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数年前、ヒッチハイクで岐阜から博多の実家へ帰った。

広島の尾道PAで日が暮れ、福岡と書いた画用紙も、僕の顔も見えなくなった。これじゃ誰も乗せてくれないだろう。野宿するしかない。

そんな時、

お兄さん福岡まで行くとね?
私ら長崎まで帰るけん、乗らんね?

60代のご夫婦が声をかけてくださった。

埼玉で初孫が産まれたけん
会いに行っとったとですよ

へぇ!埼玉まで遠くなかったですか?

40年間観光バスの運転手しとりますけん
慣れとります

ご主人はにこやかにそう答えた。その笑顔から気配りのある優しい運転をするのだろうなと、思った。




数時間後、博多に到着。
車を降りる僕に、ご主人が言った。



親に顔出すだけでも
立派な孝行ですよ
親孝行の手伝いば
させて貰えて良かったですばい
うちらはしたくても
もう親孝行出来んけんね
子も孫も、可愛いかですよ
親も年寄りも
その顔ば見たかとです
それじゃあ気をつけて

仕事も生き方も生一本。
そんな、長崎の方だった。


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