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「早朝の大阪メトロで告白したかった言葉」

早朝の大阪メトロに乗り込もうと足速にホームを歩く。前方を歩くのは歳の頃でいうと70歳を目前にしたおやじさん。駅のホームの中央を陣取って我が道を歩いている。発車時刻が迫り、追い抜こうとするも僕の気配を感じ取る様子は一切ないようだ。

「俺ってそんなに影が薄いんか」

であれば右側から追い越して差し上げようといっきに速度を上げる。そして抜き去った瞬間に駅構内に響き渡る空気を切り裂くクリーンな音。

「ちぇっ!」

なんとおやじさんが舌打ちをしたのである。

わなわなと震え出す感情を抑えつつ、心の中では、おやじさんにジャッキーチェンばりの振り向き様の妄想回し蹴りを食らわしている。痛みにホームを転げ回るおやじさんに容赦なしに妄想パンチと妄想キックの連打を繰り出す。

「あーぁすっきりした」

先を急がなければいけない。

電車に乗り込むと運良く空席と出会う。先ほどのイライラの感情を投げやりに網棚に置いて読書に励むとする。

前方には教科書を手にして勉強をする男子学生。朝から感心するばかりである。頑張ってと応援したくなる。

その隣には大量のリュックやらカバンやらを持つ中年男性がいる。

「おっちゃん、ジャンパーの襟が折り曲がって内側に入ってしもとるやん」
「こんなん気になるわー」
「気づかんかなぁー、気づかんよなー」

次の駅に到着して乗客が降り、僕の隣におっちゃんが座る。相変わらずジャンパーの襟は内側に格納したままである。

読書に耽っていると隣のおっちゃんの声が聞こえてくる。

「いらん!」
「ちゃうねん!」
「ちゃう!ちゃうねん!」

何度も何度も連発するおっちゃんの声。

「Amazonのタイムセールで買い物でもしてんのかいな」

僕の勝手な想像が一人歩きする。

またもやおっちゃんがスマホの画面に向かって発している。

「いらん!」
「ちゃうねん!」
「ちゃう!ちゃうねん!」

あまりにも盛り上がっているので、思わずおっちゃんの方を見てしまう。そのタイミングでおっちゃんのスマホの画面の映像が目に飛び込んできた。

「えっ!嘘やん!」

そこには画面の隅々までを占拠する水着女性の画像。

「いらん!」
「ちゃうねん!」
「ちゃう!ちゃうねん!」

おっちゃんは水着の女性の画像をスクロールしながら叫んでいる。どうやらタイプの女性を探していたのである。

僕の心の中で色んな感情が言葉になって溢れ出してくる。

「おっちゃん何しとんねん」
「現在時刻は早朝の7時ですわ」
「俺、今日の星占いは一位やったはず」
「朝から盛り沢山過ぎんねん!」

おっちゃんに声を出して伝えたくて、伝えられなかった後悔の言葉がある。

「おっちゃん、マジで襟を正した方が良いと思うでほんまに!」

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