COLLECTIVE レビュー #19 ぽつねんとして、『ともこ』(愛知県)
ZINE を作るプロフェッショナルといってもいいと思う。
2020年から3年連続で参加してくれている鈴木恵里(イラスト)と松山由佳(テキスト)による ZINE ユニット「ぽつねんとして、」。 それぞれが美術家としても活動する2人。毎回、工夫に工夫を重ね製本された ZINE は、見る人たちを楽しませてくれる。去年、一昨年は、noteで連載している《ふたりごと》の2019年分と2020年分を掲載した ZINE でのエントリーだったが、今回は「ともこ」というなんとも不思議なタイトルの ZINE でのエントリー。聞けば初期の2019年頃に手がけた ZINE だという。これもまた、すごい。
COLLECTIVE 2022 ZINE レビュー #19
ぽつねんとして、「ともこ」
この ZINE を端的に説明すると、20代後半の架空の OL 「ともこ」 の日常とモノローグを、1年にわたる彼女の予定表や日記の一部、漫画やイラストで再現したZINE。リアルさを追求したカレンダーの書き込みや、たどたどしく綴られた日記、時々、頭の中で「ともこ」の存在が色づいていくような漫画、その全てのディテールに脱帽。思わず息を飲みこんだ。
まさに。誰かが落とした手帳を盗み見ているような生々しい感覚が手に残る。実在している?と錯覚するほどのリアリティで、心も暮らしも不安定な「ともこ」のアイデンティティに迫っていく。香水や化粧品の香りまでもが紙に移っていそうでもある。もはやここまで再現されると「これほどまでしてなぜ」と言いたくなる。ともこに恨みでもあるのか(笑) 前回、前々回に引き続き、手書きを駆使し、さまざまな種類の紙をしかるべき形で印刷し、手作りで1冊1冊を製本していく。しかも16ページや24ページという生ぬるい数字ではなく、78ページ。そして1000円という値段設定。 ZINE を超えた1つのアートピースのようにも思えるし、そもそも ZINE とはこうあるべきだ、と改めて思わされる、まさに源流の姿のようにも思う。ぼくなんかは真似したくてもできない。「根気」という次元で諦めてしまうと思う。ここ5年の COLLECTIVE の MVP を決めるのであれば、製本部門は間違いなくこの2人だ。 もっとみんなが、ぽつねんとして、の作る ZINE を通じて、クリエイティブな ZINE を作るようになってくれたらいいなと毎年思う。その度に、もっと自由であれ!と叫びたくなる。もっともっと手作りの ZINE が増えたらいいのに、と思う。 いい ZINE とは、読むものではなくて「体験」するもの。そんなことを二人から教えてもらいました。 これを手に取らないなんてもったいない。
レビュー by 加藤 淳也
---- 以下 ZINE の詳細とそれぞれの街のこと ----
【 ZINE について 】
ともこは架空の女性です。彼女の日常とモノローグを、1年にわたる予定表や日記の一部、漫画やイラストで表現し綴じこんでいます。何が起こる訳でもない、一人の女性の生活の断片を傍観してみてください。
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