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『具体と抽象』

「あなたの説明は抽象的で分かりにくい!」
しばしば悪い印象を伴って使用される「抽象」という言葉。

本書は、この「抽象」という言葉の概念、抽象的な思考について、「具体」という言葉との対比で、わかりやすく解説してくれる一冊です。

■こんな人におすすめ

本書の中では、以下の方を読者層として記載されています。

①抽象概念を扱う思考力を高めて、発想力や理解力を向上させたいと思う読者

②自ら具体と抽象という概念の往復を実践しながら、周囲の「具体レベルにのみ生きている人」とのコミュニケーションギャップに悩んでいる人

少し捉えづらいですが要するに、
『この人とはいつも会話が噛み合わない!』といった経験を日常的にしている人が、その解決策を模索するのにピッタリな一冊なのです。

■抽象化とはなんなのか?

本書の中では、抽象化をいくつかの言葉で定義しています。その一部を紹介。
尚、この「抽象化」の概念を感覚的に理解することが、本書を読むにおいてとても重要です。

①抽象化とは、デフォルメすること。
特徴あるものを大げさに表現する代わりに、その他の特徴は一切無視してしまう大胆さが必要。

②抽象化とは、複数の事象に法則を見いだす「パターン認識」の能力。
身の回りのものにパターンを見つけ、それに名前をつけ、法則として複数場面に活用する。

③ 抽象化とは、解釈の自由度が高いこと。
具体的であればあるほど、その解釈は限定的となるが、抽象化されればされるほど、その物事に対する理解の幅は広がる。

■抽象化はどういった場面で生きるのか?

①変革するフェーズ
会社でも社会一般でも、「不連続な変革期」においては、抽象度の高いレベルの議論が求められ、「安定期」には逆に、具体性の高い議論が必要になる。

②本質を捉える時
本質を捉えるとは、表面事象から抽象度の高いメッセージを引き出すこと。
一般的に、抽象度が上がれば上がるほど、本質的な課題に迫っていき、それは簡単には変化はしない。

③仕事のフェーズ
上流の仕事であるほど、抽象度は高く、下流の仕事であるほど、具体的な作業へと移行する。

■話が噛み合わない原因

ここまでで、抽象の概念、抽象が生きる場面について紹介してきました。

これらを踏まえ本章では、
『話が噛み合わない』時の具体例とその原因を明らかにするとこで、『どのようにすれば話が噛み合うのか?』ヒントを探っていきたいと思います。

「世の中そんなに簡単に二つに分けられない」という人との会話

本書によると、
抽象レベルの高い思考ができる人は、物事を「二項対立」で捉え、具体レベルでしか物事を捉えない人は、「二者択一」で捉えるようです。
(↑難しい!!)

たとえば、
ある物事について、人々の意見が複数あったとします。
抽象レベルの高い人は、それらが全体のどこに位置づけられるのか、という俯瞰的な視点で見渡そうとします。

対して具体レベルでのみ見ている人は、全てが二者択一に見えてしまいます。
その結果、「世の中そんなに簡単に二つに分けられない」となるのです。

抽象レベルでとらえている人はそういうことを言いたいのではなく、「考え方」を言っているのですが、それがなかなか通じない。

ネット上でも「◯◯は××だ」と「言い切る」のは、「抽象レベルの方向性」を示しているだけで、「(具体レベルの)すべてがそうだ」と言っているわけではないのです。
ところが、具体レベルのみでとらえる人は、それに対する例外事項をあげて「反論」する。
これは、まったくレベルがかみ合っていない議論なのです。

■どうすれば噛み合うのか?

話が噛み合わない!
そう感じる人は、おそらく抽象レベルが高いのかもしれません。

言い換えるならば、「見えている」側に立っているということであり、「見えていない相手」にどのように対処すべきか、これは「見えている人」が持つ、共通かつ永遠の悩みなのです。

抽象度が上がるにつれて、理解できる人の数が減っていきます。
抽象と具体は相対的なものであり、さらに上の抽象の世界があります。

そして、自分には理解できないレベルの抽象を前にすると、私たちは「わからない」と批判の対象にしてしまいます。
人間は、大なり小なり抽象概念の塊なのですが、自分の理解レベルより上位の抽象度で語られると、突然不快になるという性質を持っているようです。


ということを踏まえ、どうすれば良いのか?

結論、抽象レベルの高い方(あなた)が、状況と相手に応じてちょうどよい抽象度でコミュニケーションするしかないのです。
「抽象的だからわかりにくい」ということがクローズアップされだが、じつは「具体的すぎてわかりにくい」こともあります。
要は、相手に合わせた程度が重要なのです。

高い抽象レベルの視点を持っている人ほど、一見異なる事象が「同じ」に見え、抽象度が低い視点の人ほどすべてが「違って」見える。
これを分かって会話をするだけで、状況は大きく変わると思います。

■最後に

抽象レベルの視点を上げるためには、多種多様な経験を積むことはもちろん、本を読んだり映画を見たり、芸術を鑑賞することによって実際には経験したことのないことを疑似経験することで、視野を広げることご重要だそうです。

そうすれば、「一見異なるものの共通点を探す」ことができるようになり、やがてそれは無意識の癖のようになっていくというのが本書の主張です。

本noteを読んでいただき、関心を持っていただいた方は、ぜひ本書を読んでみては。

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