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中毒と自殺③

早いものでもう12月ですね。

お陰様でめまいは随分落ち着いてきていますが、調子に乗って動くとまたぐるぐる、、、という悪循環があるので、今月いっぱいぐらいはおとなしくしていようと思います。。。

さて、12月に入りましたが、この重い話題、後2回ぐらいでいったん切りを付けたいと思っています。

子どもの自殺の特性や背景を語るほどにはそちらの知識がありませんので、今回は成人をふくめた一般論に話をとどめています。

言葉の定義

ネット上を含めいろいろな言葉が散らばっていますので、定義を確認しておきます。

希死念慮
自分自身の死を強くイメージすることや死を願望すること

自殺念慮
自殺をしてしまいたいと考えること

自損行為
自身を破壊するあらゆる行為

自殺企図
自損行為の内、自殺未遂+自殺既遂

自傷
自損行為の内、自殺企図(自殺未遂+自殺既遂)を除いたものすべて
「自殺の意図のない故意の自傷」と詳しく定義することもある

自殺未遂・自殺既遂
自殺を意図して、あるいはその行為が致死的であると理解した上で自損行為をし、結果的に死に至らずに生存した状態を自殺未遂、結果的に死に到った場合を自殺既遂 と定義する。

これらの用語をまとめて、「自殺関連行動」と呼びます。

パラ自殺

患者さんの中には、恋人や夫に対する「見棄てられ不安」から、自分に振り向いてほしいなどの目的からいわば、「見せかけの自殺」をする方が一定数いらっしゃいます。これを以前は「パラ自殺」と呼んでいました。

先日お話しした「死へのエネルギー」自体はそれほど強くないため(そもそも「死ぬことが目的ではない」ため)、比較的致死率が低い手段で「自殺」を図って搬送されます。(自分で救急車を呼ばれる方も多い、、、)。

一方で、そういう方を追跡するとどこかで自殺既遂に到る方が一定数いらっしゃることがわかっており、「パラ自殺」という言葉は誤解を招くということで使われなくなってきています。

その意味で、どんな状況であろうと自損行為に到っている方は、継続的なフォローが必要なるので、「パラ自殺」をその他の自殺関連行動と区別する理由がありません。しかし、救急医療の現場で入院適応を考える際に、その瞬間における「死へのエネルギー」を評価することは非常に重要になるため、個人的には「状態」を定義する意味で「パラ自殺」という概念自体は有用だと考えています。

中毒と自殺

と、ここまで前置きを置いて、やっと本題です。

大量服薬をされていらっしゃる患者さんの中で、睡眠薬を選択される方が非常に多いのですが、睡眠薬そのものの毒性でなくなることは比較的少なく、どちらかというと呼吸停止、窒息で命の危険にさらされます。(つまり、毒性自体は低い)

大量服薬されてこられる方の中で睡眠薬を選択される方は、比較的死へのエネルギーが低い傾向があります。

逆に死へエネルギーが強い方は、毒性が強い物質を選択される傾向にあります(農薬など)。

前述の通り、「パラ自殺」を軽視するつもりは全くありませんが、死へのエネルギーと確定的な手段をとる傾向を評価した際の表現として利用すると、疾患との関係は下図のようになります。

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患者さんが抱えておられる問題は多様で、個別対応が必要なことはいうまでもありませんが、救急医療の現場である程度見切りを付けながら適切に対応する上で、上記の様な関係図を理解しておくことは非常に有用です。

【参考文献】
日本精神科救急学会 「精神科救急ガイドライン 2015」
https://www.jaep.jp/gl_2015.html



小児科、小児集中治療室を中心に研修後、現在、救命救急センターに勤務しています。 全てのこども達が安心して暮らせる社会を作るべく、専門性と専門性の交差点で双方の価値を最大化していきます。 小児科専門医/救急科専門医/経営学修士(MBA)/日本DMAT隊員/災害時小児周産期リエゾン