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DON'T LOOK BACK を振り返る


訳したら、「『振り返らない』を振り返る」。「『変わらなきゃ』も変わらなきゃ」(昔イチローが出てたCM)みたいですが。

一年前『DON'T LOOK BACK』 という文章を書いて(未読の方は先に読んでもらった方が良いかも)から、「あ、あれを書いてなかったなぁ」とか、「ちょっと簡潔にまとめすぎたかなぁ」とか色々とひっかかる所があった。
そんな書きそびれた部分も書いておきたいなと思ったのである(加筆修正するという手もあるけど、新しく書いた方が早いかな、と)。

自分はどちらかと言うと、あちらこちらに脱線しながら話をしたり文章を書いたりする傾向がある。
それは客観的に見てダラダラして見えるかもしれないなぁ、と思ったりして簡潔にまとめたのがあの文章であった。

しかし人生に無駄は付き物である。
寄り道や回り道もまた面白かったりする。
無駄がないなんて、なんて無味乾燥なものだろうか。
ベストアルバムがつまらない、と言われるのもそこじゃないかと思う。アルバムにはたいてい無駄な曲やおまけ(?)の曲何かが入っていて、そういうのがまた楽しかったりする。

こう書くと、『DON'T LOOK BACK』 はつまらないものと言っているように聞こえるかもしれないがそうではない。でないと、あんなに多くの人が「スキ」してくれるわけがない(泣)。

そういや、昔短大の卒論ゼミの先生に「カッコの中が面白い」と言われたなあ。電車の中で読んで吹きそうになったと。。。どんな卒論なんだ。


では、そろそろ本題へ。


グラスゴーについて


ティーンエイジ・ファンクラブ(Teenage Fanclub:以下TFC)の故郷グラスゴーは、イギリス・スコットランドの南西部に位置し、最大の都市らしい。日本の都市に強引に例えると、スコットランドは北海道・東北地方、グラスゴーは仙台かな、と(青森説もあり)。

東北(の特に日本海側)は晴天の日が少なく、グラスゴーも俗に「レインタウン(雨の街)」と呼ばれている。そして、彼らの人柄も飾り気がなくおおらかで少しシャイな所(喋ったことないけど)も東北っぽい気がする。

そして、同じイギリスでもロンドンとは違う独自の音楽的進化(深化)をしてきた土地でもある。TFCの他にもオレンジ・ジュース、アズテック・カメラ、パステルズ、ジーザス&メリーチェイン、プライマル・スクリーム、ベル&セバスチャン、フランツ・フェルディナンド等を輩出した豊かな音楽的土壌がある。オアシス等が在籍したクリエイション・レーベルをやっていたアラン・マッギーもグラスゴー出身(長くなるのでこの辺でやめます。興味のある方は各自調べてください)。


「オアシスやニルバーナほど有名では無い」


TFCと両バンドはお互いの音楽を認め合っていたし、交流もあったようだ。

確かTFCが4thアルバム「Grandprix」をレコーディング中のこと。オアシスのリアム・ギャラガーがその現場を訪れて彼らの新しい音を聴き、こう言い放ったそうな。

「君たちは世界一すげえバンドだよ!・・・いや、世界一は俺ら(オアシス)だから、君たちは世界で2番目にすげえよ!」(※ちなみにキャリア・年齢ともにTFCの方が上です。)

それを聞いたメンバー、笑うしかなかったそうな。

ちなみにオアシスには「Don't Look Back In Anger」という名曲がありますね。「Don't Look Back」も決してそれに負けない名曲だと思います。


ニルヴァーナのカート・コバーンはTFCはもちろん、同郷のバンド「ヴァセリンズ」の大ファンで、「Son Of A Gun」「Molly's Lips」をカバーしている。

TFCもニルヴァーナの影響は受けているようで、2nd『Bandwagonesque』3rd『Thirteen』あたりはグランジ寄りのサウンドになっている。


TFCについて

TFCの主要メンバー3人について書いていなかった。この3人は1989年頃から2018年中頃まで不動であった。3人とも曲を作り、他のプロジェクトなどでは担当以外の楽器も使ったりしている。


ノーマン・ブレイク(ボーカルと主にサイドギター・コーラス)



ライブではセンターに立つ。フランクでひょうきんなキャラクターでバンドのスポークスマン的存在。
楽曲はストレートで明るめのものが多いが、メロディや歌声に哀愁を感じさせる。

代表曲に「The Concept」「Neil Jung」「I Don't Want Control Of You」などがある。

ビートルズで言えばさしずめジョン



レイモンド・マッギンレー(リードギターとボーカル・コーラス)


佇まいも作る曲もどこかサイケで謎めいている印象。歌声は少し鼻が詰まったような感じ(失礼)だが、リードギターはとてもカッコ良い。

代表曲に「I Don't Know」「About You」「Only With You」などがある。

ビートルズで言えばジョージか。ただしバンドでは彼が最年長?



そして、ジェラルド・ラブ(ベース・ボーカル・コーラス)


愛称はジェリー。カーリーヘアとシャイな笑顔がチャーミング。
3人の中で最もポップな曲を書く人だと思う。歌声も甘くて、ビートルズで言えばポールであろう。おそらく最年少。

代表曲に「Star Sign」「Sparky's Dream」「Ain't That Enough」などがある(「Don't Look Back」も彼の曲)。


ジェリーの脱退と飛行機嫌い


そう、言わばポールが脱退したわけです。そりゃショックでしょう。

数年前、キリンジから弟の泰行氏が脱退した時もびっくりしたけど、彼はソロでバリバリやっているし、国内だから観に行ける。

しかし、ジェリーはグラスゴーにいて、しかも飛行機乗りたくない、と。

てことはこの先ソロ活動を継続しても、こっちから行かないと観れない。

いや確かに飛行機で世界を回る生活というのは過酷だと思う。かのオアシスの初期メンバー(ボーンヘッドとギグジー)なんかも、バンドでの成功をあっさり(?)捨てて、家族と過ごすために脱退している。まれに飛行機事故で命を落としたアーティストだっているし、それでなくても時差ボケや旅疲れがありつつ、パフォーマンスをしてくれるアーティストには頭が下がる。

「Fear Of Flying」と言う曲が収められているアルバム『Thirteen』には、ラストに「Gene Clark」と言う彼の楽曲が収められている。ジーン・クラークとはバーズのオリジナルメンバーで、彼も飛行機嫌いだったと言われている。

まあ正直前作『The Shadows』あたり、もっというと6th 『Howdy!』辺りから、90年代の勢いは感じられなくなってはいたものの、来日したら往年のナンバーもやってくれるし、なんだかんだ観に行っていたわけです。
しかし前回がジェリーを観るラストチャンスだったなんて(しかもそれ見逃すし)。



「あれ?ジェラルドじゃないぞ⁈」とサポートメンバーについて


この公演でベースを弾いていたのはデイブ・マクゴワンという男で、グラスゴーの音楽シーンのあちこちで助っ人としてバンドに参加しているマルチ・プレイヤーである。見た目は全然違うが、日本でいうと堀江博久氏のような存在(マニッシュボーイズ(斉藤和義+中村達也)のTV出演の時に彼がベースを弾いていたのには驚いた)かと。TFCのライブでは2000年代半ばくらいからキーボードで参加していると思う。

見た目もスキンヘッドにキャップで男っぽく、「マクゴワン」って感じだ。この人が優しい笑顔のジェリーのポジションにいることに違和感が拭えなかったといえば嘘になる(ごめん、マクゴワン)。

そして、キーボードを弾いていたのはウエールズ地方出身のエイロス・チャイルズ。彼はゴーキーズ・ザイゴティック・マンキというバンドで90年代から活躍していた。ジェリーと少し見た目が似ているので、最初ステージ奥でキーボードの前に座っている彼を見た時、「お?あれがジェリーかな?足を骨折して今回はキーボードとか?」と馬鹿なことを一瞬考えたりしたのだった。


と、ドラムのフランシス(・マクドナルド)を忘れてました。失敬。

彼はオリジナルメンバーですが程なく脱退、パステルズやらソロやらで活動した後、2002年頃に復帰し、今は正式メンバーです。TFCじゃないけど、パステルズの「ファイアベル・リンギング」という曲の後半のドラムが印象に残ってます。



「初期と比べると見た目はずいぶん変わっちゃったけどね〜」について



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1991~93年頃と思われる。左からノーマン、レイモンド、2代目ドラマーのブレンダン、そしてジェリー


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2017年頃。左からジェリー、デイブ、ノーマン、レイモンド、フランシス。

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↑2019年来日時のメンバー。左からエイロス、ノーマン、レイモンド、フランシス、デイブ。ジェリーはいない。


まずレイモンド

初期は割とジェリーに近く、カーリーヘアでなかなかのイケメン。現在はどこかの大学教授みたいな感じ。


次にノーマン

初期はロングヘアをなびかせ、ロッカー然としていた。最近ではメンバーに「お前、エルトン・ジョンに似てるな」といわれるらしい(オープニング・アクトのTENDOUJIのメンバーが言っていた)。

個人的にはマイケル・ムーア監督(≒近藤春菜)にもちょっと似てる気がする。


そしてジェリーですが

あんまり変わらないなーと。強いて言えば髪が短くなって皺が深くなったかな?くらい。でも脱退しちゃったんだなぁ。


最後の曲が「Broken」



MC担当?のノーマンはジェリーの脱退には触れず、最後に演奏した曲がbroken(壊れた)って…彼らの関係が?いや、そんなことはないんだろうけど、聴く方にしても考えてしまったりもした。

当時は「ファンの気持ちを慰めるためなのかな」なんて考えていた。それもあると思うが、なんということはない、彼ら自身の気持ちを表現したんだろう。brokenには「壊れた」の他に「傷ついた、傷心の」といった意味がある。

ジェリーの脱退は、彼ら自身にとっても残念で心が傷んだに違いない。かと言って無理に引き留めることもできない。長年一緒にやってきたジェリーが抜けても続けると決めたのはノーマン、レイモンドにとっても苦渋の決断だったろう。


最後に


TFCは去年でデビュー30周年を迎えた。アルバムリリースの間隔も初期は2年ごとだったが、だんだん長くなって最近は5年位になった。


https://mikiki.tokyo.jp/articles/-/12136

↑TFCが「Here」をリリースした時の、サニーデイサービス曽我部さんのインタビューです。


それでも新譜を出してくれるのはうれしいし、TFC本体と共にジェリーの活動も楽しみにしたいと思う。

読んでくれてありがとうございます。長くなりましたが、これにて完結。もう振り返りません!(たぶん)


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