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クー・フリンの妻が浮気!?アルスター伝説「エウェルの駆け落ち」

アイルランド伝承「エウェルの駆け落ち」のガバ訳。クー・フリンの妻エウェルが、ノルウェーの王子と駆け落ちする衝撃的な物語です。

主な登場人物はエウェル、クー・フリン、御者ロイグ。12世紀に書かれた可能性が高いものの、確かな時期はハッキリしていません。貞淑な女性であるはずのエウェルが浮気をするという、他の物語からは考えられない設定を鑑みるに、おそらく後からアルスターサイクルに付け足されたものだと思われます。

いつもホイホイ浮気するクー・フリンが、妻の不貞にはどのように対処するのか? 殺伐とした夫婦の物語ですが、ある意味でクー・フリンのエウェルに対する強すぎる独占欲が垣間見える内容にもなっています。どうぞお楽しみください。

誤訳指摘していただけると土下座して喜びます。

元文はこちら


The Elopement Of Emer
Aithed Emere
エウェルの駆け落ち
15世紀の写本Stowe 992より


ある日のこと、クー・フリンはエウェルをダンドークに残し、ロイグと共にTraig Baileの側からSlíab Breagの頂の近くまで、鳥の群れを狩りに行きました。

ところが、その日はノルウェー王の息子がやってくる日でした。

ダンドークにやってきたTuir Glestaをひとめ見て、エウェルは激しい恋に落ちました。

そして彼女は自らの女中を連れ、彼と共に駆け落ちしてしまったのです。

彼らはムルセヴネ平原、Crich Conaill、Subaltach mac Roigの土地を略奪したあと、戦利品を港に運び、船に積み込みました。そうして、Foreignersの島々とDún Monaig、マン島へと戦利品を運んだのです。

この知らせを耳にしたクー・フリンは、イチイの小船がある場所へ行き、Tuir Glestaに戦いを申し込むべく、ロイグと共にDún Monaigへ向かいました。ノルウェー王の息子は戦いを受けて立ち、二人は激闘を繰り広げました。

この戦いにより、ノルウェー王の息子は殺され、砦はクー・フリンに破壊し尽くされました。そしてエウェルを連れ戻しながら、クー・フリンはこのような詩を語ったのです。

ああ、エウェル。それは二人の秘め事ではない、
お前は不名誉な行いをした
お前の旅路*1は俺からTuir Glestaのものとなったが、
それは多くの目の中の指なのだ*2。

海の上に浮かぶ船*3
それに乗り込む者と同類だ。
その船はまるで女ども、
それを楽しむ彼女も同類。

俺たちは海を越え旅をした
闘士の国Dún Monaigへ。
俺たちはお前の男を殺し
ここで敵を討ったのだ。ああ、エウェル。


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*1 : ここでの旅とは「駆け落ち」を意味しており、上の行の「不名誉な行い」を指している。

*2 : おそらく、クー・フリン自身だけでなく、ほかの人々(例えば別のアルスター人)の失望と非難を表す諺。英語で例えるなら「a thorn in one’s side」という諺と似たような意味(目の上のこぶ的な意味らしい)。

*3 : ethar(渡し舟)とは、誰でも隔てなく使用できる船を指す。女性とそのような船を比較したということは、クー・フリンがエウェルに辛辣な叱責を与えたのだと解釈できる。


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