知恵の言葉、「諺」

人間とは葛藤のデパートだ。しかし、迷える子羊である私たちの背中を押してくれる知恵の言葉がある。それは「諺」だ。言(こと)の業(わざ)と書いて、諺。人間が「やろうかな、どうしよう」と考えていることに意味や裏付けを与え、行動に移させてくれる言葉だ。

辞書的にはどう定義されているのだろうか。岩波国語辞典第六版(古いぞ)によると、

諺──昔から言い伝えられてきた、訓戒・風刺などを内容とする短い句。

とある。多くの人々が時代を越えて共感し続けてきたからこそ、このような類の言葉は連綿と現在に伝えられているのだろう。

よく、「矛盾している諺がいくつもある」という指摘をするひとがいる。例を挙げると「善は急げ」と「急いては事を仕損じる」の組み合わせはそれに該当するとおもう。しかし、矛盾しているように見える諺であっても、そのどれもが真理を表わしていると、私はおもう。

例えば、いつもチャンスを逃してばかりの人にとっては「善は急げ」という言葉がもっともらしく感じるだろうし、焦って失敗しがちな人は「急いては事を仕損じる」という言葉に道理を見出すはずである。

このように、諺や格言といった類の言葉は、その時々の自分にとって都合のいいように解釈すればいいのではないか。そして、実行するか迷っていることを実行する根拠として捉えればいいのではないか。

諺というのは手垢まみれの言葉だけど、私たちの背中を押してくれる力を持っているとおもう。様々な諺を知ることを通して、世の中にたくさんの考え方があるという認識を持っておくことは無駄なことではないはずだ。人間とは葛藤のデパートだからな。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?