脳圧って何?
いやー、ワールドカップ。かっこよかったですね。ラグビーの試合、通してみたのは初めてですが、かっこよかったっす。最後、フリーキックを選択しなかったサモアもいいすねえ。
さて、今日は「脳圧」のお話をします。
小児科の先生方には、「髄膜炎」の管理などで、上の先生から、「脳圧があがるから水分は少なめに」といわれ、未だに水分を絞って管理をされておられる先生もいらっしゃるかもしれません。そんな方には是非読んで頂きたいと思っています。
余談ですが、「髄膜炎」。肺炎球菌に対するワクチンが定期接種化された後、殆ど見なくなりましたね。良いことです。
脳の解剖
脳の解剖って考えたことありますか?
頭蓋骨の内側すぐに、硬膜があり、くも膜、軟膜と続いて脳になります。
いわゆる「クモ膜下出血」はこのくも膜と軟膜の間に出血することです。
硬膜は頭蓋骨に、軟膜は脳表面にぴったりくっついていますが、くも膜と軟膜の間にはくも膜下腔が広がっており、血管やら静脈やらいろいろ広がっています。また、髄液もこのくも膜下腔に広がって、脳はその水のなかにぷかぷかういています。これにより脳が衝撃を直接受けないようになっている訳です。
良くいわれますが、こんな感じです。
(https://cookpad.com/cooking_basics/7638)
「脳圧」とは?
脳は生体にとって非常に重要な期間であるが故、厳重に膜に包まれて水に浮べられている、ということになります。ここで、出血、脳腫瘍、脳そのものが腫れる、ということが起こると、どうなるでしょうか?
厳重に囲まれているからこそ、それらの逃げ場がないわけで、閉鎖空間の中の圧力が急激に増大します。この圧力を、脳圧と呼びます。
平時、脳圧を形成する要素は、下図の通りですが、要するに、脳そのもの(脳実質)、髄液、血液、の3つの要素、ということになります。
これのいずれが増加しても、脳圧は上昇する、ということになります。
脳圧があがると何がいけないの?
脳圧があがれば、脳細胞が壊れていきます。だからこそいけないわけですが、脳すべてがいきなり壊れるわけではありません。(もちろん、それぐらい強い一次性脳損傷をうけることはあるわけですが、、そうでなくても、、という話です)
脳にはいくつか「しきり」があります。大脳と小脳を分けている小脳テントが、有名です。下図(リンク先は記事末尾参照)を見て下さい。
脳が腫れた結果、小脳テント(図中では天幕切痕と表記)の乗り越えて腫れ来ると、さらにその下の延髄が圧迫されます。延髄は呼吸など人間にとって生命維持に必要な調整を行っている部分ですので、そこが圧迫されると直接呼吸停止を来します。このような状態を「脳ヘルニア」といいます。
脳ヘルニアを起こしてしまうと、二次性脳損傷を防ぐも何も、そのまま命に関わりますので、脳ヘルニアを起こす前に対処することがとても重要になります。
また、脳の血流は下図のように考えられます。
硬膜の中の圧が「脳圧」ですから、脳圧が上昇すると、単純に脳に血液が入りにくくなり脳に血液が行き届かなくなる、ということになります。
さて、案の定長くなりましたので、続きは明日。とさせて下さい。
【参考文献】
「脳ヘルニアの図」は下記から引用させていただきました。
(https://kotobank.jp/word/%E9%A0%AD%E8%93%8B%E5%86%85%E5%9C%A7%E4%BA%A2%E9%80%B2%2F%E8%84%B3%E3%83%98%E3%83%AB%E3%83%8B%E3%82%A2-792898)
小児科、小児集中治療室を中心に研修後、現在、救命救急センターに勤務しています。 全てのこども達が安心して暮らせる社会を作るべく、専門性と専門性の交差点で双方の価値を最大化していきます。 小児科専門医/救急科専門医/経営学修士(MBA)/日本DMAT隊員/災害時小児周産期リエゾン