先天性心疾患を大まかに理解する③
当 NOTE の全体的な傾向として、「純粋な医学的な話」に入っていくと、一気に読者数が減る、といういかんともしがたい状況があります。
読んでいただいて居る方の多くが、子育て世代の方、ということなのだと理解しています。こんなマニアックなお話につきあって頂き、大変ありがたいなあと思っています。
一方で当 NOTE の重要な使命、小児救急・集中治療に今日のある意思に対し情報提供及び日常診療に資するという観点からは、由々しき自体です(笑)
めげずに続けていればキットいいことがある、と信じ、本日も先天性心疾患について語ってみようと思います。
チアノーゼとは何か?
人間の血液は肺で酸素をもらって「赤」くなり、酸素が消費され新造に帰ってくるまでに「黒」くなります。つまり身体の動脈の血液は「赤」で、静脈の血液は「黒」です。
動脈の「赤」い血液に、静脈の「黒」い血液が混じると、「紫」になります。このように動脈系の血液が「紫」になると、皮膚の色全体が「紫」になります。
ヘモグロビンに酸素がどれだけ付いているかを酸素飽和度と呼びますが、チアノーゼとは動脈系の酸素飽和度が低下した状態といえます。
心臓の構造が正常な方でも、チアノーゼは生じますが、これは肺での酸素の取り込みが減った結果として、そもそも動脈系の血液が「紫」という状態ですので、ここでいう血液が混ざったことによる色の変化とは区別して考えます。逆に言うと、酸素を投与して上げれば、肺での酸素の取り込みが増え、チアノーゼは軽減することになります。
ちなみに、
「赤」に「黒」が混じると「右-左 シャント」
「黒」に「赤」が混じると「左-右 シャント」
といいます。
血液が混じりある割合が増えれば当然影響も大きくなりますので、先天性心疾患のお子さんの症状や手術時期、手術方法などにも影響を及ぼします。
肺血流に注目する
先天性心疾患の血液の流れ具合(血行動態)を把握し、手術方法、手術時期などを決める重要な因子に、肺血流量(肺に行く血液の量)という者があります。
通常は
全身から帰ってくる血液の量
= 右心室から肺に行く血液の量
= 肺を流れる血液の量(Qp)
= 肺から左心房に帰ってくる血液の量
= 左心室から全身に向けて流れ出す量(Qs)
という関係になりますので、
Qp/Qs = 1
という関係になります。Qp/Qs を肺体血流比 といいます。
黒い血液と赤い血液が混じり合う、すなわちシャントが生じると、この肺体血流比が変化します。つまり、Qp > Qs となったり、 Qp < Qs となります。肺体血流比としてみれば、 1 を越えたり、 1 以下になったりします。
これによって、出てくる影響の程度、種類、手術時期、手術タイミングなどが大きく左右されます。
チアノーゼと肺血流から大まかに分類する
先天性心疾患を捕まえるときに、チアノーゼがあるのか、肺血流はどうなっているか?を考えるのはとても大切です。
詳細は、明日以降にお話ししますが、「代表的な疾患」の「代表的な状況」を分類すると(疾患名は一緒でも異なる分類になることがあります)、下記のような表ができあがります。
小児科、小児集中治療室を中心に研修後、現在、救命救急センターに勤務しています。 全てのこども達が安心して暮らせる社会を作るべく、専門性と専門性の交差点で双方の価値を最大化していきます。 小児科専門医/救急科専門医/経営学修士(MBA)/日本DMAT隊員/災害時小児周産期リエゾン