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FP1級実技|PartⅠ最新の傾向と対策(2024年6月受検用)

この記事では、FP1級実技面接PartⅠ(相続・事業承継)の過去3年間の出題傾向を踏まえ、2024年6月試験に向け、どの分野の論点を重点的に対策しておくべきかを示します。

2023年9月試験までの傾向

2023年9月試験までの出題傾向として、過去の記事(※)では、以下の点を指摘しました。

  • (★1)事業承継については、事業承継税制の適用、配当還元価額による社内承継、M&Aなどが満遍なく問われている。

  • (★2)特に事業承継税制は、より細部の論点を問う傾向が見られる。
    ⇒適用後の株式譲渡(2022/2/5、2023/2/11)、特例措置と一般措置の違い(2023/2/11)、相続発生後の適用(2023/9/24)

  • (★3)比較的短いスパン(ここ1~2年間)で、一度問われた論点が再出題されたり、その関連論点・隣接論点が出題されたりしている。
    ⇒不動産管理会社の設立・活用(2023/2/5、2023/6/11、2023/6/17)
    ⇒特定の評価会社(株式等保有特定会社2023/6/18、比準要素数1の会社2023/9/30)

  • (★4)税制改正事項は頻出。(税制改正大綱発表後のかなり早いタイミングでその内容が問われることもある)
    ⇒生前贈与加算7年、教育資金の一括贈与の非課税、新NISA(2023/6/10)
    ⇒教育資金の一括贈与の非課税(2023/9/24)
    ⇒2023年10月開始のインボイス制度が2023/2/11のPartⅡで質問された。

  • (★5)2022/6/4 と2023/2/4に出題された医療法人の承継は、2023年6月と9月は出題がなく、そろそろ問われてもおかしくはない状況にある。

2022/4/12付、2023/8/11付、2023/12/4


以上の傾向を踏まえて、直近の2024年2月の出題を振り返ってみましょう。

2024年2月試験の傾向

2024/2/10 PartⅠ

  • 2024年1月からのマンション評価方法の改正(★4)

  • 不動産管理会社の設立(★3)

  • エンジェル税制(★4)


国税庁が評価法の通達を改正し、2023年11月30日に評価明細書や計算ツールなどの具体的な内容が明らかになったばかりの「マンション評価方法の改正」が、いきなり問われ、慌てた受検生の方が多かったと思われますが、まさに「かなり早いタイミングで税制改正内容が問われる」傾向を反映した形です。

当サイトはこの改正内容が発表されるや、Xで#FP1級実技面接のタグを付けてその概要をポストし、「伏線回収」Season2の解説にすぐに追加する対応をとりました。

そして、こちらも意外な出題と思われるかもしれない「エンジェル税制」ですが、実はその一部が令和5年度税制改正事項になっています。

2024/2/11 PartⅠ

  • 事業承継税制(特例):複数の株主からの承継の要件と最低贈与株数(★2)

  • 金庫株を換金する場合の課税関係(★1)

  • 遺留分に関する民法の特例の仕組みと手続き(★3)


事業承継税制(特例)について、概要レベルの知識から一歩踏み込んだ細部の要件が問われていますが、これもまさに最近の傾向通りと言えるでしょう。

実は「複数の株主からの承継の要件」については、前回2023/9/23 PartⅠに、似たようなケース(2人の株主からそれぞれの息子に株式を移転するケース)が出題されています。

このケースでは、①Aさん→息子Cさんへの移転に事業承継税制(特例)を適用、②Eさん→息子Fさんへの移転は配当還元価額により移転、が正解となります。

②では、Fさんとその同族関係者で50%超取得することにならないので事業承継税制(特例)は適用できないのですが、このケースを考える時、事業承継税制(特例)における「複数の株主から最大3人までの後継者」への承継パターンが頭をよぎります。

出題論点ではなかったものの、ついでなので、この承継パターンを習得しておく必要性を感じ(※)、当サイトは、2024年2月試験の直前対策ブログで、「複数の株主から最大3人までの後継者」への承継パターンの要件について注意喚起しました。
(※)上記で示した「(★3)比較的短いスパン(ここ1~2年間)で、その関連論点・隣接論点が出題される傾向」を踏まえての判断です。


また、「金庫株を換金する場合の課税関係」についても、金庫株が近年頻出の社内承継(★1)の一手法として活用される点に着目して、直前対策ブログで取り上げました。


いずれも、最新の傾向を徹底的に分析することで、出題を的中させることができました。

「遺留分に関する民法の特例の仕組みと手続き」は、同一論点が2022/2/13 PartⅠで出題されました。

2024/2/17 PartⅠ

  • 名義株の概要・リスク・解消方法

  • X社株式の評価(中会社の大・従業員60人で今期以降積極的な人材確保)と事業承継税制(特例)の適用(★1)

  • X社本社土地建物を経営に関与していない妻Bさんへ相続する件について(★3)


「名義株」は、4年前の2020/2/8 PartⅠで出題されました。これについては、過去1~2年の設例をカバーするだけでは捕捉しきれなかった論点でした。

「X社本社土地建物を誰に相続するか」という論点は、2022/2/13 PartⅠにも見られます。(表向きは出題対象にはなっていないようですが)

2024/2/18 PartⅠ

  • 遺言書と異なる遺産分割の方法(★3)、受遺者が亡くなっている場合の取り扱い

  • 相続手続き、法定相続情報証明制度(★3)、2024年4月からの相続登記の義務化(★4)

  • 小規模宅地等の特例

  • 賃貸アパートの売却(代償分割)


「遺言書と異なる遺産分割の方法」「法定相続情報証明制度」は、2022/9/24 PartⅠで出題されました。

「2024年4月からの相続登記の義務化」については、当サイトの直前対策ブログで取り上げています。


「小規模宅地等の特例」については、多くの設例で、頻出論点となっています。

以下の記事で、実技面接向けにスピーディーな判定を行うための2つの観点を提示し、事例問題を付しました。
小宅判定無双を目指しましょう!

2024年6月試験に向けて

以上、今回の記事により明らかになった最新の傾向を踏まえて、2024年6月試験のPartⅠに向けては、次の4点に留意して対策を進めていきましょう。

  1. 事業承継は、親族内承継や社内承継(従業員承継)において、事業承継税制(特例)の適用、配当還元価額による譲渡、金庫株の活用など、どんな場合にどんな方法を使うかを整理しておく。第三者承継(M&A)ではその方法・株価の算定アプローチ・メリットとデメリットを把握しておく。

  2. 資産承継は、一連の相続手続きについて、よく確認しておく。(TAC本掲載の2022/9/24、今回の2024/2/18)

  3. 令和5・6年度税制改正事項の総復習。

  4. 医療法人の承継は、引き続き要警戒。

1.の承継方法については、以下の記事の「弟や甥などへの承継と社内承継」でまとめています。


また、以下では、(1)M&Aと(2)社内承継について、O&A形式でチェックできます。


3.の税制改正事項については以下の記事で。


4.の医療法人の承継については以下の記事で。
個人クリニックの医療法人化(2021/10/9 PartⅠ)、医療法人の特徴(持分・配当なし等)、認定医療法人制度とM&A(2022/6/4 PartⅠ)
などの論点を網羅的に解説しています。

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