【上下運動が高血圧に効く】脚から届く衝撃で高血圧を改善するメカニズムを解明したぞ

国立障害者リハビリテーションセンター、関西学院大学、国立循環器病研究センター、東京大学、東京農工大学、九州大学、国際医療福祉大学、群馬大学、東北大学、大阪大学大学院医学系研究科、岩井医療財団、新潟医療福祉大学、所沢ハートセンターの共同研究グループは、ラットを用いた実験とヒト成人を対象とした臨床試験にて、適度な運動が高血圧改善をもたらすメカニズムを発見しました。

軽いジョギング程度の運動中、足の着地時に頭部(脳)に伝わる適度な物理的衝撃により、脳内の組織液(間質液)が動きます。これにより脳内の血圧調節中枢の細胞に力学的な刺激が加わり、血圧を上げるタンパク質(アンジオテンシン受容体)の発現量が低下し、血圧低下が生じることが、高血圧ラットを用いた実験で分かりました。

さらに、この頭部への物理的衝撃を高血圧者(ヒト)に適用すると、高血圧が改善することを世界で初めて明らかにしました。

この結果は、適度な運動による健康維持・増進効果において、運動時に頭部に加わる適度な衝撃が重要である可能性を示すものであり、本成果は、英科学誌『Nature Biomedical Engineering』に掲載されました。

ラットで高血圧改善効果が示されている中速度(分速 20 メートル)走行では、前肢の着地時に頭部に約 1 G の衝撃(加速度)が生じる。この頭部への衝撃を再現するラットの受動的頭部上下動は、脳内の間質液を流動させ、血圧調節中枢が存在する脳領域のアストロサイトにおけるアンジオテンシン受容体の発現を抑制し、高血圧を改善した。ヒトにおける適度な運動である軽いジョギングでも、足が着地する際に頭部に約 1 G の衝撃が生じるが、頭部への 1 G の衝撃をヒトで再現する座面上下動椅子は高血圧を改善した。


高血圧を自然発症するラット(高血圧ラット)において、ヒトの軽いジョギング程度に相当する運動(分速 20 メートルの走行)を続けると、高血圧改善効果、交感神経※1活性抑制効果があることが報告されていた。また、その分速 20 メートルで走行中のラットでは、前足が着地する毎に頭部に約 1 G の衝撃が加わることを本研究グループは明らかにしていた。今回、麻酔した高血圧ラットの頭部に 1 G の衝撃がリズミカルに加わるように、毎秒 2 回頭部を上下動させると(これを受動的頭部上下動と名付けた)、脳内の組織液(間質液)が流れ、細胞に力学的刺激(流体せん断力)が加わり、これを 1 日 30 分間・2~3 週間以上続けると、高血圧改善(血圧低下)効果があることが分かった。

高血圧ラットにおける高血圧の病態に関与することが知られている延髄の一部(吻側延髄腹外側野)のアストロサイト におけるアンジオテンシン受容体 の発現が、1 日 30 分間・4 週間の運動でも、1 日 30 分間・4 週間の受動的頭部上下動でも、低下することが分かった。
延髄における間質液の動きを阻害すると、運動や受動的頭部上下動による高血圧改善効果も、アストロサイトにおけるアンジオテンシン受容体発現低下も、交感神経活性抑制効果も認められなくなった。


ヒトにおける適度な運動の典型である、軽いジョギングあるいは速歩きでも、足の着地時に頭部に 1 G の衝撃が上下方向に加わることが分かった(図  左)。
座面が上下動することで、1 G の上下方向の衝撃がヒトの頭部に加わるように設計された椅子(図 3 右)に 1 日 30 分間・1 週間に 3 日・1 ヶ月間(4.5 週間)搭乗すると、高血圧改善効果、交感神経活性抑制効果が認められた。
1 週間に 3 日・1 ヶ月間の上下動椅子搭乗期間の終了後も、約 1 ヶ月間は高血圧改善効果が持続した。

高血圧は World’s biggest killer とも言われ、世界における最大の死亡危険因子となっています。適度な運動が高血圧の予防・治療に有効であることは分かっていましたが、運動が高血圧を改善する仕組みはよく分かっていませんでした。

本研究の意義は、運動の高血圧改善効果の背景となるメカニズムの発見です。これまでに、「適度な運動」の効果は、高血圧改善に限らず、認知症、うつ病をはじめ多くの脳機能関連疾患の症状・障害の軽減・改善にて、統計的には証明されています。そこで、運動時に生じる脳内組織液流動の重要性は、それらの疾患にも当てはまることが考えられます。さらには、どんな運動を、1 日どのくらい、1 週間に何日行えば、健康維持になるのかといった健康寿命延伸へ向けた重要な問題の解決にもつながるものです。今回の研究の成果からは、運動により頭部に適度な物理的刺激を与えることが、脳、さらには身体の健康維持に役にたつ可能性が考えられます。

本研究では、適度な運動が身体に及ぼす様々な効果のメカニズムを明らかにしました。運動は脳だけでなく、骨や筋肉、内臓や内分泌系にも良い影響を与えます。私たちは、運動時に身体に加わる力が間質液の流動を促進し、それが運動の効果の一因であるという仮説を検証しました。マウスやラットの実験だけでなく、ヒトの高血圧症に対する運動の効果も調べました。その結果、間質液流動の促進が高血圧症の改善に寄与することが示されました。この研究は、「運動とはなにか?」という基本的な問いに答えるだけでなく、運動困難者に対する新しい治療法の開発にも貢献する可能性があります。

BingAIで作成


誰しもが運動すると健康にいいとはわかっているけれども、運動はつらいし、習慣にする前に投げ出してしまうこともあるあるな訳で、また年を取っていけば、運動をする気力を無くしてしまうから、身体が動けるうちに動いてしまえと言うようにしている。

今回の研究は座面が上下する椅子さえあれば、高血圧に効くというデータが得られたけれど、じゃあ、そういう椅子を用意すればいいのかというと、あくまで高血圧に効果があっただけで、高脂血症や血糖値が下がったというわけじゃないから、健康になれるのかというとそれは違うだろう。

でも、高血圧はそれにともなう疾病がついて回るので、高血圧の解消をすることは大事なこと。たまに電気屋さん行くと振動するフットボードがあるけれど、あれは高血圧に効くのかも。

とはいえ、座面上下動椅子を乗っていて、気持ち悪くなったりしなかったのかな。乗り物酔いする人はこれ乗ったらまずいんじゃないかな。


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