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中毒と自殺 ②

「人生会議」がいろいろな意味で話題になっていますね。
問題提起の仕方はともかくとして、「死」が強烈に印象づけられる状況になると、どうしても感情的、あるいは思考停止をした議論になりがちだなあと感じています。

死を間近に意識のない患者さんを囲んで、ご家族と「患者さんは今なんて言っていますかね?」と話し合うことがあります。私は子どもの死、青年期の死、人生の終末期の死、様々な「死」に関わらせていただいており、その決定をご家族とともに背負う立場にありますが、みなさんいろいろお話になりますね。「おどけた人だったから、、、」とか、「私が言うことはいつも否定してたから、、、」など、皆さん想像力豊かに、お話になられます。

でも、最近話してなかったから、本当にわからない、となかれる中学生、高校生の親御さんもいらっしゃいます。

今回の議論が、「死」そのものだけでなく、「どう生きるのか?」ということに広がっていくといいなと思っています。

さて、そんな中、自ら命を絶たれる人が非常に多いことをお話ししました。救命センターに勤務するようになって、飛び降りをした中学生の症例にも(むしろ小児集中治療室にいた頃より)多く関わらせて頂くようになりました。

自殺の手段と死の可能性

昔から様々な手段で「自殺」が試みられてきており、昔「自殺マニュアル」なども出版され、話題を呼びました。

手段はあまたありますが、致死率によって

硬い手段 = 救命率が低い手段 = 致死の確実性が高い手段
柔らかい手段 = 救命率が高い手段 = 致死の確実性が低い手段

と大きく分類します。

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そういう意味では、大量服薬は多くの場合、睡眠薬のことが多く、しかも、飲んだ後すぐに救急要請される方も多いので、比較的「柔らかい手段」となります。

死へのエネルギー

「自殺」を試みる方の中には、突発性のものを除けば、背景に精神科的な問題を抱えていらっしゃる方が多いのも事実です。

診断がついていらっしゃる方もいらっしゃいますし、診断が付かないまま(あるいは診断に行き着く前に)救命センターに搬送されてくる方もいらっしゃいます。

一般的な知識として、診断名によって「死へのエネルギー」が異なることがわかっています。診断名にとらわれすぎることは問題ですし、そのような眼で偏見を持ってはいけないと考えていますが、注意喚起として、また来院後の対処を知っておく意味で、ある程度の傾向を把握しておくことは実臨床に役に立ちます。

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明日はこの組み合わせを考えてみましょう。

【参考文献】

上條吉人 『イラスト&チャートでみる急性中毒診療ハンドブック』医学書院2005


小児科、小児集中治療室を中心に研修後、現在、救命救急センターに勤務しています。 全てのこども達が安心して暮らせる社会を作るべく、専門性と専門性の交差点で双方の価値を最大化していきます。 小児科専門医/救急科専門医/経営学修士(MBA)/日本DMAT隊員/災害時小児周産期リエゾン