インフルエンザ⑥ 迅速診断に関する誤解
今日で仕事納めの方も多いのではないでしょうか。今年は9連休でしたっけ?旅行に出かける方もいらっしゃるのかもしれませんね。
愛知県の先週までの状況は大変なことになってます。年末の救急外来はインフルエンザの患者さんであふれかえりそうで今から怖いです。
下図は先週までの状況です。(先週の記事と比べて下さい)
患者数も一気に増えている印象です。(縦軸:定点毎の報告数の合計患者数、横軸:週数)
我々医療者にとって、9連休って正直憂鬱です、、、混み合う救急外来にむだに受診しなくて良いように、今回の特集、是非参考にして下さいね。
さて、今日は「インフルエンザの迅速診断についての誤解」について、お話ししたいと思います。
検査のタイミングはいつがいいか?
「インフルエンザ」というと、速く薬を飲まなくてはいけない、でも熱が出てすぐには検査は偽陰性(本当はインフルエンザなのに、検査は陰性)になるかもしれない。だから、すぐに検査してもらって、出なければ翌日再検査をすべきだ!
と、完全に思い込んでいる患者さんが多くいらっしゃいます。
確かに、抗インフルエンザ薬を使用するのであれば、発症 48 時間以内にというのは、妥当な認識です。
一方で、検査が陽性になるまで救急外来に通い詰める、というのはいただけません。
下図を見て下さい。インフルエンザの検査を経時的に行い続けて、感度(sensitivity)と特異度(specificity)がどう変化するか? を調べた研究をまとめた物です。
多くの研究で確かに12-24時間以内の検査よりも、24時間前後の方が感度は高くなっていますが、それでも 60-70%台ぐらいの感度です。
そもそも「発症からの時間」って一体なんでしょうか?
昨日お話ししたように、インフルエンザの症状は咳だけのこともありますし、どの時点を「発症」と捉えるかはなんとも難しい所です。
ひとついえることは、感度は一貫して高いわけではなく、偽陰性が生じるリスクは常に高い、ということになります。
こうなってくると、「発症からの時間」で検査をするかしないか? を決めるのもなかなかナンセンスな気がしてきますね。
ではいつ受診すればいいの?
全身状態を見ながらにはなりますが、夜中に熱が出てすぐに受診する必要はなさそうです。
だからといって慌てて朝一番に、という必要もなさそうですね。
時々、12時間以上経過するのを待ってました、とわざわざ夜中に受診される方も見えますが、「発症=発熱した時間」ではないことを考えると、これもセンスが悪そうです。
「発症した時間」が同定できない以上、繰り返しの受診も意味がなさそうですね。
さて困った、ということになります。
ということで、この問題は、医療者側からすると、誰に検査をするか?という問題と密接に関わってきますので、次回、議論を深めたいと思います。
【参考文献】
Ann Intern Med. 2012 Apr 3;156(7):500-11
小児科、小児集中治療室を中心に研修後、現在、救命救急センターに勤務しています。 全てのこども達が安心して暮らせる社会を作るべく、専門性と専門性の交差点で双方の価値を最大化していきます。 小児科専門医/救急科専門医/経営学修士(MBA)/日本DMAT隊員/災害時小児周産期リエゾン