Universe 25実験 天敵がいないマウスの楽園の未来とは

人類の人口が現在77億人として、2100年には110億人にも増えると目算されている。

110億人となると現在のおよそ4割増しになると言うことになるけれど、人口増加による、食糧問題などの社会不安がおそらくは浮き上がってくるだろう。そうなったときに何かしら最適解を導いてほしいと未来の人たちに願いたい。うちらはそのときまで生きていないだろうし。

実際に110億人まで増えたとして、食糧問題や居住する場所など、全く問題が無ければ、人類は平和に生きていけるだろうか。まあ、大半の人は首を縦に振らないだろう。

1954年から72年にかけて、アメリカの動物行動学者のジョン・B・カルホーン氏が行った実験があって、4匹のつがいのマウスに十分な広さと無限に与えられる食餌、運動できる場所や適切な気温と湿度が保たれた部屋を用意した。

このマウスたちに天敵のいない最高の環境を与えて、その営みを観察した。

この部屋には3840匹のマウスを収容できることが可能で、産めよ増やせよとマウスの個体数は2200匹ほど増えたという。そして、そこから減少し始めた。

マウスは単独で活動するけれど、群体で餌を食べに行くようになった。1匹でいることに不安を覚え、1匹で行動していたマウスも群れて行動するようになる。

そして、群れの中で全く活動しない引きこもりが現れた。この引きこもりはメスとの繁殖を拒み、食餌と睡眠と身体の手入れだけで過ごしていた。身体に傷もなく、健康的だったオスは「美しいもの」と呼ばれた。

美しいものは同じマウスたちの社会に積極的に干渉することはなかったけれど、時には攻撃的になり、ほかのマウスを襲ったという。

メスもまた繁殖行動に関心が無くなり、「美しいもの」として引きこもってしまった。

美しいもの以外のマウスはどうなったのかというと、メスがオスのように攻撃性を持つようになり、自分の子供も攻撃するようになってしまった。

子どもは巣離れをせざる得なくなり、引きこもりになるか食べられてしまった。

そして、メスの妊娠率も低下し、流産率は上昇、マウスの出生率が急激に下がりだした。

オスもまた心理的に異常を起こし、求愛ルールを無視した行動が見られるようになった。成熟していないメスに交尾行動をとったり、同性に交尾行動をとると言ったケースが増えていく。

この実験が560日になったとき、マウスの増加がぴったり止まってしまう。乳児の死亡率は急増し、高齢化が進んでいく。

やがて、出生率より死亡率が上回るようになり、少しずつマウスの数が減少していった。

そして。1780日目に最後のオスが死亡し、滅亡が決まった。

これはたまたまこういう結果になったのだろう、そう思う人もいる。

この実験はスケール変えて25回繰り返したが、すべて同じ滅亡の結末を迎えた。

さて、人類はマウスと同じ轍をたどるのだろうか。

この問題を否定する人も数多くいるようで、実験を行ったカルホーン氏も人間は優れた知恵を持っているし、潜在的に起こす未来だとしても、このような未来は選ばないだろうと言っている。

その後の研究では霊長類が過密した環境においては、周りに気を遣う行動が見られたという。大きな声を立てて周囲を刺激しないように控えたり、毛繕いやキスしたり、抱擁して友好を示す仕草が増えたという。

人類がほかの動物と比べて前頭葉が発達している。前頭葉は社会的に好ましい規範に適合するように情動を調整してくれるのだ。

とはいえ、この実験は普段から観測している自分たちの社会のありように重なって見えてしまう感覚が否めない。どこかで、分岐点を誤って人類繁栄の道を閉ざしてしまうのだろうかと。

だからといって、LGBTsが生産的でないと否定する態度は持ってないですよ。はい。


参考








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