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臨床倫理の四分割表

いろいろ試してみて、昨日の投稿文から予約投稿を試しています。

基本朝7時更新、となるように設定してみようと思います。

ひとつ問題が、、、NOTE は登録していないと更新情報が流れないようなので、twitter / instagram、(つながっている方には facebook )を利用して、更新の情報をお届けしています。しかし、これらの SNS との連動が手動なんですよね。ということで、日中タイミングを見て連携する、という形になりますので、リアルタイムに連携できない、、という。

いろいろ試してみますので、是非またご意見ください。

さて、昨日は「臨床倫理の原則」についてお話ししました。今回のシリーズでは一つ一つの事項に深入りせず、まずは全体像を俯瞰していきます。

考える手順

すべての議論が臨床倫理の四原則を満たしながら進行し、整合性と患者にとって意味がある結論を出すためにあるべきだと考えます。一方で、それぞれの原則を一つ一つ拾っていても、なかなか全体像が浮かび上がりません。

また、話し合いの全体像を議論の過程で可視化していく必要もあります。

この為のツールとして、Jonsen らによる、臨床倫理の四分割表(下図)が提唱されています。

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1) 医学的適応
・患者の病状・診断・予後と治療について臨床の場で通常検討される項
・「適応」とは、患者の病状を評価・治療するのに ”適切な” 診断的・治療
  的介入を指す
・何を「適切」と考えるか?は重要な論点
2) QOL(Quality of Life)
・QOL 生命の質と訳されることが多い。
・いかなる外傷や疾患でも、患者の生活を変化させる可能性がある。
・QOL が回復できるのか?
・患者にとっての「質」とは何か?は重要な論点
3) 患者の意向
・患者は何を欲しているのか?
・一般的には「治癒」だと思われるが、患者の本質的な目標は何か?
・一方で、患者はその判断ができる状態にあるか?は重要な論点
4) 周囲の状況
・医学的な症例はすべて、人々、医療施設、財政・社会制度といった
 より大きな状況の下に置かれている
・患者に対する介入は、これらの状況によって、プラスにもマイナスにも
    影響を受ける

これら四項目を広く議論することとで、必要な事項をもれなく議論し、最終的に臨床倫理の四原則を満たしているか?を議論していくことになります。

さらに、小児はもちろん、精神疾患、脳に障害を負うなどで、患者本人が自らの意思を表明できない患者さんではさらに論点を増やしていくことになります。

症例で考えてみると、、、

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皆さんで議論するに当たり、1) 医学的適応 について情報を補っておきます。ただし、議論を単純化するために、「医学的な正確性」については少し目をつぶりながら、ざっくり理解しやすい形でお話しします。

私がカンファレンスで医療チーム内で情報を共有する、あるいは家族に状況を説明する、という文脈で考えたとき、本症例の状態であれば、端的に以下のことをお伝えします。言葉はもちろん選びますし、ご家族の状況を見ながら数日に分けてお話しすることもあります。

・感情、感覚、思考などを司る大脳皮質が広範にダメージを受けており、
 外部からの刺激に反応することはできない。
 (具体的には快・不快も感じない、言葉を喋ることはないし、自分で動け
  ないなど、ご家族の理解に併せ具体的な状況をお伝えします)

・最終的には心臓死(心臓が止まる)にいたるが、その期間は個人差があ
 る。(数日の場合もあるし、数年、数十年になることもある)

・生命維持(心臓が動いた状態を継続する)のためには、人工呼吸が必要
 で、そのためには気管切開という手術が必要である。

・今後人工呼吸を離脱できる可能性はない
  (一生人工呼吸器が必要である)

・逆に偶発的に外れた場合、早期に気づかなければ生命の維持は困難である

・栄養は自分ではとれないので、栄養剤を注入して維持をする

・病院でずっと過ごすことはできず、療養型の病院が運良く見つからなけれ
 ば、自宅でご家族を中心にケアをして頂くことになる。

・療養型の病院が見つかったとして、それを「生きている」ととらえるかは
 論点になり得る

・海外ではそのような状況は「本人の尊厳を著しく傷つける行為」であると
 し、それ以上の治療を望まない、もっと積極的には人工呼吸器の停止を望
 まれる方もいる。日本でもそのように考える親御さんがいることは事実で
 ある。

・以上を踏まえると、現時点で「理論上」とりうる医学的介入は
 ① 生命維持を本分とし、気管切開を行い、自宅退院を目指す
 ② 現時点の介入を含め、「延命治療」ととらえ、すべての治療を中止する

これを読まれて、「法的にどうなんだ?」「安楽死ではないのか?」などご意見もあると思います。「誘導をしているのではないか?」というご批判もあると思います。私たちとしては、できる限りそのような誤解を受けないよう、まずは淡々と事実をお伝えすることになります。また、法的、安楽死などのご批判については、現時点で日本社会で十分に議論が進んでいないことも承知しております。従って、それが実現できるかどうか、実行するかどうか、という点は現時点では保留にして頂きたいと思います。後ほどその当たりに触れながら、議論を進めます。

さて、上記の状況であったときに、皆さんはどう考えますか? 四分割表も活用しながら、考えてみて下さい。

小児科、小児集中治療室を中心に研修後、現在、救命救急センターに勤務しています。 全てのこども達が安心して暮らせる社会を作るべく、専門性と専門性の交差点で双方の価値を最大化していきます。 小児科専門医/救急科専門医/経営学修士(MBA)/日本DMAT隊員/災害時小児周産期リエゾン