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小説 「つくね小隊、応答せよ、」

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第二次世界大戦末期。 東南アジアの、とある島。 米軍の猛攻により、日本軍は転戦(撤退)し続け、日本兵たちは、ちりじりに離散した。 そんな中出会った別々の部隊の若い日本兵の3人、…
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2022年1月の記事一覧

「つくね小隊、応答せよ、」(九)

天保といやあ、まあ今からだいたい100年くらい前だな。ばあさんが話してくれた話っていうの…

「つくね小隊、応答せよ、」(十)

「道雄、おい、道雄、大丈夫か?」 渡邉道雄はゆっくりと目を開ける。 目の前には、心配そう…

おめぇの胸ん中にも、灯りになるような思い出があんだろうが

大正2年。 正月の、大雪の夜。 酒に酔った父が息子の義照を蹴りながら言う。 正月から葬式…

「つくね小隊、応答せよ」(十一)

三人は、密林を早足で進む。 長い歩兵銃に銃剣を装着し、繁る枝葉を薙ぎ払う。 「敵さんは、…

「つくね小隊、応答せよ」(十二)

「聴いてくれ!俺は、大日本帝国陸軍 上等兵 渡邉道雄だ!その銃は、三八だろ?貴様が敵兵な…

「つくね小隊、応答せよ、」(十参)

3人は秋月の敬礼した右手を見て、息をのんだ。 その右手は、血まみれだった。 よく見ると、…

「つくね小隊、応答せよ、」(十四)

社の戸の前、3匹の狒狒が立っています。 体中を覆う白い毛。 血のような赤い目。 黄土色の大きな歯。 朱色の皮膚。 床まで届く長い手。 弁存は息をのみました。 あの時の様子が、つい昨日のことのように思い出されます。 3匹は、棺を見て、 にいいいいやあありいいい と嗤いました。 すると、それを見た娘が、あまりの恐怖に小さく声をあげてしまいます。 「ひぃっ」 弁存は慌てて娘の口を押さえ、僧衣の袖で、娘の顔を覆います。 娘は目をぎゅっとつむり、小さく震えだ

「つくね小隊、応答せよ、」(十伍)

どうやら狒狒たちには、なにか策があるようです。 それぞれが石畳を振りかぶり、本殿の早太郎…

「つくね小隊、応答せよ、」(十六)

早太郎は、かろうじて狒狒の倒す木々を避けています。 怪我をした後ろ足を痛そうに引きずり、…

「つくね小隊、応答せよ、」(十七)

「渡邉、頼みがある」 秋月が、渡邉を睨み付けるようにして言う。 「なんだ」 「…殺して……

「つくね小隊、応答せよ、」(十八)

ジャングルの暗闇の中、渡邉、清水、仲村の三人が、話しています。 焼きもぐらと、砂飯の夕食…

「つくね小隊、応答せよ、」(十九)

翌日。雨が降りました。 渡邉たち三人が服を脱いで雨を浴び、清水が女風呂について語り、仲村…

「つくね小隊、応答せよ、」(廿)

天狗は深々とお辞儀をして、黒い羽をゆっくりと広げ、羽で作られた団扇を取り出しました。 「…

「つくね小隊、応答せよ、」(廿一)

「いやぁああああああああとんでもなく腹へったぁあああああああもう!なあ、南国なんだからさ、なんかねえの?果物とかぶりぶりに実ってるわけじゃないの?もっと南国のさ、鮮やかで動きの遅い鳥とかいるんじゃないの?なんで食いもんがなんにもないの?なんでなの?」 「うるせえよ…せっかく気にしないようにしてんのに。お前だけじゃねんだよ、腹減ってんのは」 渡邉を先頭にして、仲村、清水の順に「行軍」している。仲村は、腹が減ったとぼやき、清水がそのぼやきに、ぼやいている。 最後の食料の砂飯