【蝗害を減らせ】共食いを防ぐイナゴのフェロモンを見つけたぞ

アジア系のストラテジーゲームなんかには蝗害こうがいというイベントがあって、秋の収穫に被害が及ぶことがある。イナゴの大群が作物を食べてしまうので、飢饉になってしまったりで、年貢が少なくなってしまう。

わが日本の食文化にはイナゴの佃煮があるけれども、実際に見たのは片手に数えるほどで、自分はちょっと食べられる気がしない。

イナゴの大群の映像を見たことがあるけれど、さすがにホラー映像に見えてしまって、かつてはこんな災害に見舞われていたであろう百姓、農家のひとたちは今までの苦労を奪われる気持ちだったんだろう。

近年ではアフリカで蝗害の話をよく聞く。サバクトビバッタの大群発生は2020年初頭から二年ほど続いていたが、収束に向かっていたようだ。このような自然の災害は未だに無力なのか。


科学誌「Science」に掲載された研究で、マックス・プランク研究所進化神経論理学部はイナゴが群れをなしているときに共食いしないように発するフェロモンを発見した。

自然界では自分の子ではない子を殺して食べるライオンもいるし、死んだ仲間を食べるキツネもいる。

イナゴの場合は、共食いが生態学的に重要な役割を果たすと考えられている。イナゴの移動は、その形態も行動も異なるため、最近まで別の種と考えられており、本来は臆病なバッタと同じく、比較的小食な「孤高の存在」であることが多いという。

しかし、降雨や一時的な繁殖条件がよくなることで個体数が増え、食糧が不足する事態になるとホルモンの分泌が盛んになり、群れをなして攻撃になるなど、行動が大きく変化する。

これは「群生期」とよばれ、共食いを恐れることで餌が少ない地域から多い地域へと、群れを同じ方向に移動させるのに役立つと考えられている。

イナゴは後ろから食べ合うそうで、動きを止めているともう一方に食べられてしまう。研究チームは4年がかりの実験で檻の中に飼われている「群生」イナゴの数が増えると共食い率が実際に上がることを立証し、アフリカの現場で観察したことを実験室でも証明した。

そして、孤独なイナゴと群れをなすイナゴとの発する匂いを比較したところ、群れをなす時期にのみ発する匂いが17種類あることを突き止めた。

さらに、イナゴの感覚受容体を何十種類もテストした結果、フェニルアセトニトリルという化学物質が他のイナゴを忌避することが判明し、非常に敏感な受容体にたどり着いた。

この受容体を賛成しないようにイナゴの遺伝編集をしたところ、このイナゴはより共食いをするようになった。

うまくいけば、共食いの数を増やして、蝗害をなくすことも可能になるだろう。しかし、イナゴの絶滅だけはしてはいけない。

イナゴの群れを小さくすることで、作物の被害を増やさないことができればいいけれど、そのバランスがとても難しそうだ。人類は何遍も過ちを犯しているし。


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