今回は「和歌の翻訳」がテーマです。その手順と感覚の記録です。
なぜ和歌の翻訳なのか?
ある日、ぼくは、いつもと少し違う道を歩いていました。
すると、遠くから、すてきな女性が声をかけてきたのです。
「もしかして、あなたは英語とフランス語の翻訳をやっていませんか?」
そして、
「和歌の翻訳に興味があったらやってみませんか?」
と誘っていただいたのです。
それは、この方。
そのいきさつは、のちほど記事にしようと思います。
なぜ翻訳なのか?
①外国語を話す自分が、どのように世界を理解するのか?
それは幼いころからの願望でした。世界はどのように見えるのか?
②想像力と言葉のあいだに入る
子どものころからずっと、「イメージすること」と「言葉を話すこと」に関心がありました。
③アルゼンチン語学留学の苦い経験
20代の2年半、アルゼンチンへ語学留学。
ロマンス語(スペイン語、フランス語、イタリア語、ポルトガル語)+ 英語を学びました。
でも、自分がおもったような成果は上げられず、悔しい思いをして帰国しました。その後も、自分の理解能力にあった方法を探してきました。
④なぜ言葉があるのか?頭ではなく、体で、感覚で分かりたい
外国語を話した後の疲労感。また別言語への移動。
体験して分かること。ぼくの興味はだいたいいつもそこにあります。
自分がやってみて、分かりたいのです。
⑤言語と言語のあいだにいる感覚が好き
異なる音韻体系のあいだに身を置き、重なり合うイメージと意味を照合する感覚が、どういうわけか好きなのです。
外国語を聞いて「意味が分からない」という状況になると、ぼくはテンションが上がります。
ぼくが好きな場所。
それは、「言葉そのもの」「外国語」「イメージの間にある巨大な世界」
だから、ずっと、自分のペースで「外国語」と「日本語」と「言葉をうまく話せない自分」と、ひとつひとつつきあってきました。
あきれるくらいの遅さで。
どのように翻訳するのか?(翻訳プロセス)
最初は、何回も口に出して言います。
意味が分からなくても、繰り返します。
そして、日本語が話せることを噛みしめます。
1000以上年前の中世のポップシンガーが作った流行歌を、2019年の私たちは、同じ音韻で詠むことができる。
ぼくには、奇跡のように感じられます。
それは、小さくない具体的な幸せのひとつ。
以下は、自分で作った翻訳プロセスです。
1. 外部情報
2. 内部情報
3.展開①
4.展開②
翻訳作業の具体的な内容
対象和歌
坂上是則
朝ぼらけ 有明の月と みるまでに 吉野の里に 降れる白雪
1. 外部情報
これは、本やネットで調べます。複数の情報に当たり、比較検討。あたりをつけます。
2. 内部情報
ここからが現代日本語への翻訳。
3.展開①
ここからが現代日本語から英語への翻訳
現代日本語訳の翻訳⑥を基準にして、英語に翻訳していきます。
4.展開②
ここからがフランス語への翻訳
このようにして、翻訳作業は着地を迎えます。
和歌の翻訳を通して通過する世界
自分で作った翻訳フローを通過しながら、ぼくは、深くて地味な感動の中に滞在することになります。