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この宇宙はプラズマでできている vol.010

執筆:ラボラトリオ研究員  杉山 彰

2.2.「言霊精義」に記述されている〈宇宙剖判〉

〈宇宙剖判〉の原理は、アレキサンダー・ビレンケン教授の「無からの宇宙創生論」仮説と、この仮説をさらに発展させたスティーブン・ホーキング博士の「無境界仮説による創生論」を紹介してきました。

つまり科学の側からは、〈宇宙剖判〉は、「時間も空間も物質も何もない〈無(※1)〉から、“ゆらぎ”(※2)がポッと起こり、〈無〉の時空の壁をすり抜けるようにして「宇宙の種(※3)」が生まれたという仮説です。

この“ゆらぎ”から生まれた「宇宙の種」が、10の-44乗秒後に、リンゴ大のインフレーション宇宙に相転移していくというように科学では展開します。

「言霊精義」では、この“ゆらぎ”から生まれた「宇宙の種」が相転移してインフレーション宇宙を創生するという下りをどのように記述しているのでしょうか。

※1.〈無〉:〈無〉の定義としては、「ゆらぎの不思議」(宇宙創造の物語)著された佐治晴夫氏が、次のように定義しています。「無」とは、この世を創る一切のものがないということになります。さらに、ほんとうの「はじまり」には、「はじまり」の原因となるものがあっては困るのです。もしそうだとしたら、それはほんとうの「はじまり」ではなくなり、ある原因からはじまったものだということになってしまいます。したがって、ほんとうの「はじまり」とは、「無」であらねばならないのです。また、「無」という状況は、何かがあるのだけれど、私たちには見えないのだ、ということでもないのです。たとえば、何か空っぽの入れ物だけがあって、その中には何もないということでもないのです。入れ物になる空間さえもないのです。そして時間もないのです。「無」の前にはどうなっていたか、などという話も意味を失ってしまうのです。

※2.〈ゆらぎ〉:ゆらぎについて、改めて再定義します。ゆらぎの英訳は〈fluctuation〉 :動揺、周期的変動、波動、彷徨変異などがあります。ゆらぎ自体をハッキリ定義するのは難しいのですが、本レポートでは、武者利光氏の「ゆらぎは、ものの予測のできない空間的、時間的変化や動き、といったら良いと思います。予測は、規則性があるからできるので、言い換えるとゆらぎとは、ものの空間的、時間的変化や動きが、部分的に不規則な様子ともいえます」と述べられている表現を引用します。

※3.〈宇宙の種〉
:ビレンケンの論文に記されていた文章の和訳のようです。訳者は明確ではありません。無の状態から、量子論的効果(ゆらぎ)で生まれた。「宇宙の種」の大きさは10の-33乗cm程度。

図1

図2

図3

「言霊精義」では、この“ゆらぎ”から「宇宙の種」が生まれたという直接的な記述はなされていないのですが、「宇宙の種」が相転移してインフレーション宇宙を創生するという下り部分に非常に類比した記述があるのです。「ス」から「ウ」への展開です。図3で、確認ください。

「言霊精義16頁〈宇宙剖判〉」において、

“有限の極限、その有限と無限(不可知界)との頂点を天文学的に云えば天頂、北極星座、宗教的に云えば紫徴天宮(しびてんきゅう)と云う。この天頂に居て有限界全体の内容を下瞰(みおろ)して居る者がある。その名を大自在天と云う。その無碍(むげ)の自在者が発揮する神性(しんせい)を大我(たいが)と言い真我(しんが)と云う。無限即有限の大我が認識の始原であり、その出発点であり、全局である。この状態を言霊はス(静・巣・皇・総)と呼ぶ。中国の哲学では「陰陽測(はか)られざるこれを神(しん)と謂(い)ふ」(易経)とある”

と書かれています。

このままでは、いったい何が書いてあるのか理解しにくいのですが、『“言霊はス(静・巣・皇・総)と呼ぶ”』の箇所を『“ゆらぎ→宇宙の種”と呼ぶ”』、と同定すると次の展開が見えてくるのです。

じつは「宇宙の種」には、宇宙創生・森羅万象に必要な総てが、あたかも「ス(静・巣・皇・総)」のように包摂されているのです。

〈図1〉から〈図3〉までの一連をご覧ください。“ゆらぎ→宇宙の種”が相転移して、インフレーション宇宙が生まれてくるのですが、このインフレーション宇宙に畳み込まれている宇宙創生・森羅万象を形作るために必要な要素(17種類の素粒子、宇宙に働く4つの力)は、すべて「宇宙の種」から継承されているのです。

「言霊精義」では、“宇宙の初めスからウがうまれる”、つまり「ス(宇宙の種)」から「ウ」が生まれると記述されているのです。「ウ」といえば、いうまでもなく天之御中主神のことですが、ここでは、まず「ス」について、「言霊精義」から引用してみます。ちょっと長くなりますが簡単な注釈*を付けてみます。何ごとによらず、始まりの始まりは、とても大切なことです。もう少しおつきあいください。

“その有限の中味に何かが充満し活動しているわけだが、初めは渾沌として居て秩序がない。陰陽もない、主体客体も剖(わか)れない揮然たる一者であって、総べてであり、静寂である。それはその儘(まま)では永遠の静寂『*まさに「ゆらぎ=種」の状態を表しているといえる』であるが、そのスには内容『*「種」として、宇宙創生・森羅万象に必要な総てが包摂されている』があり、その内容は常に活動し止まらない『(*ゆらぎ状態)』。その内容の活動が最初に認識され感知されるのは人間の色声香味触(眼耳鼻舌身)が眼覚めるからであって、此の五官感覚が認識活動、精神活動の出発である『*ゆらぎを止めるとか、「種」を芽吹かせようとする感覚といえる』。感覚は最も始原単純な知性認識の出発であろう。感覚によって意識に現われた宇宙の状態を言霊でウと云う。
森羅万象が有(ウ)り動(ウ)いている状態『*10の-33乗cm大の大きさの「ス」が、リンゴ大の大きさの「ウ」まで、一瞬で膨張(インフレーション)する、有(ウ)り動(ウ)く』である。宇宙の初めスからウが生まれる”

「言霊百神」では、この「ス」に関連する記述は、「日の少宮(ひのわくみや):永遠の創造」の項の270頁で触れられています。引用します。

“・・・この(静・ス)洲(ス)の心が布斗麻邇(ふとまに)の出発の心であり、そして終局の完成の心である。出発のスは天地の初めの無名である『*スは「ゆらぎ=種」状態だから名前が無い。今後、この“出発のスは天地の始めの無名である”、という“無名”という言葉がとても重要なキーワードになってきます』。終局のスはすべての言葉を綜合統一(そうごうとういつ)したスメラギ(皇)のスである・・・。”

では、ここから、いよいよ天之御中主神・言霊「ウ」の説明に入ります。「言霊百神:19頁」から引用します。

“天地のはじめの宇宙の時間空間及び次元の中心、すなわち「中今」の直接的な知覚体を云う。易で云う「太極」のことであり、宇宙がその姿を現わす最初の様相であり、我なるものの自覚の出発であって、この我は自覚と同時不可分に存在する。すなわち我と云うものの最も原始的な端的な存在状態を云う。換言すれば宇宙生命の活動である人間の知性霊性が現われる始原であり出発であって、人間はこの根拠淵源を是れ以上更に遡ることは出来ない。


“宇宙の初めスからウが生まれる”

“スからウが生まれるに至って、はじめてウが、宇宙がその姿を現わす最初の様相であり、我なるものの自覚の出発”と記述されています。ウより以前のスは“人間はこの根拠淵源を是れ以上更に遡ることは出来ない” 領域であると記述されています。ここの下りは、科学の記述ときわめて類比的なのです。

スはプランク長の10の-33乗cmと同定します。プランク長はプランク定数の「大きさの最小単位」です。この世の中では、これ以上の小さな長さは無いというのです。ですから、“人間はこの根拠淵源を是れ以上更に遡ることは出来ない”のです。さらに続きます。

“時間空間は無限であって、然もその無限の奥を伺い知ろうとすることは不可能である。すなわち人間には無限と云う限界があり、無限と云う壁がある事であると云うことが出来る。そこでも早やこれ以上先には行けないのであるから引き返すより他はない。この引き返すことを自己返照と云う。この時何処へ引き返すかと云うと、その究極の無限から出て来る究極の有限へであって、それは今の瞬間と此の場所である。このようにして宇宙の無限と有限の関係の確立が体認される。その無限を天と云う。宇宙と云うことである。その有限を中主と云う、「中今」の自覚者(主)と云うことである。御中主のみは形容詞と取っても、霊の義と取ってもよい”

 「中今」については後述しますので、ここではいったん棚上げしておきます。「無限」について±有限=無限」となって、0値が生まれ、計算式が発散してしまうのです。無限値、つまり0値が生まれるとどんな数式も成立しなくなるのです。 

そこで科学の世界では、大きさの最小単位と時間の最小単位をプランク定数に基づいて定義したのです。大きさの最小単位は10の-33乗cm、時間の最小単位は10の-44乗秒、と。科学の世界においても「自己返照」の領域、引き返すべき場所が定義されているのです。

ちなみに、この「自己返照」の領域を、スティーブン・ホーキング博士は無境界と定義して「無境界仮説・宇宙創生論」を打ち立てたのでした。


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【杉山 彰(すぎやま・あきら)プロフィール】
◎立命館大学 産業社会学部卒
 1974年、(株)タイムにコピーライターとして入社。
 以後(株)タイムに10年間勤務した後、杉山彰事務所を主宰。
 1990年、株式会社 JCN研究所を設立
 1993年、株式会社CSK関連会社 
 日本レジホンシステムズ(ナレッジモデリング株式会社の前身)と
 マーケティング顧問契約を締結
 ※この時期に、七沢先生との知遇を得て、現在に至る。
 1995年、松下電器産業(株)開発本部・映像音響情報研究所の
 コンセプトメーカーとして顧問契約(技術支援業務契約)を締結。
 2010年、株式会社 JCN研究所を休眠、現在に至る。

◎<作成論文&レポート>:
 ・「マトリックス・マネージメント」
 ・「オープンマインド・ヒューマン・ネットワーキング」
 ・「コンピュータの中の日本語」
 ・「新・遺伝的アルゴリズム論」
 ・「知識社会におけるヒューマンネットワーキング経営の在り方」
 ・「人間と夢」 等

◎<開発システム>
 ・コンピュータにおける日本語処理機能としてのカナ漢字置換装置・
  JCN<愛(ai)>
 ・置換アルゴリズムの応用システム「TAO/TIME認証システム」
 ・TAO時計装置

◎<出願特許>
 ・「カナ漢字自動置換システム」
 ・「新・遺伝的アルゴリズムによる、漢字混じり文章生成装置」
 ・「アナログ計時とディジタル計時と絶対時間を同時共時に
   計測表示できるTAO時計装置」
 ・「音符システムを活用した、新・中間言語アルゴリズム」
 ・「時間軸をキーデータとする、システム辞書の生成方法」
 ・「利用履歴データをID化した、新・ファイル管理システム」等

◎<取得特許>:「TAO時計装置」(米国特許)、
 「TAO・TIME認証システム」(国際特許) 等

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