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【短編小説】エゴサしてごらん?

(あー前髪が決まりません。)

鏡代わりのスマホには大きなヒビが入っている。

(雨の日続くとこれよ。なんなんもうー。また縮毛矯正めんどくさいわー。坊主にしようかなー。しないけど。お金ないわー。バイトかー。店長クソだしなー。歩美が新しいバイト先見つけたって春香が言ってたなー。すぐ辞めたらウケるけど。でも今より時給高いとこがいいよねー。)

インスタを開く。

(キレイな人やなー。海外かー。海いいよねー。悠々自適ってやつ?岩ちゃんみたいな人と夕陽と海。)


(・・・)


(ごちそうさまです。)




(何?前のおっさん。ジロジロきんもー。太ももか?JKのももがそんなにいいのか?呆れるよおっさん。お疲れ様です。とりあえずそこをどきなさい。)

TikTokを開く。

(今日ウチも投稿しようかなー。顔出しした方がいいんでしょ!?1人はなー。需要ある?ないなー。歩美でいいか。それともいよいよ春香とやっちゃうかー。LINEしてみよ。)


(おっさん、まだおったんか。相変わらず太ももですか?)

右隣の人が立ち上がったとほぼ同時に、前で動きがあるのが見えた。

(なんでおっさん隣来るのー!?キッッッショーーー!!いやいやいや端が空いたなら理解できるよ?よりによってなんで中途半端なウチの隣ー。勘弁してー。立つ?あと何駅よ先生。5駅かいっ!!敢えておっさん座ってたとこ座ってみる?んー、おっさんの温もりはご遠慮致します。)

「君、渡邊千尋さん?」

(えっ!?ウチに話しかけてる!?)

ゾッとした。
気付いた時には隣の車両に移動していた。

(やばっ!!次の駅で降りよう。こわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわい。)

駅に着いた。
扉が開いた瞬間飛び出す。

(降りてきてないよね!?どうしよ、次待つ?ギリ遅刻はしないよね。)

次の電車に乗った。
幸い変な奴はいなかった。

最寄り駅に着くと、春香が駅前で待っていた。

「はるかー。たすけてくれー。」

「遅いぞ千尋くん、災難でしたな。」

「気持ち悪くてオエオエです。」

「ウケる。そうだ、TikTokやっちゃいましょーよ」

「でもなー顔出しはなー。恥ずかしいのですよ」

「他人のは載せるくせによく言うよ」

「すんません」



ウチはTikTokで歩美のアカウントをつくって遊んでいた。
プロフィール悩んだのよ。
彼女がバイトしている様子や帰宅中、公園で男とキスしてるところも隠し撮りしたよ。
さすがに学校内で撮ったら色々バレるからね。
面白いのがそのアカウントにフォロワーが50人近くいること。
みんな物好きだねー。JKだから?
コメントお待ちしております。なんてね。

//さっとんさん、写真を使わせて頂きました。//


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