見出し画像

TKA後の慢性疼痛は、痛みの軌跡で予測ができる

▼ 文献情報 と 抄録和訳

術後の痛みの軌跡を用いた人工膝関節全置換術1年後の痛みの予測

Imai R, Nishigami T, Kubo T, Ishigaki T, Yonemoto Y, Mibu A, Morioka S, Fujii T. Using a postoperative pain trajectory to predict pain at 1 year after total knee arthroplasty. Knee. 2021 Oct;32:194-200.

[ハイパーリンク] DOI, PubMed, Google Scholar

✅ ハイライト
✓手術後、多くの患者さんが術後の慢性的な痛みを感じている
✓慢性的な術後の痛みを正確に予測する方法はなかった
✓痛みの軌跡は、CPSPのリスクをより早い段階で予測するのに役立つかもしれない
✓長引く痛みを早期に予測することで、術後の慢性的な痛みを予防できる

[背景]
痛みの軌跡は、術後慢性疼痛(CPSP)の早期発見・予測法の一つである。しかし、人工膝関節全置換術(TKA)を受けた患者において、痛みの軌跡がCPSPを予測できるかどうかは不明である。ここでは、(1)TKA患者のCPSPを予測できるかどうか、(2)CPSPを予測するために使用できる値について検討した。

[方法]
211名のTKA術後患者を対象とした。TKA術後1日、3日、5日、7日目に患者が自己申告した痛みの強さの値を用いて、痛みの軌跡(痛み曲線の傾きと切片)を算出した。構造方程式モデリング(SEM)を用いて、重回帰分析を行い、痛みの軌跡の適切な予測モデルを検討した。CHAID(Classification and Rgression Tree)手法を用いて、決定木モデルによりCPSPを予測する値を算出した。CPSP(従属変数)は、TKA後1年の時点で、痛みの強さを表すvisual analog scaleで30mm以上と定義した。予測変数は、Pain curve slope、intercept、年齢、性別、body mass index、術前の痛みの強さとした。

[結果]
TKA後1年間の痛みの強さを予測するモデルとしては、痛みの軌跡が最も適合した。pain curve slope(pain trajectory)が2.8より大きい場合、TKA後1年目のCPSPの確率は33.3%であった。

[結論]
今回の結果は、Pain TrajectoryをTKA後の患者に適用し、CPSPを予測するための臨床値を算出するのに使えることを示唆している。また、今回の結果から、術後1週目に疼痛曲線の傾きが正しかった患者は、CPSPを回避するために早期の介入が必要である可能性が示唆された。

▼ So What?:何が面白いと感じたか?

○●━━━━━━━━━━━・・・‥ ‥ ‥ ‥

✅Pain trajectoryとは、術後痛患者の痛みの程度を、術後1日、3日、5日、7日に評価し、それらの値を一次関数に近似させ(X:日数,Y:疼痛強度VAS)、得られた近似式の傾き(=疼痛強度の改善程度)と切片(=術直後の疼痛強度)を算出する方法である。以下の畿央大学ニューロリハビリテーション研究センターのサイトに詳しく記載されている。

臨床現場での測定はVASのみであるし、上記のサイトからエクセルをダウンロードすれば、解析もめっちゃ簡単!本当にすごい解析方法だと感じた。#語彙力

○●━━━━━━━━━━━・・・‥ ‥ ‥ ‥

良質なリハ医学関連・英論文抄読『アリ:ARI』
こちらから♪
↓↓↓

最後まで読んで頂きありがとうございます。今日も一歩ずつ、進んでいきましょう。

○●━━━━━━━━━━━・・・‥ ‥ ‥

この記事が参加している募集

#最近の学び

181,393件

#学問への愛を語ろう

6,190件

少しでも参考になりましたら、サポートして頂ければ幸いです。