ライブの裏

若手芸人の苦悩の一つに「お手伝い」がある。
いや、”売れない若手芸人の苦悩”か。

お手伝いの種類は色々とある。基本的には事務所からふられて単発で行われ、交通費程度のお金がもらえるものだ。
大きく分けると「シミュレーション」と「ライブスタッフ」の二通りになる。

シミュレーションというのは、テレビなどの収録に先立ち、タレントさんの座る位置やセットの置き場所、それに伴うカメラの位置調整を行うリハーサルのようなもので、クイズ番組であればボタンや問題の難易度を確認したりすることも兼ねる。大体がテレビ局のスタジオで行われ、3-4時間拘束、お弁当は番組によりけりだ。特に芸能人に会えることもなく、スタッフさんに何となく顔が知られるか知られないかくらいなので、メリットの実感はわかない。手伝いらしい手伝いだ。

もう一つが今回お伝えする「ライブスタッフ」である。
主に事務所の運営するライブの会場整理や集計、転換という椅子や机などの小道具を暗い間にセットする役職を行ったりする。特にうちの事務所に関しては転換役はライブ会場の設営、撤去も仕事に含まれるため朝から晩までの駆り出しとなる。大きいライブの手伝いとなるとお弁当や飲み物がでたり、差し入れを分けてもらえたりするし、演者と距離が縮まることも多いが、一方で無賃労働というデメリットもある。人は現金なものでお給料が出ないだけでストレスのたまり方が二倍三倍となる生き物だから、この手の手伝いは顔がうかない。また、もう一つ、大きいライブの場合の難点は事前の稽古から参加する必要があるという点だ。通常のライブであれば当日夕方に集まって、道具の確認をして、リハーサルをして、本番を終えて、片付けて解散だが、大きいライブでは重要度と複雑さが異なるためあらかじめ練習をし、こちらで小道具をそろえることもある。

過去私が手伝いをしたのはハナコさんの単独と四千頭身さんハナコさん合同ライブの二つだ。
お金の面だけ見てしまえば最悪の案件であったが、サークルの先輩でありKOCのチャンピオンで、かつ普通に優しいんだから仕事というよりお願いという気持ちになれるので、そこまで憂鬱にならずに済んだ。ご本人たちの人の好さに乾杯。


で、先日3/5-6で行われたブルゾンちえみさんの単独ライブの手伝いをやってきたので書く。単純にね、単独ライブがすごくよかったって話がしたいの。

手伝いは五日間。稽古、リハ、前日リハ、当日二日間だ。
今や日本中が知ってるブルゾンちえみさんの単独ライブはキャパ500の会場で二回公演、SOLDOUT。始まる前に冗談で「桐谷美玲に会えるかもしれない」とじゃれてたら本当に来てたんだから衝撃だ。注目度がわかる。

初日、言われた部屋へのドアを覗くと、いかついお兄さんが三人ほどいる。
「うわ、ワタナベの俳優コースのちゃらついた子たちが空いてるからって勝手にダンスの練習してるじゃん」
と嫌な気持ちになるがそこで驚く。そのいかついお兄さんの一人は知り合いのダンサーさんではないか。
かつて、これもお手伝いだが、有吉の壁でDAPUMPさんが出るコーナーのシミュレーションに、DAPUMPのUSAを踊る役として呼ばれていたのが芸人ではなくダンサーさんで、それがまさに目の前にいるいかついお兄さんなのであった。その時はたまたま養成所時代にダンスレッスンをしてくれていた先生もDAPUMP役でいたので、いかついお兄さんとも仲良くなれていたのだ。
「あ!」
安堵の気持ちから思わず声を発した私。して、横に目をやるといかついお兄さんよりもいかついガタイをしたコージさんを発見。
胸をなでおろし、お手伝いがはじまる。

え、いやダンサーさんいるんかい。

と思うのもつかの間すぐに練習がはじまる。

いや練習て。
お笑いライブで練習て。
ネタ合わせとか稽古ならまだしも。

音楽がなりフォーメーションをとり、振り付けをいれていく。

この時点でお笑いじゃないことは確定した。
なるほど、今回はかなり異例のライブになるんだな。


そもそもなぜ我々が振り付けをいれているかというと、実は二日目にブリリアンさんが仕事のため、リハーサルを我々コンビが行うことになっており、この日はダンスレッスンを必死に行ったのである。
途中小道具をそろえてブルゾンさんが登場。
「おはようございます。遅くなってごめんなさい。あー、ありがとう!うわー!ありがとうございます!」
くるなり感謝と謝罪をしまくるブルゾンさん。本当にこの人は低姿勢すぎて尊敬する。服装は超派手でかっこいいのに、中身も真面目でかっこいいのかよ。


二日目、朝から集合して振り付けを確認していただき、リハに備える。
すると突然
「つるくん?だっけ。ネタに出てほしいんだけどいい?」
とブルゾンさん。
聞けば特になにをするわけでもない感じなのでありがたく受諾。突然なぜ僕がという話になった時は
「なんか、その彼は、なにやっても許してくれそうなの。」
と大笑いしながら話していた。家とか燃やされたら怒るよさすがに。

そうしてリハを終えたが、実は一つ、ずっと成功していない箇所があった。
それが早着替えのシーンである。
衝立を3つ置き、曲にあわせてその後ろに隠れ、上、下、上を脱いでバスタオルを巻く、を一枚ずつ行って出てをする部分があったのだが、これがどうしても曲に間に合うように服が脱げないのである。練習しようということになって曲を流し始める。
一枚目、上を脱いで曲に合わせて出てくる。「あ、大丈夫だ!いける!いける!」
二枚目、タイトなジャージを脱ぎだすも、足首から先にジャージが進まなくなる。「ここだぁぁぁぁぁぁ!!!」と発狂するもむなしく、曲は進む。慌てて出て来る。
三枚目、もう一度上を脱がないといけないのだが発狂が後を引き、上を脱がずにバスタオルを巻いてしまう。「あぁちがう!間違えたあ!」と混乱。バスタオルをむちゃくちゃにまいて出てくる。
うなだれるブルゾンさん。
これはこれでめちゃくちゃお笑いだなと笑う外野。
かっこいいのは、どうしてもこのネタの雰囲気なら下は今着ているジャージでないとダメだというプロのこだわり。
あー足首がなぁ。
とつぶやき歩き回って、突然ジャージをシャッ!とおろすブルゾンさん。外野大うけ。

そうして前日リハも終えて本番になる。

リハの間もずーっとネタの吟味をしていたのは本当に見上げる姿だった。

閑話休題
ダンサーさんがすごくかっこよかった。
バランスがいいのだ。
背が低めで単発、小回りのききそうな方、
背は中くらいで色の白い、マルチタイプ感のある方、
背が高く細めだがダイナミックな動きで赤髪の方、
背が高くゴツッっとしてていつもマスク、髭の生えてる渋い方。
むちゃくちゃ強い海賊団みたいじゃない。
それかアベンジャーズ。
ここにブリリアンのお二人が入ると尚いいのよ。
背がめちゃ高くて金髪でごりごりの方
背がめちゃ高くて黒髪で大人しそうな方。
いやめっちゃいい。戦ってほしい。みんな普通に中身も優しくてかっこいいし。

いよいよ本番。

長いので分けます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?