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こころ/夏目漱石 読書感想文

こんにちは。今日は夏目漱石「こころ」について書きます。
教科書にも載っている超有名作ですが、ようやく全て読むことが出来ました。

読書付き7冊&アウトプットを目標にしていますが、小説に手を出してしまった今、それはなかなか難しそうです。

仕事しがてら、隙間時間を生かしつつ、1週間かけて読み終えました。

いざ、アウトプット文章化しようと思い、ライン引いたページを再確認していきました。
すると、新しい発見やひらめきが次々とわき起こり、なかなか先へ進めません。

この深みこそ、名作たる所以でしょうか。


「こころ」のテーマは「こころ」そして「継承」

この小説のテーマを一言で言い表すなら
まさに「こころ」そのもの。

まさに「こころ=思考」の持つ恐ろしい一面が描かれています。

ひらがなを多用した、「やわらかい」文章。
労働を拝し、浮世離れした先生の暮らし。
海水浴場のリゾート感。
ときおり現れる、自然の移ろいの美しい描写。

一見さっぱりとした平穏。
その平穏の中で「思考」が移ろって行きます。

登場人物のほとんどが、「先生」「妻」「妻の母」「両親」「叔父」などで、固有名詞がほとんど登場しません。主人公の友人でさえ、「K」とイニシャルのみ。
具体をさけ、抽象的に表現されています。

このような設定もまた、
「俗世界、目に見える世界」を切り離し、
より「内面、思考」の存在を浮き立たせてるように感じました。

そして水面下で育ち続けていく「思考」は、
あるとき突然顕在化し、現実世界へ恐ろしい牙をむきます。

そして、その「思考」から経験、という過去を積み上げてきた、「先生」。
主人公はその「先生」という呼称を「年長者に対する口癖」と言いましたが、
先生は、自らの「思考」と「生きた経験」を、引き継ぎ、生かし、
そして、主人公の人生の教訓にするよう願いました。

その点で、まさに「先生」だったのだと、感じます。

物語の2つの主題「現実(実利)世界」と「思考(理想)の世界」

物語の中では、2つの主題が存在します。
・現実:目に見える世界に起こる事
・思考:内的世界「こころ」の中で起きている事

そしてこの「現実」「思考」2つの主題は、
・現実:両親
・思考:先生
と言うふうに、登場人物によって具体化されていきます。

上記は、主人公「私」からの視点ですが、
それに対し「先生」からの視点においても、
・現実:実利主義、先生の計略、邪心、嫉妬。
・思考:理想主義、Kの正直さ、良心、愛。
など、2つの主題は細分化され、様々な形をとって明示されていきます。

「私」の先生への憧れは、「思考」への憧れと捉えても良いでしょう。
先生においては「思考」はすでに顕在化し、過去となりました。

そしてその「思考」「過去」を主人公は継承することになります。

「先生」の遺した教訓とは?

最終的に第三部「先生の遺書」と言う独白の形を持って、物語は終わります。
呼称のとおり、最後は私たちに教訓を残し、死んでいく「先生」。

人間の思考が生み出す現実(結果)を命にかえて示す先生。
ただ、結果を示すことこそしますが、それを正しいか間違っているか、
そうした判断は読者に委ねられています。

現代において、先生の生き方を潔い、美しい、と思う読者は少ないのでは?と私は想像します。
死なずして、先生は救われる道がいくつもありました。
あるいは先生がすべきことを、読者である私たちはいくつか思いついたのではないでしょうか?

例えば、
・Kの告白に、自分も正直に打ち明ける。
・妻と妻の母に、何があったかを正直に打ち明ける。
・Kが死んだことに自責の念があるなら、妻を幸せにすべきでは?
等。
先生の自殺、という選択は、我々の理性から考えると、あまりに利己的なように感じます。

しかし、こうした極端な結末を物語の中に表すことで、「それでは私たち自身はどう考えるか」という問いが自然と湧き上がってきます。
このように道徳、倫理に基づいた意見を、読者自身が考えて、生み出すように、作者は問いを投げかけているのではないでしょうか。


「こころ」は受け継がれる

そしてもう一つ重要なことは、この問いかけが
「先生」から「私」という形をとりながら、
「古い世代」から「新しい世代」へと問われていく事です。

明治の終わりとともに、殉死を決意する先生。
この時代設定は、令和の今となってはずいぶん昔のことですが、

「古い世代」から「新しい世代」へ。
「実体験を経たもの」から「イノセントなもの」へ。
それでも現代に当てはまる普遍性を持っています。

以下「先生の遺書」第2節、本文より引用します。

私は何千万といる日本人のうちで、ただあなただけに、私の過去を物語りたいのです。あなたはまじめだから。あなたはまじめに人生そのものから生きた教訓を得たいと言ったから。
 私は暗い人生の影を遠慮なくあなたの頭の上に投げかけてあげます。しかし恐れてはいけません。暗いものをじっと見つめて、そのなかからあなたの参考になるものをおつかみなさい。
私の暗いというのは、もとより倫理的に暗いのです。私は倫理的に生まれた男です。その倫理上の考えは、今の若い人とだいぶ違ったところがあるかもしれません。しかしどう間違っても、私自身のものです。間に合わせに借りた損料着ではありません。だからこれから発展していこうというあなたには、いくぶんか参考になるだろうと思うのです。

この先生の言葉を切り取って読んでいくと、「観念」そのものが擬人化して語りかけてくるようにさえ感じます。重要な部分です。
そして、主人公をつうじて、私たち読者に向けてのメッセージとなります。

「先生の遺書」第2節の本文は、以下のように締め括られています。

私の鼓動が止まった時、あなたの胸に新しい命が宿ることができるなら満足です。

終わりに

さて、この本を読んで、私自身の教訓としたいことは、
・思想を偏重し、現実的に無益な結果を生むことのないようにする
・良心は、自分のためでなく、人のために働かす。
・理想的ではない自分を受け入れ、過ちを詫び、愛、感謝を伝える。
・水面下に潜む問題のサインを見逃さないように気を配る。

などです。

皆さんはどのように「こころ」を読んだのでしょうか?

今日は以上となります。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

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