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マティス展と「夢」


東京都美術館で開催中の「マティス展」


このマティス展へ行ったのは6月の終わり頃。
なので、もう行ってからは、ずいぶん日が経ちましたが、とても良かったのでnoteに残しておこうと思います。

なんといってもこのマティス展、公式サイトの見どころで記載されているとおり、日本国内では約20年ぶりの大規模回顧展ということ。

150点ものマティスづくしの作品が見られて、しかも日本初公開作品もあるという貴重な展覧会です。

この展覧会で、私が1番楽しみにしていたのが「夢」という作品です。


その作品がこちら。

アンリ・マティス 《夢》


この絵のモデルは、マティスが亡くなるまで傍でその制作を支えたリディア・デレクトルスカヤという女性。

心地良さそうに目を閉じて眠る彼女の柔らかな上半身が画面全体に配置され、絵から充足感が伝わってきます。
静かで穏やかな表情、気持ちよさそうに組まれている腕や、腕に同化するように、ゆるく置かれた手指など、この絵を眺めているだけで、すーっと気持ちが癒されてきます。

マティスの作品には、「静と動」「安息と活力」という対照的な作品があり、感覚の根底にあるものを突き動かし、心が大きく揺さぶられる「動」の作品も数多くありますが、この「夢」はとても心が穏やかになる「静」の作品。

やっぱりアートが心理面に影響する力は大きいなと思う作品です。


マティスの作品の特徴といえば、なんといっても感覚に直接訴えかけるような大胆な色彩や鮮やかな色合いが連想されます。
でも絵をよく見ると、鮮やかな色合いというだけでなく、赤と緑、青とオレンジなど色の対比を戦略的に取り入れているのが分かります。

今回の展覧会では、その色の対比がどのように使われているんだろうと、そこに着目して一枚一枚観察しながら絵を鑑賞してみました。

アンリ・マティス《鏡の前の青いドレス》


アンリ・マティス《ラ・フランス》


アンリ・マティス《立っているヌード》


アンリ・マティス《黄色と青の室内》


アンリ・マティス《緑色の食器戸棚と静物》


アンリ・マティス《赤いキュロットのオダリスク》



撮影OKだったお気に入りの絵をいくつかピックアップし掲載してみましたが、これだけ見ても意図的に色を選び、色合いを重ねていることが分かります。

マティスの絵には、色の対比により画面に惹きつけていくような効果があり、遠くから見ても、一瞥して見ても、近くで見ても楽しめる作品を作り上げていて、マティスが「色の魔術師」と言われる所以が分かりました。
色だけでなく、線による奥行と構成、色の種類による光の演出まで理論的に絵が描かれているのを観察しながら見るのも面白かったです。


この展覧会では絵画だけでなく、切り紙絵、彫刻、版画、ドローイングなど、マティスが生涯にわたって製作した多彩な作品が展示されています。
また、晩年の最大の傑作であり、マティス自身がその生涯の創作の集大成とみなした南仏ヴァンスのロザリオ礼拝堂に関する資料まであり、みどころがたくさんあります。

およそ60年分の作品が展示されていて、作風の転換期がよくわかるのも興味深かったです。

この「マティス展」はいよいよ今週末の8月20日(日)まで。
こんなにマティス一色の展覧会はなかなかないと思うので、マティス好きの方はぜひ会期中に足を運んでみてくださいね。

ここまで、読んで頂いて本当にありがとうございました♡

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