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監視カメラ

#創作大賞2024 #オールカテゴリ部門

「やれやれ、またか」

男は、監視カメラの赤いランプを見上げながら、小さく舌打ちした。街のどこへ行っても、この赤い光が追いかけてくる。

男は、財布から一枚のカードを取り出した。それは、ただのクレジットカードではない。男のあらゆる購買履歴、行動パターン、さらには心拍数まで記録する、小さな監視装置だ。

「これで、また国家の懐が潤うわけだ」

男は、カードを端末にかざし、ため息をついた。
男は、富豪だ。莫大な資産を持つ男は、当然、多額の税金を納めている。しかし、国家は、それでも満足しない。監視カメラ、QRコード、決済カード。あらゆる手段を使って、国民の金の動きを監視し、少しでも課税の漏れを防ごうとする。

男は、この監視社会に反対した。他の富豪たちと協力し、反対運動に資金援助もした。だが、国家は一枚上手だった。

「監視カメラは、認知症のお年寄りの徘徊を見守るためです」

国家は、巧みなプロパガンダで国民を騙し、監視カメラの設置を推し進めた。国民は、愛する家族を守るためなら、プライバシーを犠牲にすることも厭わなかった。

男は、諦めにも似た感情を抱きながら、街を歩いた。監視カメラの赤い光が、男の背中を静かに見守っていた。

#ショートショート #パンダ大好きポッさん