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川崎病 「新」 診断基準

ということで、千葉の対応は続いていますが、通常運行に戻していきます。

先日、某小児病院の救命センターの当直をしておりましたところ、川崎病疑いの患者さんがやってきました。
同僚と話していて、そういえば診断基準が変わっていたねということになりまして、かくいう私も最近は、小児科の一般診療そのものからは遠ざかっている部分もあって、「そうなの?」と、、、いや、もうほんとこういう診断基準「こっそり」変えるのやめて頂きたい、ということで、私のような方のために、ご紹介しておきます。

救急医療の中での川崎病の位置づけ

小児科医にとっては、「発熱」「発疹」の鑑別疾患として、十千上がってくる疾患なのですが、いわゆる「救急医」の対応の中で、しっかり鑑別にあがってくることは少ない疾患です。見逃して翌日の朝小児科で診断、ということになると命に関わるか?というと、呼吸不全、心筋炎という重篤な合併症(というか、発症形式)を起こしていなければ、まあ、大丈夫といえば大丈夫なのですが、やっぱりこどもに関わる以上、きっちり診断して小児科にコンサルトしてあげたいですよね。

従来の診断基準と変更のポイント

従来の診断基準を挙げておきます。

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変更のポイントは「発熱」「BCG 接種痕」「冠動脈病変」「不全型川崎病の定義」かな?と思います。

「発熱」

川崎病と診断されると、ガンマグロブリン大量療法(IVIG)が第一選択ですが、他の症状から強く川崎病を疑って、約40%が第3病日以前、約65%は4病日以前に IVIG を開始しているという調査結果があります。このことから、発熱の期間を診断基準から外したようです。つまり「発熱してればよし」ということです。

「BCG 接種痕」

以前から、BCG 接種痕の発赤が川崎病に特徴的であることは小児科医の間ではまあ、常識、です。接種後約1年までの年齢層にしか見られないこと、米国の予防接種では行われていないことなどで、参考条項にとどめられ、「不定形発疹」に含められていました。(写真は日本川崎病学会ホームページより引用)

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川崎病の診療機会はアジア諸国で急激に増加しており、その多くがBCG接種の実施国であり、やはりこの所見が診断に有用という意見が多いことから、「発疹(BCG 接種痕の発赤を含む)」として、診断基準の一項目に格上げされています。

「冠動脈病変」

研究結果を踏まえ、「冠動脈病変」が定量的に定義されました。

Zスコアで+2.5以上
  実測値 5歳未満 3.0mm以上
      5歳以上 4.0mm以上
を異常とする

※ 冠動脈病変 Z スコア:下記ページで計算できます

https://kwsd.info/

「不全型の定義」

川崎病は原因不明の疾患で、診断基準によって診断する「症候群」です。この為、診断基準を完全に満たさなくても、「川崎病っぽい」つまり「川崎病と診断して治療した方が妥当・無難」という症例が存在し、「不全型」と呼んでいますが、明確に定義がされていませんでした。

今回の改訂で、他疾患を否定した上で、3症状しかない例でも冠動脈病変があれば、「不全型川崎病」と診断することが明記されました。

ということで、「新基準」を眺めてみましょう

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お伝えしたように、「発熱」「BCG 接種痕」「冠動脈病変」「不全型川崎病の定義」の4 つが従来からの変化として重要ですね。

診断基準そのものは、こちらからご覧ください。

http://www.jskd.jp/info/tebiki.html

こういうの見る度に思うんですが、関連領域の診断基準とか、治療のガイドラインとか変わったときに、「ここだけ見てればいいよ」的なポータルサイトできないもんですかね。。。小児 × 救急 × 集中治療 の領域については、できるだけこの NOTE で対応できるよう頑張ります。

【参考文献】
日本川崎病学会ホームページ
http://www.jskd.jp/index.html

JBスクエア 医療関係者向け情報
「川崎病エキスパートに聞く」https://www.jbpo.or.jp/med/jb_square/kd/kawasaki/




小児科、小児集中治療室を中心に研修後、現在、救命救急センターに勤務しています。 全てのこども達が安心して暮らせる社会を作るべく、専門性と専門性の交差点で双方の価値を最大化していきます。 小児科専門医/救急科専門医/経営学修士(MBA)/日本DMAT隊員/災害時小児周産期リエゾン