「油の摂りすぎにはご注意を」
イベントに参加する為に最寄駅に向かう。クロスバイクに跨り、颯爽と自宅を飛び出した。風を切って走る。5分で呼吸が乱れだす。マスクをして自転車を乗るのはとても厳しい。口と目を見開き、恐ろしい形相だからだ。マスクの下の顔は見せられるものではない事だけは自覚している。
10分ほど走り、踏切を渡るために自転車を押して階段をのぼる。中央が階段で両サイドが坂のようになっているタイプのものである。自転車を坂の部分に乗せて踏切へと上がっていった。
しかし慌てていたせいかバランスを崩し、自転車が階段部分に乗り上げ、ビヨンビヨンと気持ちよさそうに弾んだ。ガシャ。嫌な音が耳をかすめた。たどり着いた踏切を渡る時にはガラガラガラとやる気のない音を発している。やったったぞ!と言わんばかりにぶらんぶらんしている。
「急いでいる時にこんな事が起こるやん」
「俺が何か悪い事をしたんか」
「これは悪魔の仕業か!」
「悪魔と会ったことないけどや」
怒りが込み上げくる。自分の不注意だとわかっているのだが、怒りの矛先を探している自分が恐ろしい。まるで悪魔のような感情である。そんな事よりもいち早くチェーンをはめなければいけない事もわかっているのに。
踏切を渡りきり、チェーンの修理をとりかかる。手が汚れないようにティッシュで慎重にチェーンを掴み、ギアにはめ込む。
ガシャ。
「オーマイガーっ!外れんのかいや!」
心の声がオーバーアクションのアメリカ人のようになった瞬間であった。
何度もチャレンジする。3度目の正直でチェーンがはまったのである。
それと同時に包んでいたティッシュもギアの中央に絡みつく悲劇が起こった。
「オーマイガーっ!」
「ズボンからティッシュを取り忘れて洗濯した時みたいになっとるやんけ!」
素手で必死にティッシュを取り除こうとした為、僕の手は自転車オイルで真っ黒になった。爪の中にも油。指紋の中にも油。
「おい!油取りすぎやんけ!」
何とか駅に辿り着き、トイレに駆け込み手を洗う。なかなか落ちないガンコな汚れ。そんなCMがあったような気がする。その後も乗り換えの度に駅のトイレに駆け込み、手を洗うのを繰り返す。もしかして人生で過去一で手を洗った一日だったかもしれない。
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