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地方のローカル鉄道はどうなるのか、またはどうあってほしいか③ 国の「提言」のコア

 こんにちは、残暑が大嫌いなパスタライオンです。今回で、ようやく日本のローカル線についての議論の現在地である、国の検討会からの「提言」の内容に入っていきます。
(「提言」URL → 国土交通省へのリンク )

これまではこの「提言」が行われた背景について、振り返っていました。

地方の鉄道はどうなるのか、またはどうあってほしいか(序)|パスタライオン ~鉄道と交通政策のまとめ~|note

地方の鉄道はどうなるのか、またはどうあってほしいか① 北海道の失敗|パスタライオン ~鉄道と交通政策のまとめ~|note

地方の鉄道はどうなるのか、またはどうあってほしいか② 誤解をほどく|パスタライオン ~鉄道と交通政策のまとめ~|note

1 「提言」をしたのは誰?

 国(国土交通省)が設置した「検討会」です。この「検討会」が国に対して「こうしたほうがいいよ」と提案して、国がそれを受けて今後法改正を含めていろんなスキームを構築していくことになります。

*正式には「鉄道事業者と地域の協働による地域モビリティの刷新に関する検討会」といいます。長い。

2 「提言」はいつ出されたの?

 2022年 7月25日です。この記事を公開するだいたい2か月前です。
「提言」としてまとめられるまでに約半年の時間をとって、5回の会議を行っています。
 ↓は第1回の会議の開催要旨です。

https://www.mlit.go.jp/tetudo/content/001464071.pdf  (国土交通省)

*余談ですが、最近「誠にごめんなさい」的なプレスリリースとかに触れる機会が多くて、こういう「ちゃんとした組織」の文章は読んでいてメッセージ性をビシバシに感じますね、一言一句抜かりないです。

3 「提言」の中身をざっくりと

 「提言」の内容自体は上にリンクをしていますので、中身を詳しく読みたい方はどうぞ!

 地方の鉄道はどうなるのか、またはどうあってほしいか② 誤解をほどく|パスタライオン ~鉄道と交通政策のまとめ~|note

 この記事でもご紹介した通り、この「提言」が出されたのは「このままでは地域の足が無くなってしまう」おそれがあるからです。
 私の記事ではその要因を人口減少・少子高齢化と自治体の無関心に求めましたが、検討会としてはもっと広くかつディープにその背景を分析しています。

 この「提言」のコアとなる部分は、「国がもっと積極的に関与しなさいよ」という旨を提案していることです。

4 国の関与を求めることがなぜコアいのか

 今までも実はローカル鉄道を対象とした支援スキーム構築、そして存続か廃止かといった議論を国はやりなさいと言われてきたし、やってきました。
 たとえば、2015年3月 「地域鉄道のあり方に関する検討会」の提言内容で実施された支援と、2014年12月の「改正地域公共交通の活性化及 び再生に関する法律」については、この施策2つセットで
 ・国が安全確保のための投資や財務的な支援をする
       ↑    ↓
 ・事業者と自治体は街づくりと交通網形成プランをつくる

という関係性が構築されました。
(背景に2014年に実施されたJR北海道への安全投資支援の追加があります)

 でもこれは、「JRを含まない」施策セットなんです。対象外。
 2022年目線で考えると
 自治体⇔第三セクター等 への支援スキームはあるものの
 自治体⇔JR に何らかの関与をする方法がなかったのです。
 そういう意味で、国が 自治体⇔JR の議論の場を作るなど、動けるようになるという点が画期的であり、またこの「提言」のコアだと言うに足る背景です。

5 国鉄民営化は失敗だった…ってコト?

 違います。
 国鉄→JRへの転換、民営化が失敗だったから、ではありません。国鉄の民営化は時代の要請に応え、一定の成果を挙げ今日に至るまで鉄道含む交通網形成と維持に貢献した政策であることは、否定できません。
(この話は刺さる人には刺さってしまうので機会があれば別記事で)

 この「提言」は、また国営に戻せと言っているわけではなく、国の積極的な協力によりJRと沿線自治体の議論を推進することを求めています。

https://www.mlit.go.jp/tetudo/content/001492230.pdf  (国土交通省)

 主体は当然、自治体と広域自治体としての都道府県。でも、結局「線区」の単位で話をするときには、自治体をまたぐからとかそういう理由で議論が進まないという実情があるんだから、国も協力すべきだというまとめとなります。

 今までの法の大枠を変えるものではないけれど、その枠内での国・自治体・事業者 3者の役割を明示したのは大きな前進と言えるでしょう。

6 これから起こること

 30ン年前に行われたことが「国鉄の分割・民営化」であり
 これから起こることは
 「JR線の分割・三セク化」なのか
 「鉄道の廃止・バス転換」なのか
 「JRが維持するための事業改革」なのか あるいはそれら全てか
 各自治体のリアクションも様々ですが、やはり10年,5年前に北海道が経験していたことを無にせずに、あるいは反面教師として現実に立ち向かおうと私もあらためて思った次第です。 

7 運命の時

 いずれにせよ、私たちには「本当に欲しいもの」をねだる機会と期間が与えられました。
 方向性を出すまでの3年、これは日本の交通網、ひいては経済史に必ず大きな影響を与える運命の時です。まだまだ自分の地域のこと、自分事だと実感できないのは当然です、ただちょっと、自分の住んでいる市のホームページとか、広報誌とか、チラチラっと見てみませんか?
 そんなお話で今回の記事を終えたいと思います。
 ありがとうございました。

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