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友達が 1人もいない 魔の電話

 私には友達が1人もいない。その理由の一つとして私の正常の状態にも関わらず「喪に服しているのか?」と疑われるほどのテンションの低さがあるのだがそんな私が自軍を鼓舞する関羽ぐらいの声量で声を荒げ怒り狂うほどに嫌っているものがある。電話だ。

 私は日常生活を送っている真っ只中に電話が鳴り響く瞬間がどうしても許せない。部屋に着信音が鳴り響くたびに私は近くにあるものをひたすらに粉塵にしてやりたいほどの破壊衝動に襲われ、生まれた時代が違えば歴史に名を遺したであろう暴君なみの暴れぶりを見せる。そのため一族からホリープ的な扱いを受けている中で母だけがたまに連絡をよこしてくるのだが頼むからまずはメールで連絡をしてもいいかどうかの許可を求めてから電話をしてくれと頼んでいるのだが一向に理解してもらえず母の傾げた小首は未だに元に戻っていない。

 私が電話をそこまで毛嫌いする最大の理由は私の心のコンディションにある。基本的に私の精神状態は盛り上がりが最高潮のジェンガなみの均衡力でありいつ崩壊してもおかしくないほどにグラグラである。私のことをよく知らない人がその悪い目つきと寡黙な風貌からなにがあっても動じなさそうと過大評価をしてもらうこともあるが実際は夜道をしっかりと怖がり帰り道は背後をゴルゴばりに気にしながら帰路に就く女子以下のメンタルしか持っていないのだ。

 そんな私が最悪の過ちを犯さないためには平穏な状態の維持というのは死活問題だ。そして私のような人間からすれば社会というのはポケモンの最初の草むらでレベル100のボーマンダが出るくらい難易度が高いため基本的に帰ってくるときはボロボロだ。そして自宅というのはボロボロの私の傷心の応急処置を施すために大事な空間だ。そしてその大役を担っているのがスマホになる。

 もはやスマホは笑い、癒し、興奮、感涙の喜怒哀楽の全てを親指の動作だけで堪能できる夢のようなアイテムだ。依存症という言い方は好きではないが別にそれでもいいと思えるほどに私の精神はスマホに支えられている信頼を全ベットするに値する存在となっている。しかし家に固定電話がないためその平穏な空間を一瞬で台無しにするマンドラゴラの雄たけびにも似た悪魔の産声こそが電話なのだ。

 私は電話をしてくるような奴を絶対に許さない・・・だが自分でも自覚しているが私のこの特殊な考え方とネクタイの結び方は最初はよく分からないものだ。一回目は許そう。だが二回目以降またしても突然電話をかけてくるような人間ならば私は心の底から失望するし今後の付き合いも考えなくてはならないほどだ。だがこの悩みと怒りをこうやって打ち明けている最中に大事なことを思い出した。



私には友達がいなかった・・・



 そもそも思い返してみれば電話がかかってくること自体がめったになかったのだ。どうやら私はたまに降る雹に怯えて地下シェルターを買うぐらい無駄なことに悩んでいたらしい。だが私の電話への考え方はこれからも変わらないし、かかってきたらこれからも怒り狂うだろう。

 もし電話に関する同じ考えの人がいたら私は何も力になれないが友達からの突然の電話によってその友達に怒りを覚えてしまったらこのことを思い出して欲しい。いない人間もいるんだ。

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