ひと色展旅行記 上
横浜駅から数駅ほどのところにある『大倉山記念館』
先日、その記念館へ行ってきた!
ひと色展である。
人生で初めての横浜。
新幹線で新横浜駅。
新横浜駅から横浜駅。
横浜駅から、東横線、大倉山駅へ。
電車からちょぷんと飛び降りると、駅のホームからこんもりとした、こだかい山が見えている。
あ、あれが大倉山…
まさかあれを登るのであろうか…!!
いやまさかね!!!!!
と大声で叫びつつ、改札口をむぴぴと通り抜け、興奮したまま全速力で駅を駆け抜ける。
駅前のケンタッキーのそばに 大倉山記念館こちら という看板がある。
その看板の矢印は、やはりこんもりとした森を指し示している。
やはり…まさか…この坂を登るのか。
そうそのま坂である!
と、叫びながらさかをのぼる。
9月の終わりとはいえ、この世はまだまだじわりと暑い。ふくらはぎを極力使わないように、かかとで坂をとつたたたんと登ってゆく。
小麦の焼けた香ばしいパンの香りがするあたりで、女性を連れたこぐまを見かけた。
坂の上の住宅街の方から、涼しい風が吹いてくる。その風の中にハーブのような香りがして、ふと立ち止まる。
足元の何処かにハーブがあるはずだ、と花壇の中を覗き込むと、ローズマリーが花を咲かせていた。
道の向かいのお家には庭師が入っていて、鉄のはさみをちょりちょくちょりちょりと鳴らしている。
遠くから子どもらの遊び声がゆっくりととどいてくる。
秋のような、静かなちいさなそんな何かをかんじながら立ちつくした。
すると、女性を連れたこぐまに追い越された。
しばらくするとそのふたりは、石の階段のあたりで記念撮影を開始したので、ぼくはまた彼らを追い越す。
石の階段を登ると手入れの行き届いた森にぬける。
森の中では、赤や黄色の帽子をかぶった園児たちが、松ぼっくりを手に、インボイス制度について語り合っている。さきほどの子どもたちの声は彼女たちのものであった。
涼やかな風が、白壁の洋館から、ゆるりさらさら吹き抜ける。
ぼんやりと大倉山記念館を見上げていると、またこぐまと女性に追い越され、こぐまと女性が洋館の扉の前で手指消毒をしている隙に、またさらに追い越す。
これは、闘い、なのである。
洋館特有の暗い回廊を抜けると、ひと色展会場らしき場所に到着。
入口らしき場所で、あたりを見渡す。
誰も、いない。
イシノアサミも、サポートスタッフの方々の姿も見当たらない。
これはもしかすると、テントウムシモドキのような、ヒトイロテンモドキの会場に迷い込んでしまったのではないかという恐怖が、胸をよぎる。
おどおどきょろきょろしていると、控室らしき暗がりで女性が3人いるのが見えた。
もぞもぞとうごめいている。
女性たちは、なにかをむさぼりくっていた。
お麩のようなものを、無言で、一心不乱に食べている。
これは、見てはいけない。
そう思って後ずさると、足音をたててしまう。
気づかれた。
中の女性のひとりと、目があう。
「うわあどうもこんにちわあ」
と、その女性は控室から這い出してくる。
彼女の名は、後に日本全国で有名となるうわちゃん、その人であった。
うわちゃんは最初わたしを見知らぬ人と思っていたようだが2時間ぐらいしてあんこぼーろ本人だと気づいた。一緒に温泉に行ったり、金沢ひと色展に行ったりしたのだけどなぁ。
控室から見知らぬ女性二人が出てくる。
ぼくは知らない人とは口を聞かないようにしているので、口を真一文字に結んで拳を握りしめて床を睨みつけ、黙り込む。
おふたりはそれぞれ自己紹介してくださった。
おふたりは、
三間あめさん
さちとピースさん
であった。
ぼくはもごもごと挨拶をする。
すると、誰かが会場に入場された。
ふと見るとこぐまと女性が、ひと色展会場に入ってきた!
ひと色展旅行記 下 に続く。
ちなみに控室にて3人で食べていたお麩は、バナナパン?というおしゃれな食品であった。
よろしければどうぞとおすすめいただいたので、スイカのようにかぶりついた。
柔らかくてほのかな甘さ。今まで食べた食品のなかで一番美味しかった。
もしサポートして頂けた暁には、 幸せな酒を買ってあなたの幸せを願って幸せに酒を飲みます。