![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/10946221/rectangle_large_type_2_2c2bced9a4c7bc89d51505777a14b590.jpeg?width=800)
もういちど生まれる
記事タイトルは私の大好きな本の名前。
私はこの本が好きで好きで、というか朝井リョウさんの文章が本当に大好きでたまらない。
この作品は5人の大学生を描いた短編小説。そして彼らは紛れもなく私の周りにいる人たちであり、私自身でもある。
20歳ってもっと大人だと思っていた。周りの人と比べ抱く劣等感。将来への焦り、不安。きっと誰もが持っているけれど、気づかないフリをしている負の感情を彼は容赦なく言語化してくる。
この本を読むといつも心が削られる想いになるのだけれど、それでも最後は前向きな気持ちになれるのは"表現"がとても綺麗で優しいだからだと思う。
ひらがなで表すなら『あやめ』じゃなくて『つくし』みたいに、すべて一筆でさらりとかけてしまうけれどよく見ると色んな方向に開いているような、ナツ先輩はそういう人だ。
うらやましいから、だいきらい。人間って単純で複雑だ。
彼の本を読むとき、私はまるで宝探しをするみたいに好きな表現を探しながらページを進めているような気がする。当たり前にある感情を表す、当たり前じゃない表現。そんな表現に私はずっと救われ続けている。
でも、こんな気持ちになれるのもきっと今だけだ。
翔太の言葉が刺さるのも、梢とハルに自分を重ねてしまうのも、今私が大学生で彼等と同じ時間を生きているからだ。
大人になるのは怖いと思う。この本を読んで"若いっていいね"と呟いてしまう大人に、"これから何にだってなれるね"と言ってしまう何者かになった大人になるのが怖い。
まだまだ子供でいたい。手に余るほどの選択肢を抱きしめたまま、ここで立ち止まっていたい。大好きな本の感性を存分に感じられる今からまだ抜け出したくない。
専門性を帯びてきた講義。周りで起こる就活話。気持ちとは裏腹に進んでいく時間の中でわがままを言っているびっくりするほど幼稚な20歳の私。
10年後大学生活を振り返った時私は仲間と騒いだ日々を思い出すのか、こんな後ろ向きな感情を思い出すのかはわからないけれど。
でもバイトしてお酒飲んで色んな所行って、それだけが大学生活じゃない。
"人に知られたくないこのような感情を、『なかったこと』にしない。"
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?