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惰性の連絡なんていらない。だけど夜は寂しい。

なんとなくよく電話をする関係。喋りたいことなんて特にはないけど、なんとなく話したくて、大好きだから、わたしはよく彼に電話をしていた。何か特に用があるわけでもないけれど。特に彼の声を聞きたい訳でもないけれど、私はよく彼に電話をした。

彼は電話を全然しないタイプだった。だけど私がよく電話をかけるせいで、電話を掛けなかった日は彼からも電話がかかってくるようになった。そんな関係が続いて、大学生の頃は10時間も電話を繋ぎっぱなしなこともあった。

理由がないと電話してはいけない関係は寂しい。

理由がなくても電話できる関係でしょ?

嬉しかった。寝る時には必ず彼が必要。こんな歳になってそんな思いをするなんて私は思わなかった。

でも長くは続かない。あるとき思ってしまうのだ。彼は、私に電話をしなきゃいけないって思わせてるかな?と。そして、私も彼に電話をしなきゃいけないと思ってしまうことを。

彼は優しいから私のことを思って電話をしているのかもしれない。本当は内心面倒臭いと思ってるのかもしれない。でも、やっぱり理性を持って自分の感情をまっすぐに伝えて、無駄な時間を過ごすことが嫌いそうな彼がそんなことをするようには見えないと。私の中で曲解する。

惰性の電話はならいらないから、と私は彼には言えない。電話がなくなってしまったら寂しいから。寂しすぎるから。失ってもいないくせに、失ってしまうかもという現実を見ないフリをして私は生きる。違う意味で、毎日ドキドキする夜になった。

今までの楽しい時間や朝まで語り合った時間、泣いたときや笑ったときも全部全部嘘になるのは嫌だ。例えそれが嘘じゃなくても、一時期はあった気持ちが失われていることには、気付きたくない。

だから何か物事が始まった瞬間終わるのが寂しくて耐えられない。愛しきるなんて私には終わりが見えない。見えなすぎる。純粋贈与なんて私にはまだまだ難しい。愛する人がそうでなくなる瞬間が耐えられない。私自身も気づきたくはない。

とは言え事情というものが人にはあるからね。

私だって激務なときは1週間も人に連絡を返す気力さえ失う。そこが理解できてしまうから難しい。私がわがままなのか、世間の普通なんて私には関係ない。その塩梅がわかるまではまだまだ時間がかかりそうな予感がする。


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