「スタートダッシュに命を懸ける人」

前人未到の人生を歩む。
己の信じた道を真っ直ぐに突き進む。
人の先頭に立ち、人々を導いていく。

確かに憧れもあり、誰もが成し得なかった事を達成することは素晴らしい。

僕は専ら自転車を愛用している。風を切り、町を走り抜けて、お目当てのパン屋さんに向かう。最高じゃないか。この季節は特に風が心地よい。汗をかくこともなく、快適に走れるのが嬉しい。

同じように町を駆け抜ける自転車派であろう方を見かけることがある。その中にはとても不思議な行動をされる逸材が潜んでいるのだ。

例えば踏切待ちをしていると、どうしても1番前を陣取りたいのか、最前列に並ぶ僕の自転車と踏切の間に割り込んでこようとする人がいる。

「前に入れていただいてもいいですか」

そんな気の利いた言葉すらなく、どちらかといえば目を逸らし、何事もなかったようにすーっと自転車を押し込んでこようとするのである。まぁ別にどうってこともないので、入れて差し上げるのだが。

問題はここからである。

わざわざ最前列に割り込んでおきながら、踏切が上がってもなかなかスタートダッシュができないのである。なかなか自転車に乗れず、半端ないもたもた感をみなさんに露呈し僕を始めとした後発部隊の発進を妨げてプチ渋滞を引き起こしてしまうのである。

「なぜそこまでして最前列を死守しようとするのか」

挙げ句の果てには人々の流れに乗れず、自転車にも乗れずに押していく人もいる。

「そんなに急ぐ理由はなかろうが」

そんな言葉を心の奥底で呟きながら、結局その人を追い越していくことになる。

こんなパターンもある。

信号待ちをして、前の信号が青に変わり発進しようとすると、突然僕の横をギリギリで、すり抜けて、前方に出ようとする人がいる。背後から近づいて来ているという認識がなくとても驚かされるのだ。

問題はここからである。

わざわざギリギリで僕の横をすり抜けて、前方にでながら、めちゃくちゃ走るスピードが遅い。あまりの遅さに追いついてしまい、結局は追い越してしまうのである。

「1番じゃなきゃダメですか」

そんな言葉が脳裏をかすめる。現代人はそんなに忙しいのだろうか。機会があれば蓮舫さんと討議してみたいと思う今日この頃である。

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