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ゲーム開発で仕様書作成の能力に差が出る原因

【この記事の対象者】

  • ゲーム開発者

  • ゲーム開発に興味がある人

【この記事で学べること】

  • 悪い仕様書がなぜ生まれるのか


はじめに

ゲームプランナーの求人に応募する際、ゲーム会社によっては、企画書の提出を求められます。

企画書は、主にクライアントや会社の上層部に対して提出・プレゼンし、プロジェクトをスタートさせるために必要となる資料です。また、ゲーム全体のビジョンをプロジェクト参加者のメンバーに共有する目的としても使用されます。そのため、企画書はゲーム開発で最も重要な資料です。

では、企画書作成の能力があれば、プランナーに向いているかと言われると、全然そんなことはありません。

なぜなら、新規開発の現場で働く作業者は、企画書を作成する機会よりも、仕様書を作成する機会の方が圧倒的に多いからです。そのため、現場では企画書作成の能力よりも、仕様書作成の能力が求められます。

仕様書を教わるための6つのハードル

新卒でゲーム会社に入社した場合、ほとんどの会社では研修が行われます。新卒が研修で学ぶ内容は会社によって様々ですが、会社によっては仕様書作成の方法を教えることがあります。逆に言えば、教えない会社もあります。

研修で教えない場合は、配属先のプロジェクトで仕様書作成の方法を学ぶことになります。新卒が配属先のプロジェクトで、仕様書作成の方法をちゃんと学ぶためには、次の6つのハードルをクリアする必要があります。

  • 育成者がいる

  • 育成者が仕様を考える能力を備えている

  • 育成者が指導力を備えている

  • 育成者が仕様書のすり合わせMTGに新卒を呼ぶ

  • 育成者にやる気がある

  • 実装に関わる人が指摘をしている

育成者がいる

配属先のプロジェクトで新卒の育成者が居なかった場合、新卒が何かを教わって学ぶ機会は激減します。必然的に仕様書作成の方法を教わる可能性は、ほぼ皆無となります。

育成者が仕様を考える能力を備えている

育成者の仕様を考える能力が不十分な場合、新卒が作成した仕様書のレビューで問題点を検出できません。問題を検出できなければ、改善点を挙げられないので、新卒は仕様を考える能力を身に付けられません。

【仕様書の文明開化】
ゲーム開発者たちは、参加したプロジェックトにあった仕様書を確認し、その仕様書の書き方を真似していきます。そのため、仕様書の良し悪しは、過去に参加したプロジェクトの文化に依存するところが大きいです。

プロジェクト内に良い仕様書が1つも無い場合は、みんな悪い仕様書に習ったものを作り始めます。彼らは、良い仕様書を見たことがないので、仕様書の良し悪しが判別できません。

鎖国した会社だと、この状態がずっと続くのですが、ある日突然良い仕様書を書く人が、外から現れることがあります。その仕様書を見た人が「この仕様書良いじゃん!これ真似していこうぜ!」とみんなに呼びかけると、良い仕様書がプロジェクト内に浸透していきます。

仕様書の書き方だけはなく、様々なツールの導入に関しても、このような文化流入の影響を受けています。日本のゲーム業界は鎖国気味なので、海外の文化は浸透するまで大きく時間が掛かっている印象です。

育成者がコミュニケーション能力を備えている

育成者のコミュニケーション能力が不十分だと、

  • 新卒の話をしっかりと聴くこと

  • 相手に伝わる説明をすること

この2点が行えないので、正しく指導できません。

経験の浅い新卒は、業務に対しての理解が十分でなかったり、知識が足りないために会話の「言葉」が共有できないことがあります。

経験が浅い新卒に対しては、お互いの会話の中で出てくる「言葉」が適切に共有されるように、相手がしっかりと話を理解できていることを確認しながら仕事を進めていく必要があります。

そのような意識が育成者に無かった場合、新卒は仕様の考え方だけではなく、その他の業務のやり方についても、十分に学べません。

育成者が仕様書のすり合わせMTGに新卒を呼ぶ

作成した仕様書によっては、関係者とすり合わせのMTGを行います。育成者自身が作成した仕様書のすり合わせMTGに新卒を呼ばなかった場合、新卒は次のようなことを学ぶ機会を失います。

  • MTGの段取り

  • MTGの準備

  • MTGを行う目的

  • MTGの進め方

  • MTG中にやるべきこと

  • MTG後にやるべきこと

学生時代にMTGのやり方を学ぶ機会はほぼ無いので、このときにやり方を教わらないと、適切なMTGのやり方が分からないままになります。

【ゲーム業界あるある?】
プロジェクト内でMTGの時間が増えすぎると、そのことが問題視されます。その際には「MTGの時間を短くしろ!」「MTGの数を減らせ!」といった御触れが出ます。

本来はそのような御触れが出たら、
・現状:現在、具体的な問題点は何か
・原因:それは何が原因か
・対策:それに対する手打ちはどうすべきか
・変化:対策の結果、問題点はどう変わるのか

といった形で、ゲームの改善と同じようなフローを挟むべきですが、筆者の現場では「MTGをテキパキ進めよう!」というふわっとした意識共有しかされませんでした。そのため、MTGの進め方はあまり改善されませんでした。

MTGという業務をどのように改善すべきか、誰も具体的に考えない。MTGのマニュアルも作らない。そのため、問題が解決されないまま開発が進んでいくことが多かった印象です。

育成者にやる気がある

育成者にやる気が無かったり、新卒を放任するタイプだった場合、新卒は育成者から仕事の仕方を教わる機会を失います。

実装に関わる人が指摘をしている

新卒が作成した仕様書について、実装に関わるエンジニアやアーティストから、仕様書のチェックで問題点が指摘されなかった場合、新卒は適切な仕様書がどのようなものか学ぶ機会を失います。

仕様書の問題点は、次のような理由から指摘されないです。

  • 問題点に気づかなかった

    • 分かりづらい仕様書だった

    • 他の仕様との競合を見落としていた

    • 仕様書をチェックする能力が低かった

  • 問題点には気づいたが、指摘しなかった

    • 雑な仕様書だったが、何を実装すべきか判断できた

    • 相手の機嫌が悪くなるのが嫌だった

    • 相手の好感度を下げたくなかった

    • 問題点を指摘する余裕が無かった

    • 開発が炎上して士気が低かった

    • 新卒が作成した仕様書だったので、指摘を甘くした

  • 問題点には気づいたが、指摘できなかった

    • プランナーの地位が高かった

    • ディレクターが作成した仕様書だった

    • 新卒の育成者や上司から怒られるのが怖かった

    • 問題点だけはなく、改善点を挙げろと過去に怒られた

    • なんか違う気がするが、「なんか違う」を上手く言語化できなかった

上記の他にも、問題点が指摘されない理由は色々あると思います。

ゲーム開発職に就く新卒に向けて

もし新卒の人で、上記のいずれかのハードルに引っかかっているのであれば、仕様書の作成方法が分からないのは、あなたが原因ではありません。悪いのは、新卒の育成体制が整っていない会社やプロジェクト側です。過剰に自分を責める必要はありません。

プランナーにとって、仕様書作成は難易度が高い業務の1つです。もし仮にちゃんと育成を受けていたとしても、最初から完璧な仕様書を作成できる新卒はいません。

なので、仕様書の問題点を誰かに指摘されたとしても、落ち込む必要はありません。新卒が作成した仕様書に、問題があるのは当たり前だからです。

ベテランの人でも、仕様書作成で大きなミスをしてしまうことはよくあります。焦らずに、少しずつ上達を目指していきましょう。

派遣や中途入社の場合

ここまでは新卒に焦点を当ててきましたが、派遣や中途入社の人でも、仕様書の作成方法が分からないプランナーはたくさんいます。筆者もそのうちの一人です。そのような人たちは、次の理由から存在します。

  • 新卒のときに、仕様書作成の方法を教わらなかった

  • 仕様書作成以外の業務を専門で行ってきた

  • 個人開発の経験しかなかった

  • 他業種からゲーム業界に転職してきた

  • 過去に携わったプロジェクトで、お手本になる仕様書が無かった

  • 仕様書の作成方法を誰にも尋ねたことがなかった

  • 仕様書の内容が雑でも、エンジニアやアーティストがなんとかするプロジェクトを渡ってきた

  • プランナー以外が、仕様書を作成するプロジェクトを渡ってきた

  • 実機の挙動を仕様書にまとめるプロジェクトを渡ってきた

  • 仕様書を作成する文化がないプロジェクトを渡ってきた

後半の理由は、真っ当なゲーム会社に所属してる人が読んだら「嘘だろ!」ってなる人もいると思います。

世の中には様々なゲーム開発の形態があります。怖いですね。

あとがき

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