見出し画像

オープンマインド・ヒューマンネットワーク論 その5

執筆:ラボラトリオ研究員 杉山 彰

2.知識と知識のコミュニケーション

 1.知識とは、経験知(事実)の集合体である。
 私たち人間の知識は、DNAが蓄積してきた知識である。


知識とは紙の上に印刷された文字でも、目をつぶり脂汗を流し、じっと考え抜いて閃いたものでもない。ましてやきれいなパッケージに包まれて目の前に置かれているものでもない。知識とは人間がヒトとしてこの地球に誕生してから今日までの約1万年間に、地球上に生まれたすべてのヒトたちのコミュニケーションの繰り返しによって培われ、蓄積されたすべての経験知である。その経験知の多くは、私たち人間は書物という文字で記述されたものと、口伝という言葉で記憶されてきたもので確認できる。そして、その経験知のすべてはDNAの遺伝情報に、あらかじめプログラミングされていたのではないかというフシがあるのです。

ヒトのコミュニケーションとは、もちろん、人間と人間のコミュニケーションである。先に述べたように、自然界や人間社会のさまざまな現象、つまり、さまざまな事実を<ことば>という記号に置き換えてコミュニケーションが行われた。これが、約1万年以上前に始まったヒトのコミュニケーションの第一歩であった。そして次の段階は言うまでもなく、文字という記号に置き換えてのコミュニケーションであった。そして今、1万年以上の年月を経て、私たち人間は、電子という記号に置き換えてのコミュニケーションを進化させようとしているのである。

しかしここで、この知識という定義を、さらに広義なものとして解釈する。DNAの中に培われ、蓄積されてきた経験知に第一歩の足跡を残した経験知は、約47億年前の原始のスープの海で無機質からタンパク質を作りだした経験知ともいえる。私たち人間の<いのち>の創造主ともいえるDNAは、この時代(化学進化の時代)にすでに、わずか20種類のアミノ酸から大量のタンパク質を作っていたのである。もちろん、化学進化の時代においては、明確な意味でのDNAの存在は確定してはいないが、細胞のタンパク質の複製は、細胞核の中の二重ら線構造の遺伝情報にあることは、分子生物学において解明されている。したがって約47億年前の化学進化の時代にDNAは存在していた。経験知を蓄積したといえる。

さらに、約10億年が過ぎ、今から、約33億5千万年前に原核細胞という生命体が誕生した。この時代(雌雄性進化の時代)においては、原核細胞の中のDNAは単一の染色体による遺伝情報を持ち、単独で存在していた。しかし、この時代では正確な意味でのコミュニケーションは行われていなかったかもしれない。なぜなら、原核細胞は有性生殖を行うことができなかったために、自分と同じ物をつくるという自己複製による生命の存続であったからである。いわば自問自答のコミュニケーションであり、クローン同士のコミュニケーションであったといえるかもしれない。

モノの道理として、自分と全く同じ人間が回りじゅうにいるという状況は、初めの頃は快適そのものであったに違いない。私が思っていることは私以外のすべての私が考えていることと同じなのだから。コミュニケーションの速度は、圧倒的であったに違いない。コミュニケーションの間違いも皆無であったに違いない。しかし、やがてしかし、そのコミュニケーションを誰も行わなくなってしまったに違いない。理由は、簡単である。コミュニケーションの原則は相手の現実を受け入れることである。相手の現実と、私の現実が同じであるなら、コミュニケーションそのものがやがて不要になり、誰も喋らなくなる。伝えることが無くなる。その瞬間、相互の存在さえ確認しなくなる。存在そのものが消えてしまう運命に至るのである。

事実、原核細胞は消えてしまった。そして20数億年が過ぎ、今から、約9億年前に真核細胞が誕生した。この時代(生物進化の時代)になってはじめて有性生殖が行われ、夫婦で子供を生むという歴史が始まったのである。1+1は1であるという減数分裂の歴史でもある。減数分裂の常は多様性である。有性生殖が行われ夫婦で子供を産むという歴史は、いろいろなタイプの子供が産まれ、その子供たちが大人になり、また、いろいろなタイプの子供を産み続けるという歴史でもある。当然、この時代のDNAは、23組46本の染色体による遺伝情報を持つDNAであった。つまり、私たち人間の<いのち>の創造主であるDNAには、化学進化の時代の経験知、雌雄性進化の時代の経験知、生物進化の時代の経験知と、実に約47億年かけて蓄積した経験知の集合体である知識が、遺伝情報としてプログラミングされているのである。

佐藤利雄氏が、その著『いのち<今、を活きる>』の中で“地球上のありとあらゆる生物は、同一起源を有する。すなわち、起源的には、元一種類の細胞に由来した同一家族に属している ”と述べている。言うまでもなく、人間は、そのDNAの遺伝情報によって造られている生物であり、私たちの体の細胞の中にDNAは存在しているのである。私たち人間が、47億年かけて培ったDNAの知識のすべてを、生まれたときから授かっていないはずはない。そしてさらに同一起源を有しているのだから、ヒューマンネットワークの機能そのものも、生まれたときから授かっていないはずはない。ただ、その事実に気づいていないだけである。(つづく)

←その4に戻る

・・・・・・・・・・

【杉山 彰(すぎやま あきら)プロフィール】

◎立命館大学 産業社会学部卒
 1974年、(株)タイムにコピーライターとして入社。
 以後(株)タイムに10年間勤務した後、杉山彰事務所を主宰。
 1990年、株式会社 JCN研究所を設立
 1993年、株式会社CSK関連会社 
 日本レジホンシステムズ(ナレッジモデリング株式会社の前身)と
 マーケティング顧問契約を締結
 ※この時期に、七沢先生との知遇を得て、現在に至る。
 1995年、松下電器産業(株)開発本部・映像音響情報研究所の
 コンセプトメーカーとして顧問契約(技術支援業務契約)を締結。
 2010年、株式会社 JCN研究所を休眠、現在に至る。

◎〈作成論文&レポート〉
 ・「マトリックス・マネージメント」
 ・「オープンマインド・ヒューマン・ネットワーキング」
 ・「コンピュータの中の日本語」
 ・「新・遺伝的アルゴリズム論」
 ・「知識社会におけるヒューマンネットワーキング経営の在り方」
 ・「人間と夢」 等

◎〈開発システム〉
 ・コンピュータにおける日本語処理機能としての
  カナ漢字置換装置・JCN〈愛(ai)〉
 ・置換アルゴリズムの応用システム「TAO/TIME認証システム」
 ・TAO時計装置

◎〈出願特許〉
 ・「カナ漢字自動置換システム」
 ・「新・遺伝的アルゴリズムによる、漢字混じり文章生成装置」
 ・「アナログ計時とディジタル計時と絶対時間を同時共時に
   計測表示できるTAO時計装置」
 ・「音符システムを活用した、新・中間言語アルゴリズム」
 ・「時間軸をキーデータとする、システム辞書の生成方法」
 ・「利用履歴データをID化した、新・ファイル管理システム」等

◎〈取得特許〉
 「TAO時計装置」(米国特許)、
 「TAO・TIME認証システム」(国際特許) 等

この記事は素晴らしい!面白い!と感じましたら、サポートをいただけますと幸いです。いただいたサポートはParoleの活動費に充てさせていただきます。