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救急外来での体重の推定法

救急医療に携わる者が、小児関わる時、苦手意識の元凶のひとつとなっているのが「体重当たり」の考え方です。各種薬品の投与量、デバイスのサイズなどの多くが体重に基づいて決められています。

これらを覚えるだけでアレルギー反応が出現するわけですが、そもそも「この子どもは体重どれくらい??」というところで固まります。一方、小児医療者にとっても、1歳から3歳ぐらいまでは「なんとなくこれぐらいかな」という感覚はありますが、それ以上になると途端に感覚は効かなくなる方が多いのではないでしょうか。

まして、ショック! 蘇生! と救急車でなだれ込むように運ばれてくるとき、交通事故で親御さんもまだ到着しない緊急事態においては全ての診療が停止しかねません。簡便な体重の推測方法はないものでしょうか?

まずは覚える

最低限下記の表を暗記すると随分楽です。

青字に注目します。体重は3kgで生まれて、3ヶ月で倍、1歳で3倍になります。

次に簡単な公式を覚えましょう

1歳以下 体重(kg)= (月齢/2) + 4

1歳-10歳 (kg) = 2 × 年齢 +10

特に2つめの公式はとても便利です。

もっと簡単に

そういう方にはBroselow tape がおすすめです(下図)。色分けしたテープを図のようにおいて、身長から体重を推定します。

エビデンスは?

実際の体重と、計算上の体重を比べた研究があります。(文献2)

上図(A)がBroselow tape、下図(B)が公式です。この研究によって、Broeslow tapeとも25 kg以下では、非常に正確であることが解りましたが、同時に25 kg 以上では、ばらつきが大きくなるといえます。

この研究ではもうひとつの公式の検討を行っていたり、実際にロジスティクス解析を行って、より正確な体重の予測式を導き出しています。しかし、公式中に対数を含むなど汎用性と利便性はあまり高くないと思われます。

ということで、私は上述の「公式」をもちいて実際の診療を行っています。

体重が決まるとそれに基づいてデバイスも決まっていきます。

ここから先はまた次回以降でご紹介しますね。

【参考文献】
1. Broselow tape 写真
https://www.liveactionsafety.com/broselow-pediatric-emergency-tape-2017/

2. Pediatrics 2009; 123: e1045-e1051


小児科、小児集中治療室を中心に研修後、現在、救命救急センターに勤務しています。 全てのこども達が安心して暮らせる社会を作るべく、専門性と専門性の交差点で双方の価値を最大化していきます。 小児科専門医/救急科専門医/経営学修士(MBA)/日本DMAT隊員/災害時小児周産期リエゾン