FP1級実技面接|傾向に変化? 求められる過去問対策+α
FP1級実技面接の PartⅠ(相続・承継)について、 ここ5回分(※)の出題内容を見てみると、傾向にかなりの変化があることがわかります。
※2021年6月度、2021年9・10月度、2022年2月度、2022年6月度、2022年9•10月度
事業承継はM&Aがトレンド
まず、非上場会社のオーナーが主人公の事業承継に関する出題です。
2021年2月度以前は事業承継税制(特例)が主に問われていましたが、2021年6月度以降は、M&Aや社内承継が狙われています。
・2021/6/6
事業承継の種類とメリット・デメリット(M&Aや社内承継含む)
・2021/9/25
事業承継の種類とメリット・デメリット、M&Aの手法と評価額
・2021/10/3
社内承継(役員への配当還元価額による贈与・譲渡、金庫株の活用)
・2022/2/5
事業承継税制適用後のM&A
・2022/2/12
M&A ※ほぼM&A一色の出題
・2022/6/4
持分のある医療法人の承継(認定医療法人制度、M&A)
・2022/6/5
M&Aの基本合意解消後の承継
・2022/9/25
事業承継税制が使いにくい親族内承継
2022年2月と6月で、一気にM&Aに関する出題が増えました。
しかも、医療法人のM&Aや、M&A破談後の承継のあり方など、M&Aに関する十分な知識がなければ対応できない応用的な設例が登場しています。
また事業承継税制も、それまでは適用前の要件等が主に問われていましたが、適用後の譲渡(法人化やM&Aによる)や免除対象贈与(次の後継者への贈与)等が問われるケースが目につきます。
また2022/9/25には、副社長である弟への事業承継税制による贈与が実行しにくいケース(財産の無償移転は相続人にとっては不満の種となり得る)も出ました。
事業承継税制(特例)には期限がある点も考慮すると、今後の出題でもM&Aや社内承継を含む事業承継全般が幅広く対象になることが予想されます。
医療法人、海外不動産も出題
次に、頻出テーマである「法人化」です。
従来は不動産賃貸業や店舗経営の法人化のメリット・デメリットを問う形が主流でしたが、より広く発展的に法人化の態様を問う傾向が見られます。
・2021/6/12
持株会社の設立、100%グループ法人間の資産譲渡(グループ法人税制)
・2021/10/2
休眠している有限会社の活用による法人化
・2021/10/9
個人クリニックの医療法人化(個人版事業承継税制の適用→持分なし医療法人の設立)
医療法人については、先にも触れたように、2022/6/4にその承継が問われていますので、「認定医療法人制度」についての理解は必須と言えるでしょう。
また、資産承継では、外資系企業の日本法人の役員を退任予定の富裕層を主人公とする設例で、海外不動産の相続問題(2022/2/19)が問われました。
外国税額控除の他、米国での相続手続きに関する知識がないと答えられない内容です。
FP1級実技(金財)2022年2月19日 PartI 面接レポート
このように直近の傾向は、これまでのような過去問対策オンリーでは通用しない出題範囲の広がりを感じさせます。
求められる過去問対策+α
面接本番で、全くノーマークの未知の事項を問われ、返答できずに沈黙してしまう。
そんな事態は避けなければなりません。
そのためには、既習事項を深め、さらに関連分野の新たな知識を増やしていく必要があります。
それらを十分に覚えきれていなくても、ほんの断片でも記憶が残っていれば、面接官が出す助け舟に乗って、沈黙を避け、会話のキャッチボールを継続できます。
常に問題意識を持って、ネット検索や関連本の読書を通じて、広範な知識の獲得に努める。
主軸となる過去問対策に加えて、そのような+αの学習が求められます。
PartⅠ(相続・承継)対策におすすめの本
『失敗事例から学ぶ 事業承継対策・相続対策』(大蔵財務協会)
山田コンサルティンググループ(株)が執筆した本です。
事業承継・相続対策を専門に扱う実務家の立場から、60のよくある失敗事例が紹介されています。
事例と言っても、FP1級実技の設例とは異なり、短めのシンプルなワンテーマ構成。
1級学科の知識があれば、サクサクと取り組めます。
例えば、M&Aは16例掲載されていて、契約解消の事例には、こんな見出しが付されています。
・情報が洩れ、根も葉もない噂が・・・
・家族のために進めていたはずが
・社長より偉い人はいませんか?
・早ければ早いほうがいい?
・どんぶり勘定だったがために
事例の他にも、M&Aのメリット・デメリット、進め方、株式価値の算定方法などがコラムで解説されています。
また、医療法人の承継については2例あり、出資持分の評価と「持分のない医療法人」への移行の留意点がコラムで解説されています。
事業承継・相続対策に関する基本を押さえつつ、1級実技の対策問題集(過去問)には載っていない事項も含んでいるので、新規出題への備えにもなります。
読みやすい反面、知識の深堀りには欠ける面もあるので、より詳しく知りたい場合はネット検索などを併用することをお勧めします。
私は、対策問題集(過去問)に煮詰まった段階で一読しましたが、知識の定着のために直前期に再読しておくべきだったと後悔しています。
※2/19のPartⅠで問われた海外不動産の相続について、この本にはその事例が1例掲載されていました。しかし記憶が薄れていて、結局、面接では十分な回答ができませんでした。
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