【感情は腸につながる】幼児期の感情制御は腸内細菌と関係していたぞ

自己の感情制御と腸内細菌叢の意外な関連性

背景

感情制御は、個体の社会的・心理的な発達において極めて重要な役割を果たします。このプロセスは、前頭前野などの脳の部位が幼少期に急速に発達することによって、特に幼児期に大きな進展を見せます。従って、この時期の感情制御の発達度合いは、将来の社会経済的な成功や身体・心の健康を予測する要因として注目されています。しかし、これまでの研究では、この時期の感情制御の個体差に関連する具体的な要因やそのメカニズムについては解明が進んでいませんでした。

近年、脳と腸内細菌叢との複雑な相互関係が研究の対象となっており、これを「脳―腸―腸内細菌叢相関」と呼びます。腸内細菌叢は、免疫系、内分泌系、自律神経系などを通じて脳と密接につながっており、これによって感情や認知機能に影響を与える可能性があることが示唆されています。成人を対象とした研究では、腸内細菌叢の特性が精神疾患(うつ病や不安障害など)や認知機能に関連していることが示されています。さらに、腸内細菌叢の基盤は、生後3〜5歳頃までに形成され、その後も安定化していきます。なぜなら、腸内細菌叢の組成は主に食事習慣に影響を受け、幼少期の食事習慣はこの時期の感情制御の発達に大きな影響を与えると考えられているためです。

そこで、京都大学大学院教育学研究科の明和政子教授、藤原秀朗博士後期課程、および大阪大学の萩原圭祐特任教授らの研究グループは、3~4歳の日本人幼児257人を対象に、感情制御を含む認知機能と腸内細菌叢、食習慣の関連性を詳細に調査しました。

研究手法と成果

この研究では、以下の3つの主要な手法が使用されました。

  1. 感情制御と認知制御の評価: 幼児の感情制御および認知制御の発達度合いを評価するために、行動評価尺度「Behavior Rating Inventory of Executive Function Preschool (BRIEF-P)」を使用しました。この尺度には、日常の問題行動に関する63の質問が含まれており、これを用いて感情制御と認知制御の評価を行いました。特に、感情制御の発達にリスクを抱える幼児群(困難群)と、リスクを抱えていない幼児群(対象群)の比較を行いました。

  2. 腸内細菌叢の評価: 幼児の腸内細菌叢の評価には、糞便サンプルの採取と16S rRNA解析が使用されました。専用のキットを使用して、各家庭で子どもの糞便の採取が行われ、次世代シーケンサーを使用して16S rRNA解析が実施されました。この解析により、腸内細菌叢の多様性(異なる種の豊富さや均等度)と、各菌が全体の菌叢内で占める割合(占有率)が算出されました。

  3. 食習慣の調査: 幼児の食習慣に関する情報は、アンケート調査を通じて収集されました。具体的には、子どもが過去1週間に摂取した食品の種類(24項目)と、偏食の有無(食事の好みの偏り)が評価されました。

研究成果の詳細

この研究により、感情制御と腸内細菌叢、および食習慣の関連性について以下の3つの重要な結果が明らかにされました。

  1. 感情制御と腸内細菌叢の関連性: 幼児期に感情制御に困難を抱える幼児群では、特定の菌属である「Actinomyces属」と「Sutterella属」が、感情制御に困難を抱えない対象群よりも多く見られました。これらの菌は、身体の炎症性疾患や血中の炎症指標との関連が指摘されており、成人を対象とした研究では、腸内の炎症が脳の炎症と関連し、炎症に関連する菌の存在が精神疾患と関連することが示唆されています。この研究結果から、幼児期の感情制御の困難さには、腸内細菌叢、特に炎症と関連する菌が関与している可能性が浮かび上がりました。

  2. 食事と感情制御: 感情制御に困難を抱える幼児群では、緑黄色野菜の摂取頻度が低く、偏食傾向が強かったことがわかりました。食事習慣は腸内細菌叢に影響を与えることが知られており、幼児期の食事が感情制御の発達にも関連していることが示唆されました。

  3. 認知制御との関連: 一方で、認知制御の発達については、感情制御とは異なり、腸内細菌叢や食事との関連は見られませんでした。感情制御と認知制御は異なるプロセスであるため、腸内細菌叢との関連性に差異が見られたと考えられます。

波及効果と今後の展望

この研究結果は、腸内細菌叢が感情制御の発達に影響を与える可能性を初めて示したものであり、今後の研究によってその詳細なメカニズムが明らかにされるでしょう。感情制御の発達に関する新たな知識は、子育てや教育の分野において革新的な支援方法を生み出す可能性を秘めています。

ChatGPTより作成


偏食の傾向がある幼児は腸内環境もよろしくなく、腸内の炎症が脳の炎症と関連しており、感情の制御との関連も見られた様子。偏食を治すのは大変だし、いずれはどうにかなることもあるけれども、将来を考えるとなるべく偏食は矯正したいというところ。

腸は脳と関連しているという研究がすでに存在していて、生命も腸が先にできてその余力で脳ができたという説もある。

食育というのはとても大事だなとつくづく思うけれども、ちゃんと食べない人は本当に偏った食事をしているようで、自分はちゃんと食べれているので、偏った食事をみていると大丈夫かなこの人と思ったりする。

むかし、テレビで見てたのがかなり若い子だったけれど、食事はご飯にケチャップだけかけて済ませている。ケチャップライスとはいえないもので、ケチャップかけご飯のほうがちかい。そのものなんだけれど。

最近はいろいろとプレバイオティクスなども試してたりするけれども、これが一番というものを探している。ただし、それは遠い目標のようなものであって、腸内細菌に多様性をも足らせたいので、なるべくならいろんなものを試していきたい。

いろいろあるけれども、やっぱり味噌汁がとりあえず定番ですかね。

#日本の研究

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