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【感想】葉桜の咲く季節に君を想うということ

大好きなこの小説。ネタバレがあるので注意してください。

叙述ミステリーとして有名なこの小説ですが、ミステリーなんかより大きなトリックが隠されているんですよね。改めて読み返すと気分が悪くなりそうな描写も多いですが、それでもたくさんの名言が詰まっていて、「若い時だけがキラキラしている」と言われがちだけど、人生の花盛りは自分で決められる。いつでも決められる、と教えてくれたところがすごく好きです。

私は、どういう振る舞いをするのが大人なのか、どういうことをすれば子供なのか、というところで思い出がある。ある人とお別れをするとき、私はもう会えないわけではないのに、子供のように大号泣した。涙が溢れて止まらなくて、綺麗な去り際を演出しようとしていた私もびっくりした。その時に、そんなに泣くなんて子供みたいじゃん。と言われたのが印象的で、その時に、そうやって自分の感情さえもまっすぐに出せないようじゃ、大人になんかなりたくない。一生子どもみたいだよって言われてもいい、と強く思った。

この作品でも、

「何でもやってやりたくてもやれなくなり、そのうち何をやりたいとも思わなくなった。世間はそれを「大人になる」と称する。」

私の大好きなところです。こうやってもう23だからという風に年齢に負けたり、周りからどう思われるだろうか、というのが怖くて周りに本当の意見を言えなかったり、こう思ってしまうのは仕方ないけれど、それで内に秘めたる野望みたいなのまで消してしまう必要はないだろう。それはすごく悲しいし、自分に負けた気がするようで寂しい。

でも、声に出したり行動にせず実行に至らせる、ということはすごく精神力が必要で。そこを私は鍛えていきたい。内に秘めたる思いの燃焼度を上げるにはどうすればいいんだろう。

本当に、人生の花盛りは自分で決められて、この小説でみんなが騙されたようにアクティブになんでも素早く行動することは若者だけの特権ではない。やろうとするか、どうせ無理だと諦めてしまうかはすべて自分次第で、それは何歳になっても自分で決められる。

桜は、花の咲く季節には多くの人に注目されるけど、葉桜の季節に桜をまじまじと見る人は少ない。でも確かに桜はそこに存在していて、いつ見るかは人次第。注目される時が終わってしまっても、確かにそこに存在している。葉桜の季節に君を想うということというタイトルも耳あたりがよくて、大好きです。

自分が感動した文章や映画、小説をまだ見ていないという人が羨ましい、という感情がとても素敵だと思っていて。今から見る人に対して、その感覚を味わえるなんて素敵な体験!だと思えることがとっても綺麗な感情だと思う。私もこの感覚をもっとたくさん味わって素敵な言葉と映像で埋れていたい。それでたまにノスタルジーを感じるぐらい、それもまたそれで素敵です。

本の内容自体の感想が全然少ないから、また読み直した時に追記していこうかな。賛否両論あるけど、私は大好きな小説です。

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