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子どもの体力低下問題について再考する

自分が大学院時代に興味を持って研究していたテーマの1つの子どもの体力低下問題があります。きっかけとしては自分が大学時代に競技として取り組んでいたボート競技ではなかなか日本選手が世界で通用していない実状があって、それを解決するにはやはり小さい時からしっかり体力をつけて体のベースを作る必要があるだろうと思って興味を持ち始めました。

実際に現代では子どもの外遊びの機会の減少や、テレビゲームやスマホなどの普及によって体を動かす遊びをする機会も減っていることなどが影響して子どもの体力低下が問題視されています。今回は改めて情報を調べ直してまとめてみようと思います。

文部科学省による調査「新体力テスト」

子供の体力低下に関しては主に文部科学省において調査が行われています。この記事を読んでいただいている方も小学校などで50m走、立ち幅跳びなどいくつか体力テストを行った経験がある方もいると思いますが、それは文部科学省が指定している「新体力テスト」というものになります。

文部科学省では、昭和39年以来、「体力・運動能力調査」を実施して、国民の体力・運動能力の現状を明らかにし、体育・スポーツ活動の指導と、行政上の基礎資料として広く活用しています。平成11年度の体力・運動能力調査から導入した「新体力テスト」は、国民の体位の変化、スポーツ医・科学の進歩、高齢化の進展等を踏まえ、これまでのテストを全面的に見直して、現状に合ったものとしました。

平成27年にはスポーツ庁が設置されたので、同内容はそちらからも情報発信はされています。

子供の体力低下の推移

以下はスポーツ庁のホームページからの引用になりますが、文部科学省が行っている「体力・運動能力調査」によると、現在の子どもの体力・運動能力の結果をその親の世代である30年前と比較すると、ほとんどのテスト項目において、子どもの世代が親の世代を下まわっています。一方、身長、体重など子どもの体格についても同様に比較すると、逆に親の世代を上回っています。

このように、体格が向上しているにもかかわらず、体力・運動能力が低下していることは、身体能力の低下が深刻な状況であることを示しているといえます。また、最近の子どもは、靴のひもを結べない、スキップができないなど、自分の身体を操作する能力の低下も指摘されています。子どもの体力の低下は、将来的に国民全体の体力低下につながり、生活習慣病の増加やストレスに対する抵抗力の低下などを引き起こすことが懸念され、社会全体の活力が失われるという事態に発展しかねません。

子供の体力低下の背景や原因

こちらもまずホームページからの引用になりますが、現代の子供の生活をあらためて考えてみると、昔とくらべて交通手段や家電製品の発達などによって、体を動かすことが少なくなってきています。つまり生活が便利になったかわりに、体を動かす機会が減ってしまったのです。このような生活の中では、意識して体を動かさないと今の体力を保つことさえも難しくなります。

そして子供が運動不足になっている直接的な原因として次の3つがあげられています。

1. 学校外の学習活動や室内遊び時間の増加による、外遊びやスポーツ活動時間の減少
2. 空き地や生活道路といった子ども達の手軽な遊び場の減少
3. 少子化や、学校外の学習活動などによる仲間の減少

大学院時代に行った足に関する研究

このような背景のもと子供に関する研究をしていたのですが、自分が大学院に所属しているときには知り合いの先生が足の指の握力を計測する機械を用いた研究を行っており、そのプロジェクトに参加させていただくことになりました。仮説としては足の指の握力によって、扁平足などの足の形状に影響がある、足の指の握力と走る速さなどに関連がある、といったことを見据えて研究を行いました。

結果としては、仮説の通りやはり足の指の握力が弱い子供は足の形として扁平足になっている傾向が強いというものでした。また、走る速さなどにも関連は見られたのですが、足の指の握力が強いから走るのが速いというよりは、足の指の握力が強いということは全体的に筋肉量が多かったり、発揮できる力が強いということで走るのも速かったことも考えられます。詳しくは以下の論文発表を行っているので興味ある方はそちらを見ていただけたらと思います。

また他にも後輩がいくつか足の指の握力に関連した研究も行っているのでそちらも興味ある方はご覧いただけたらと思います。

子供において足以外におこりやすい問題

自身の大学院の研究では足に着目しましたが、子供特有の問題としておこることはそれ以外にもあります。

すね:シンスプリント、疲労骨折
膝:オスグッド・シュラッター病
腰:腰椎分離症、側弯
など

体全体としての体力低下以外にも上記のような成長期特有の障害もあるので、子供のうちは特に注意が必要でしょう。親御さんや、部活の顧問をされているかた、スポーツクラブなどで子供に関わる方などはぜひ注意深く観察をしてスポーツのやりすぎなどによる障害の悪化には注意していただけたらと思います。

現代の子供に起こっている二極化

ここで再度子供の体力低下について話を戻しますが、現代の子供を見たときに子供全体が体力低下を起こしているというよりは二極化が進んでいるという見え方が多くされるようになっております。以下のスポーツ庁から出されているweb広報マガジンにおいてもそのような記事も取り上げられています。

自分の感覚としてもおそらくこれは正しく、英才教育的に小さいときから何らかのスポーツを重点的に行っている子供はそのスポーツにおける能力が飛躍的に伸びてかなり高い水準にあると思います。その一方で体を動かす機会が少ない子供は極端に少なく体力水準が低い状態にあるのではないかと思います。

そもそも体力が必要な理由は?

ここでまた少し話が戻りますが、そもそも体力は必要なのでしょうか?車など移動手段がどんどん便利になっている現代においてはスポーツで高いレベルを目指す以外にはそれほど体力がなくても十分生活できるような便利な世の中になってきています。そこで考えられる体力が必要な理由としては、やはり将来的な健康寿命を伸ばすため、ということが大きな理由ではないでしょうか。

人生100年時代と言われるような高齢化が進んでいる現代では、個人として健康に過ごせる時間が長いほうが人生をより楽しめると思いますし、国として見ても健康に過ごしてもらえる人が増えるほど医療費削減にもつながり良い方向に向かうと思います。

まとめ

今回の記事について最後にまとめると、子供の体力低下問題に関しては現状二極化が進んでおりアプローチするべきは体力水準の低い層に対して。そしてアプローチする目的としては将来的な健康寿命の延伸が大きな点かと考えられます。

体力水準の高い子供は将来的にオリンピックなどを目指す人も出てくると思いますが、そのような子供に対してはスポーツ特有の障害を予防するようなアプローチも必要かもしれませんね。

今回は子供の体力低下を切り口に考察をしてみました。何かご意見などあればコメントいただけたらと思います。今後ともよろしくお願い致します。

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