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「こんなにバスが遅れたん初めてや」

月曜日の朝から雨が降ると心までどんよりする。それについては何とまぁ身勝手なもんだと自分でも思うのだが。

「ちょっとくらい雨が降ったら涼しくなるのに」

そんなことを言っておきながら、実際に雨が降ると少しばかり気が重くなるのだ。

「早くバスが来れば良いのに」

すでに到着予定時間から10分ほど遅れているバスを待つ。道路状況に左右されるバスに遅延はありがちななので我慢するのは慣れっこだ。

時間潰しのために、運転手さんが必死に、そして焦りながら停留所を目指してバスを走らせる様子を想像しながら到着を待つことにする。

そして到着予定時間を約20分近く経過してバスが到着した。バスが発車し、3つほどの停留所を通過したところで、バスが動かなくなってしまった。とはいえどうする事も出来ないので、運転手さんに一連托生して読書することにした。

バスが少し動き出してはすぐに止まる。この繰り返しで時間はあっという間に経過していく。次の停留所の到着予定時間には約30分の遅れが生じそうだとの車内アナウンスが響く。

車内の湿気を含んだ空気がますますどんよりとしていくのがわかる。

「渋滞に巻き込まれて、出社が遅れます」

前、隣座席の乗客が各自スマホで会社に連絡を入れ始めた。車内に張り詰めた空気と緊張感が走る。

その時であった。男性のご老人が席を立ち、運転手さんのところに歩み寄ったのである。のろのろ運転のバスの中で、よろよろと歩み寄るご老人の危なげな行動にハラハラドキドキするではないか。

「いつ着くんや」

「自然渋滞なので到着時間が読めません」

「こんなに遅なったん、わし初めてや!」

「そう言われましても」

「大体どんな感じなんや」

「バスが発車します。危険なので座って下さい」

怒りに震えながら抗議するご老人は運転手さんに諭され、よろよろと座席に戻ろうとする。ご老人の着席待ちからの発車となり、さらに時間は経過していく。

「余計に遅なるやないか」

何ともやりきれない心の声が漏れそうになるのをそっと押し殺す自分。

その後ものろのろ走行状態は続いたが、ようやくご老人が下車する停留所に到着したようだった。

ご老人は前方に歩いて行き、料金精算をしようとしている。

「もう一度お願いします」

運転手さんにそう告げられて、何度も何度も料金精算のやり直しを求められている。またもやご老人の下車待ちで発車時間が遅れていく。

自然渋滞、ご老人のイライラ、他には信号機のトラブルもあったらしく、終点の停留所には60分以上遅れて到着したのであった。

あまりにも運転手さんが気の毒で、バスを降りる際にひと声をかけた。

「ありがとうございました。諸々お疲れ様でした」と。

まぁそんなこともあるある。

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