の歩留が悪く製造コストが嵩んだのです。製造工程の見直しやネックのみにカーボングラファイトを使いボディに木材を用いた新モデル(ボディに木材を使うのはサウンド面の要請もありました)、全ての部材に木材を使った廉価版のSpirit by Steinbergerシリーズを発売するなど収益改善に向けた対策を行いましたが、最終的に彼の会社は経営に行き詰まり、彼はブランドや製造設備を含むSteinberger Sound Corp.の全ての資産をGibson(現在のGibson Brands, Inc)に売却しました。

NS Design

Ned SteinbergerはSteinberger Sound Corp.の売却後、Gibson傘下の新しいSteinbergerブランドの楽器を設計したりしましたが、程なくNS Designという会社を設立しました。
NS Designでは現在エレクトリック・バイオリンやチェロ、コントラバスなどの弓を使う楽器と、もちろんベースギターも作っています。(ギターは一時プロトタイプの写真を公開していましたが結局発売されていません。)NS Designにおいても彼の独創性は大いに発揮され、代表的な発明としては弓を使う楽器ではボーイング時の弦の横振動とピチカート時の弦の縦振動の両方に対応するために複数のピックアップを切り替える仕組みを組み込んだり、ベースギターでは弦を巻き取る操作の延長で弦の端を固定する機構をチューナー兼テールピースに搭載し、ヘッドレスながらダブルボールエンド弦も弦の張り替えのための六角レンチも不要にしました。
なお、Steinberger Sound Corp.時代の製造品質の苦労から、NS Design社内では設計と検品を行い、製造自体は外部に委託しています。(上位モデルはチェコ、下位モデルはインドネシア)

より詳しい情報

NS DesignのWebサイトには、現在の製品の紹介の他、Ned SteinbergerとSteinberger, NS Designのこれまでの歩みや彼の半生記を書いたJames Reillyのインタビューが掲載されています。ぜひ、読んでみてください。

James Reillyの書いたNed Steinbergerの半生記については現在電子書籍で入手できます。

その他のリソース

Steinbergerと公式な関係はありませんが、Steinbergerに関する情報の掲載や交換用パーツの販売を行っているWebサイトです。

現在のSteinberger

Gisbonの保有するブランドのひとつとなったSteinbergerは、Steinberger Sound Corp.時代のモデルの製造継続を模索したりNed Steinbergerさんの新しいデザインの楽器を製造していた時期がありました。またMusic-yo.comという直販サイトを運営してSprit by Steinbergerの様々なモデルやMoses製のカーボングラファイトのネックを使ったモデルの販売を行っていたこともありました。しかしながら、現在ではSprit by SteinbergerのGT(ギター)とXT(ベース)のみを製造しています。廉価版のみになってしまったのは大変寂しいものです。木製ネックでいいので、少しグレードを上げたモデルも作ってもらえたらなと思います。


現在のGibson Corp.下のSteinbergerブランドのWebサイト

私とNed Steinbergerの楽器

私は彼のデザインした楽器を現在4本持っています。
まず、XL2が欲しくても手に入れることなど夢だった私はネックのみカーボングラファイトでボディはメイプルという廉価モデルXP2を発売直後に手に入れました。これを手に入れてすぐ、他のベースギターは処分してしまったので、かなり長い間私はベースギターをこの一本しか持っていませんでした。
次に手に入れたのはギターのGM4。SteinbergerがGibsonに売却され生産が停止した後に中古で手に入れました。
Steinbergerの楽器は他にも欲しいものがいくつもありましたが年々価格が高騰している上に、そもそも数が無いので入手を諦めました。
現在売られている最新のNed Steinbergerの設計する楽器はNS Designのものですが、NS Designの楽器もいい値段がするので気軽には買えません。
ところが、たまたまミドルクラスのモデルであるNTX4aのフレット付きとフレットレスを中古で安く手に入れることができました。ありがとうデジマート。最近はもっぱらこのNTX4aを弾いています。

左から、Steinberger GM4S、同XP2、NS Design NTX4aのフレットレスとフレット付き

あ、あと既に手元には無いのですが、Spirit by SteinbergerシリーズのXZ-25Fというモデルを持ってました。これはSteinberger XQの廉価版で、現在売られているSpirit by Steinbergerと同じくネックはメイプルです。これは上にも書いたGibsonの直販サイトMusic-yo.comで短期間売られていたものです。楽器自体は安いのに送料がそこそこしたので割高になってしまいました。
今思えば(送料抜きの)値段の割には悪くなかったと思うのですが、XP2との違いにがっかりして、あまり使わないうちに売ってしまいました。

左はIbanez GWB-1、右がSpirit by Steinberger XZ-25F。2008年に撮影。


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