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雨上がりのあした~雨宿り篇~

こんな ゆめを 見た


その日は 大つぶの雨が ふっていて
行き交うひとはみな 足早で 立ち止まることなく 去っていた
 
つめたい

雨つぶが 体に ふる
とつぜんの つめたさに 目をつぶった

「いらっしゃい。」

花屋の おばさんの声
目をあけると 青色のかさをさしたそのひとが 少しさびしそうな顔で こちらを 見おろしていた

「あの、この紫陽花ください。」
「はいよ。あなたも今回のことをきっかけに花を育てるの?」
「はい。」
「そう。今日だけでもあなたで8人目よ。最近花を買う人が増えてるのよ。」
「そうなんですね。」
「可愛がってあげてね。強い日差しに弱いから、気を付けてあげて。あ、でも水のあげすぎも根腐れしちゃうから、程々にね。」
「繊細なんですね。」
「そうよ。生き物だもの。後ね、時々声をかけてあげて。」
「声をかける? 花なのに?」
「素敵な言葉をかけてあげればあげるほど、綺麗に咲くのよ。」
「そうなんだ。知らなかった。」
「花はね、何も言わないけど、人間の言葉や行動を実は見守っているの。雨除けつける?」
「いえ、家近いのでそのまま持って帰ります。」
「そう。じゃぁ、はい。」

花屋のおばさんが とつぜん持ちあげ グラっと体がゆれた
そのひとは だきかかえ 受け止めてくれた
 
温かい

トクン トクン

こころの音が 聞こえてくる

トクン トクン

「綺麗な青色の花。私の傘とお揃いだね。」

と言って そのひとは ニコっと ほほえんだ


そこで ゆめから さめた

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