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パワハラと呼ばれた男がカーネギーの「人を動かす」から得たこと

パワハラシリーズです。

今回のテーマは、デール・カーネギー氏が書いた「人を動かす」です。

本のタイトル通り人を動かすには(動いてもらうには)どうすれば良いかを知ることができるます。読み進めるにつれて自分がこれまでしてきたことをダメ出しされているようで胸が痛くなったことを覚えています。

私は、相手を尊重したい気持ちはあるけど、その方法が分からずに、人間関係がうまく行かない、誤解される、といった問題を抱えて苦しんでいました。

この本の結論としてよく言われていることは、

  • 相手の重要感を高める

  • 褒める

といったことですが、恐らく多くの方は、そんなことはこの本を読まなくても知っていると思います。

私も、相手を尊重するとか、褒めて伸ばすというワードは当たり前のように知っていましたし、実際に意識して褒めたりもしましたが、状況が変わらないことも多かったです。

ではどうしたら良かったのか、何がいけなかったのか、過去の自分に向けたメッセージとしてまとめてみたいと思います。


サマリー

  • 人に動いてもらうためには、"自ら動きたくなる気持ちを起こさせること"

  • 批判や批難よって自分の希望を通したという悪い成功体験を得てしまうと抜け出せなくなる。批判や批難は何の意味もない。

  • 相手が好むもの、関心があるものを探し続ける。そのために相手を理解し、話を聞くことに徹する。

  • 良い褒め方する。悪い褒め方をしない。

  • 重要でないことは、相手に譲る。

  • 異なる意見が出ることは、選択肢が一つ増えたと歓迎する。

  • 意見が異なる場合は、一致している点から話をしていく。

  • 相手の間違いを指摘する際は、自分が間違っていたら考えを改めたいので教えて欲しいというスタンスで話をする。

  • 自分の考えに賛同して欲しいときは、その考えを相手が発案するように誘導する。

  • 指示を出すときは、命令系で伝えずに、質問系で行う。

  • 人の能力を育てるには、既にその能力が備わっているとして扱う。

  • 相手がミスをしても責めない。みんな通ってきた道だと伝えてあげる。

  • 文句を言われたときは、相手に同情を寄せて、根気強く最後まで話をきく。

人に動いてもらうための唯一の方法

人に動いてもらうためには、

"自ら動きたくなる気持ちを起こさせること"

しかないと記載されています。

では、どうしたらその気持が起こるのでしょうか。

どんな人でも自己重要感を満たしたい、つまり、自分は価値のある存在でありたいと思っています。

自己重要感は、自己肯定感と他者からの承認で成り立っています。

そのためには、相手に関心を示し、理解し、心から認めてあげ、褒めてあげ、顔を立ててあげる、といったことが結論となってきます。

あなたは相手のことよりも、自分の主張をどう伝えるかばかりを考えていないでしょうか?

相手がどうしたら自己重要感を満たし、自ら動きたくなるかを考えてみましょう。

批判や批難で得られる成功体験

あなたは、「そんなに相手に気を使ってばかりいられない。むしろ、相手がこっちに気を使うべきだ。それが出来ないから批判や批難はやむを得ない。」と考えるのでしょう。

相手に動いてもらうために、批判や批難をするとどうなるのでしょうか。

例えば、相手に何らかのミスや、あなた的には質の低いアウトプットが出てきたとします。

あなたはどんな反応をしますか?

相手なりの理由があっての行動、結果ですし、ましてや悪意で行っていないはずです。むしろ、許される状況の範囲内でベストを尽くしたと考えるのが自然だと思います。

ですが、あなたはそんなことはお構い無しに批判や批難を行うでしょう。

相手はそれを受けて、その場では納得したように振る舞ってくれると思います。あなたは言いたい事を言えてスッキリしているはずです。

しかし、相手は内心では自尊心を傷つけられ、やる気は削がれています。今後あなたのために頑張ろうとは思ってくれません。

人に動いてもらうために必要な「相手の重要感」を満たしてあげることと真逆のことを行っているからです。

そして、あなたは批判や批難、苦言や文句によって自分の希望を通したという悪い成功体験を得てしまいます。この成功体験に味をしめ、同じような対応を繰り返します。

ここであなたは「パワハラ」という不名誉な称号を得ます。

今すぐこの成功体験は捨てましょう。批判や批難は何の役にもたちません。

物分りの悪いあなたは、「自分の方が上なんだから、パワーを使った方が手っ取り早いじゃないか、こっちも忙しいんだ」と言い訳をするかもしれません。

ですが、その思考はあなた自身が「主体的」ではないことを証明しています。あなたは「7つの習慣」の第一の原則もクリアしていない、そもそも人の上に立ってはいけない人なのです。

まずは、"バケツ一杯の苦汁よりも、一滴のハチミツ"を与えたことで得られる成功体験を積んでください。

釣り針に何をつけるか

魚釣りに行ったとき、あなたは釣り針に何を付けますか?

狙っている魚の好物をつけると思います。

でも、あなたは、人に対しては釣り糸に自分の好物(自分の要求や相手の批判)をつけてしまうようですね。

相手が好む物、つまり、相手が何によって重要感を得られるかは、ケースバイケースです。

人によっても、状況によっても異なるので、毎回それを探すのも大変ですから、自分の好物を付けた方が楽なのでしょう。

ですが、それが無意味なことは前述の通りです。

相手がどんなことを好み、どんなことに関心があり、どんなことに自信を持っていて、どんな長所があるか、いくつ答えられますか?

あまり答えられないなら、あなたはまだ釣り針につける相手の好物を持っていません。

面倒でも、人や状況ごとに、相手が何を望んでいるのか、どうすればそうしたくなる気持ちが起きるか、といった相手の好物を探し続けなければいけません。

相手の好物を見つけるには

相手が好むものを見つけるには、相手を理解し、相手の関心をみつけるために関心を寄せることが欠かせません。この手間を惜しんではいけないです。

相手が得意なことや深い関心を持っていることなど、喜んで答えてくれることについて聞き、相手の理解に努めましょう。

そういう関係でもないし、今更話をしにくいかもしれません。最初は相手も驚くかもしれません。でも、誠実に話を聞く姿勢を見せ続ければ相手もきっと理解してくれます。

変わろうとしているあなたを感じてくれるはずです。

肝心なのは相手の話を聞くことに徹することです。あなたの発言は話を引き出すためだけに行ってください。

相手が聞かれて困るような質問をしてはいけません。また、あなたの自慢話やあなたの意見を挟んだり、相手の話の価値判断をしないでください。

下記のような問いに答えられるように相手を理解し続けましょう。

  • "本当に心から感心できることはなんだろう?"

  • "相手の長所はなんだろう?"

  • "相手の心の中に隠された宝物はなんだろう?"

相手の行動や言動を振り返ってみることも大切です。

相手の考えや行動には、相手なりの背景や理由があります。なぜそれを行うに至ったのか、もし、自分だったらどう感じ、どう考え、どう行動するか、相手の立場になって理解しようと考えてみましょう。

良い褒め方と悪い褒め方

真摯に相手の理解に努めている前提で、相手を褒める、認めてあげることは「重要感」を満たすことに繋がります。

「重要感」を満たす良い褒め方は、具体的に説明できる真実で、心の底から思っていることのみを伝えることです。

悪い褒め方は、お世辞を使うことです。
お世辞とは、真実ではなく、心から思っていないことです。

これは相手に見透かされてしまいます。

どんな人でも、何らかの点で優れています。日頃から相手に関心を示し、理解に努めていればその人なりの長所や成長を見つけることができるはずです。

その人なりの世界で重要な人物であることを認めてあげて、わずかなことであっても事実を心の底から褒めてあげましょう。

また、心の底から褒めて認めてあげた後に、助言を行うと受け入れてもらいやすくなります。

褒めたあとに「そして」という付加的な言葉を挟んで助言するようにしましょう。

  • 例)◯◯◯がすごくいいね、そして、◯◯◯すると、更に良くなるよ!

褒めたあとに、逆接的な言葉を挟むと褒めたことが台無しになります。

  • 例)◯◯◯がすごくいいね、でも(だけど)、ここが◯◯◯だから直して。

逆接的な言葉を挟むと、その言葉を聞いた瞬間に、褒め言葉は否定するための前置きのお世辞だと思われてしまい、心の底から思っている褒め言葉であっても効果がなくなってしまうだけでなく、信用も失ってしまいます。

せっかくの褒め言葉を誤解されないようにしましょう。

あなたが相手を褒めても効果が無かった理由が分かりましたか?

小さなことや無益なことで争わない

誰かが間違ったことを発しているとき、あなたは自分の優秀さを示したくて、意見も求められていないのにしゃしゃり出ていきましたね。

対象の問題が小さなことであったり、どちらでも良いようなときは相手に譲ってあげるべきです。あなた自身の重要感を満たすよりも、相手の重要感を優先しましょう。

次からは下記の問いに答えて良く考えてみてください。

  • それは大きな問題か。

  • "あなたの反論は問題の解決に役に立つか、あなたの気を晴らすだけか。"

  • "あなたの反論は相手を引き寄せるか、遠ざけるか。"

  • "議論に勝つ代償として何を失うか。"

  • "私が反論しなければ、この論争は収まるか。"

議論になって例え勝ったとしても、負けた相手は劣等感を持ち自尊心を傷つけられます。あなたが議論に負ければただの負けで、どちらに転がっても得られるものはありません。

相手に譲るという行為は、一見、Lose-Winのように見えますが、問題が小さなことや無益なことであればWin-Winです。

意見が合わない重要な問題があるとき

相手と意見が合わないけれども、解決しなければならない重要な問題が生じたとき、あなたは自分の価値観を押し付けるためにパワーを使いますね。

まず、意見が合わないということは、考え方が異なる選択肢が1つ増えたと喜ぶようにしましょう。

その上で、冷静に下記のことを考えてください。

  • "相手の方が正しいのではないか、少なくとも正しい部分もあるのではないか。"(もし、自分の意見が間違っていると思う点があれば率直に認めましょう。)

  • "相手の主張に正当性や長所はないか。"

相手の立場になって検討してみてください。

それでも意見の相違があれば、その理由や問題点を一緒につきとめることを目的に、意見が一致する点、相手の主張で賛成できる点を確認していきましょう。

意見が一致している点、つまり、相手もイエスと言える部分を強調しながら対話を進めることで、互いに同一の目的に向かっていることを理解してもらうようにします。

そうすることで、相手の重要感を損ねることなく、違いがある部分のみにフォーカスして冷静な話し合いができるはずです。

そのあとは、両者の案のメリットやデメリットを一緒に検討したり、あるいは、両者の案とは異なるより良い第3の案を一緒に検討するといった建設的な話し合いを行いましょう。

相手の間違いを指摘したいとき

相手が明らかに間違っていることもあると思います。

そんな時にあなたは「バカじゃないのか?」とは言わないまでも、そういう思いを持ちながらバッサリ否定をしていませんでしたか?

人は他人から間違いを指摘されると不快になり、自尊心を傷つけられます。

その一方で、自分で気づいた間違いは抵抗なく変えることができます。

ですので、相手が間違ったことを主張していると感じたときは、確認をしたいという姿勢で質問をするようにしましょう。

”「私はそうは思っていなかったです。私はよく間違いますので、たぶん、私の間違いだと思うのですが、間違っていたら改めたいと思いますので、そう思う理由を教えてもらえますか?」”

といったスタンスで、相手の考えの前提を確認していきましょう。

前提となる事情や事実認識が両者で異なるだけかもしれません。それが異なるのであれば、その違いを説明してあげれば良いはずです。

これは相手の間違いを指摘しているのではなく、前提情報の認識を合わせるための行為にすぎないため、相手が不快になる可能性は低くなります。

前提情報が正しくないと分かれば、相手は自尊心を保ちつつ自分の考えを変えることができます。

人に物を教えることはできません。自ら気づく手助けができるだけです。

教えないふりをして教え、相手が知らないことは忘れているようですと添えてあげる気遣いをしましょう。

このように理解のある態度を示すと、相手は自分の素直さや心の広さを示すことで自尊心を得ようとして、自分の間違いを認めやすくなったりもします。

自分の考えに賛同して協力して欲しいとき

新しい企画や改善提案など、自分の意見の強力な支持者になって欲しいということがあると思います。

そんな時、あなたは自分的には非の打ちどころのないロジックと、気合の入ったプレゼン資料で、俺のアイデアすごいでしょ的なプレゼンをしますね。

その結果、たいてい承認はもらえるけど、周りからの協力が薄いと不満に思っていたと思います。

あたなにそのつもりはなくても、周囲の人はあなたが手柄を独り占めしようと思っていると感じ、あなたのために力を注ぎたくないと思っていたのかもしれません。

このような事態を避けるには、あなたのアイデアを、協力して欲しい相手が考えたアイデアにすることです。

少しテクニック的なこと行うことになりますが、相談という形で話をし、あなたのアイデアは相手に伝えず、相手があなたのアイデアと同じ結論に達するようにヒントを伝えていきます。

100%同じ結論にならなくても、できるだけ相手の意見を取り入れる努力をしてください。

結論は相手の発案、または相手と共同で考えた案とするのです。

意見が通ることは重要感が高まることに繋がります。また、自分の意見や自分が大きく関与したことは大切にするので、相手は自主的に協力的な行動を行ってくれるはずです。

なかなか難しい面もあり、テクニック的な要素もありますが、試してみると良いでしょう。

指示を出すとき

指示を出すとき、あなたは「これをこうしておいて」か「これやっておいて」でしたね。

今後は命令はせず、質問の形にしましょう。

命令を質問の形にかえると、気持ちよく受け入れられ、相手は頼りにされているという重要感を感じ、自主的、創造性を発揮してくれることも期待できます。

  • こうして欲しいとき → ”こう考えたらどうだろう?”

  • これでは心配なとき → ”これでうまくいくかな?どうだろう?”

  • さらなる改善をお願いするとき → ”こうすればもっと良くなるかもしれないが、どうだろう?”

  • 2日でこれを終わらせたいとき → ”これを2日でやるためには、どうしたら良いだろう?”

このように質問の形にすることで、結論を出す過程に相手も参加することになり重要感が高まります。

そして、その結論は相手の結論となるため、積極的に取り組む気持ちが起きやすくなります。

育って欲しいとき

あなたは人を育てたいとき、足りていない部分を批判してスキルアップを求めていましたね。

今後、新しい人を育成するときは考え方を変えて、育てたい能力、直したい点が、すでに人よりも優れていると伝えてあげ、その通りに扱うようにしましょう。

与えられた評価がその人を変えると考えてみてください。

能力を信じていると伝え、自信を持たせてあげましょう。相手は自分の優秀さを示そうと頑張ろうとします。

最初は思うような能力を発揮出来なかったり、ミスもあるでしょう。

そのような場合は、能力の問題ではなく、経験不足なだけだと伝えてあげ、能力に自信を持たせて励ますようにしましょう。

相手が頑張ったがミスをしたとき

あなたは、相手がミスをしたとき、鬼の首を取ったかのように批難することもありましたね。

相手は萎縮してしまいます。

相手が抜け漏れといった軽微なミスをしたときは、
「自分も完璧ではないし、同じようなミスを良くしたよ。みんな通ってきた道だよ。」と伝えて、自尊心が失われないようにしてあげた上で、注意をしましょう。

質的なミス、例えば認識違いなどによってやり直しが必要なものの場合は、

”「あなたにとってこれが素晴らしい出来であることは理解しているよ。状況によっては100点だと思うよ。今回は事情が違うので、こういった視点で考え直してみてくれないかな?どうだろう?」”

という感じで、アウトプットを褒め、相手の顔を立ててあげた上で修正の依頼をするようにしましょう。

文句や不満を言われたとき

相手から文句や不満を言われたとき、あなたは自分の正当性をどう伝えるかを考えていましたね。

まずは、相手に思う存分、最後まで話をしてもらいましょう。
途中で話を遮ったり、異論を挟んではいけません。

人は自分の重要感を満たすために苦情を言ったり、権威を振り回すことがあります。
そんな時に最後まで話をさせないと相手の重要感は満たされません。

誠意を持って、相手の言いたいことが無くなるまで、何時間でも何日でも誠意を持って話をききましょう。

どんなに怒っている人でも、最後まで話を聞いてくれる人に対しては大人しくなっていくものです。

相手の立場を良く理解し、場合によっては
”「あなたの気持ちは分かります。私があなただったら同じようにするでしょう」”
というように同情を寄せてあげましょう。

重要感と同様に誰もが同情にも飢えています。

相手の怒っていることや内容が理不尽であっても、それは相手が悪い訳ではなく、相手の境遇や環境が悪かったと思ってあげる優しさが必要です。

相手の身になって話を進め、相手の意見を受け入れれば、その後に相手もこちらの意見を受け入れやすくなったりします。

誠意を持って、時には同情を寄せながら話を最後まで聞き、その後で自分の考えを伝えるようにしましょう。

おわりに

名著と言われるだけのことはあり、ポイントを絞ったつもりでしたが長くなってしまいました。

正直、こんな言い方だけで本当に変わるかな?と思ったり、逆効果ではないかなと感じた部分があったのも事実です。

ですが、私が行ってきたことは、相手と信頼関係を築くという部分では多くの間違いがあったことは分かりました。

このような学びのヒントになる記事を書いています。


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