【脊髄損傷をバイパス】コンピュータによるインターフェイスで力加減のできる回復が実現できたぞ

四肢麻痺という病状を初めて知ったのは学生の時で、そのことを聞いたときから、怖い事故があると腹がうずく思いがした。

星野富弘さんという画家がいて、この方はクラブの指導中に墜落事故で頸髄を損傷して、手足が動かなくなってしまった。しかし、入院中に口に筆をくわえて、絵を描き始めるようになる。その7年後には前橋で作品展を開いた。

現在76歳で未だに麻痺を残したまま、絵を描き、詩を書いている。この方は作家になることで、人生を懸命に生きているけれど、自分だったら泣く泣く受け入れるまでは悶々とした一日を送り続けるだろう。

もしも、こうなってしまったらと思うととても想像しきれないけれど、毎日の生き方を考えるために本を読みまくっているかもしれない。


公益財団法人東京都医学総合研究所・脳機能再建プロジェクトの研究グループは、大脳皮質、脊髄間をつなぐ神経経路である皮質脊髄路の役割を持つ皮質脊髄路インターフェイスを開発し、それを用いることで脊髄損傷モデルサルの麻痺した手の力の調整能力を再獲得させることに成功した。

この研究結果は脊髄損傷で脳と脊髄との間に神経経路が無くなったことで、四肢が麻痺してしまった患者が、皮質脊髄路インターフェイスを用いることで、自分の意思で麻痺した身体を動かし、調整が必要な作業を取り戻す可能性を示した。

今までの研究では、あらかじめ決められた刺激の強度と周波数で脊髄を電気刺激することで、筋肉を支配している脊髄内の神経細胞を活性化させ、筋活動を誘発することができた。しかし、このようなあらかじめ決められた刺激の強度周波数での電気刺激法では自分の任意のタイミングと強度の調節をすることができなかった。

今回の研究は皮質脊髄路の機能を持ったコンピュータによる皮質脊髄路インターフェイスにより、力の調節能力を担っている皮質脊髄路の機能を持ったコンピュータによる皮質脊髄路インターフェイスを開発した。このインターフェイスは、大脳皮質の神経細胞の活動の発火を脊髄への電気刺激の刺激強度と刺激周波数にリアルタイムで変換する。このインターフェイスを脊髄損傷モデルのサルで検証した。

2頭のモデルサルに適用したところ、要求される力の大きさによって、皮質脊髄路インターフェイスの入力信号として使われている運動野の神経細胞に、その活動の変調が見られた。

この皮質脊髄路インターフェイスによって、脊髄損傷モデルのサルは自分の意思で麻痺した手の力を調節することができるようになった。

損傷した脊髄の代わりに、別の経路を制作したということか。まだまだ研究段階であるが、脊髄損傷で寝たきりになっている人が再び動けるようになる未来がおぼろげに見えてきた。脊髄損傷はほぼ復帰ができなかっただけに、この研究は奇跡の御業にも見えてくる。

たぶん、インターフェイスはまだまだ大きいものだろうし、非侵襲性のデバイスではないだろうから、実用性の有無はもう少し先になりそうだけれど。




#日本の研究

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